小規模木質バイオマス発電の「別区分化」:狙いは何か

 今年の2月24日に開かれた調達価格等算定委員会で、未利用木質バイオマスを使う2MW以下の発電については、FITの買取価格を40円/kWhとするという委員長案が示され、4月1日からこの提案通り実施されることになった。
 木質バイオマス発電の常識からすれば、蒸気タービンによる通常の発電方式に依拠する限り、発電専用なら5MW以上、熱電併給(CHP)でも2MW以上の容量がないと経済的に成り立たないと言われている。ところが今回の提案のモデルとなったのは、いいづなお山の第2発電所(長野県)で、出力1.5MWの蒸気タービンのプラントである。廃熱利用のない発電専用のこのプラントが、順調な稼働を続けているというのは一寸した驚きだが、たまたまいくつかの有利な条件が重なって発電コストを低めているように思う。これがどこでも通用するというわけでは決してない。
 2MW以下が「別区分化」されなければならない最大の理由は、熱電併給が必須の条件になるからである。今回の別区分化ではこの点が十分に説明されていないように思う。

なぜ別区分化が必要か

 2月24日の委員会後に開示された資料(3)には、別区分化の理由として次の2点が挙げられている。

委員からの指摘

 小規模未利用木質バイオマス発電は出力の安定した再生可能エネルギーとして重要であり、かつ森林資源の有効利用や林業再生など地域の活性化につながるものであるが、現在の調達価格水準(32円/kWh)では十分な利益を確保することが難しい。

農林水産省からの報告

 当初の調達価格の算定では電気出力5MWのプラントを想定していたが、これに見合う燃料を集めようとすると、設置できる地域が限られてしまう。未利用となっている木質バイオマスのさらなる活用を図るには小規模発電の推進が必要である。
 上記の指摘は二つとも妥当な判断だと思う。欧州諸国の木質バイオマスFITの例を見ると、分散型CHPを積極的に推進すべく、小規模層での買取価格を高めに設定しているケースが少なくない。しかし日本では十分に信頼できる小型CHPプラントが未だに出現しておらず、木質バイオマス発電と言えば、在来の蒸気タービン方式しかなかった。そのため5MWのモデルプラントで試算された買取価格が、プラントの出力に関係なく一律に適用されることになったのである。その意味では小規模発電の別区分化は早晩取り組まねばならない課題になっていた。
 ただ、今回の委員長提案で不審に思うのは、別区分化で採択できる発電技術について明確な説明がないことである。いいづなお山の第2発電所がモデルプラントになっているところを見ると、FITの買取価格を引き上げれば、廃熱利用のない小規模な蒸気タービン発電でも成り立つという判断があったのかもしれない。しかしこの判断は間違っている。まずこの点を正しておこう。

蒸気タービン発電の出力規模と発電コスト

 木質バイオマスプラントの出力規模が小さくなるにつれて、発電コストは急角度で上昇する。早い話、蒸気タービンによる発電ではボイラ技師などによる24時間監視が義務づけられており、2MW程度の発電プラントでも8人くらいの要員の確保が求められる。この人数はプラント出力が10倍、20倍になってもあまり変わらない。こうした「規模の経済」のゆえに、小規模の運転費用は大変な割高になってしまう。設備費についても同様の傾向が認められるが、燃料費においても小規模発電の不利は避けられない。
 表1と図1に示されているのは、電力中央研究所の多喜真之氏らが試算された出力規模別の発電コストである。1MW、2MW、5MW、10MW、20MWの5段階で試算されているが、各階層のプラント建設費と発電効率(参考欄参照)は、2013年までに建造されたバイオマス発電プラントの実績値からの推計である。燃料は水分40%でトン当たり12,000円の未利用木材が共通して使われる。前提とされる内部収益率(IRR)は8%。燃料とIRRについての前提条件は、5MWのモデルプラントによる未利用木材の買取価格(32円/kWh)の前提を踏襲したものであり、5MWの発電コストは31.7円になっている。

 この試算でとくに注目されるのは、燃料費が発電コストの大きな規模別落差を生み出していることである。どのクラスでも共通して12,000円/トンのチップを使っているのに、なぜこのような差が出てくるのか。
 原因は発電プラントの発電効率である。20MWのプラントの発電効率が28.2%であるのに対し、2MWプラントは12%、1MWのそれは8%でしかない。つまり1kWhの電気をつくるのに、20MWを基準にして2MWでは2倍以上、1MWでは3倍以上の燃料が要るのである。トン3,000円程度の廃棄物系の燃料なら、この影響は小さいが、トン12,000円もの高価な燃料を使う場合には、発電効率の低さは致命的で、2MWクラスの発電コストは61.8円にまで引き上げられてしまう。40円の買取価格では全然引き合わない。
 小規模発電のエネルギー変換効率を改善する最も有力な手立ては、発電排熱をうまく活用することだ。そこで熱回収効率45%、廃熱利用率60%としてA重油(100円/L)焚きのボイラの熱に代替した場合の熱収入が試算された。この熱収入を勘案すると、2MWクラスの61.8円という発電コストは25円程度にまで引き下げられる可能性があるらしい。多喜氏らの結論は、「2MWなら熱電併給で成り立つ可能性はあるが、1MWでは熱電併給でも難しい」という。

問題の核心:新技術導入のインセンティブとなり得るか

 以上のようなわけで、FITの買取価格が40円/kWhなら、蒸気タービンによる1.5
MWの発電専用プラントでも経済的に成り立つと言い切るわけにはいかない。
 ただ、調達価格等算定委員会の資料(3)には次のような記述も見える。「委員より、小規模未利用木質バイオマス発電を行うに当たって、ガス化発電や熱電併給がエネルギー利用上、効率的であるとの指摘があった。これらの形態であっても、発電部分について固定価格買取制度の適用を受けることは可能であり、熱利用専用設備の導入費用は調達価格算定にあたっての根拠には算入されないが、別途補助金による補助が可能となっていることを確認した」と。
 前述したように、近年の欧州では木質バイオマス発電の小型化、CHP化が著しい。とくにドイツ、オーストリア、スイスなどでは、CHPプラントからの電気でないとFIT買取の対象にならなくなった。そのために5MW以上の大型プラントの新設はほとんど見られない。こうした情報は、おそらく調達価格等算定委員会にも入っていたであろう。日本でも近い将来、小規模化・CHP化が避けられないとすれば、今から準備しておく必要がある。いわば将来を先取りする形で、「別区分化」がなされた可能性もある。ただ残念なことに、国内には未利用木材を使ったCHP発電の適当な事例がない。やむを得ず、いいづなお山の発電所のお出ましになったというのが真相ではあるまいか。
 もちろん海外に目を向ければ、木質バイオマスによる小規模分散型のCHPプラントはいくらでもある。電気出力2MW以下では一般に下記のような方式が採られている。

  1. 2MWに近いクラス:蒸気タービンによる熱電併給
  2. 0.3〜2MW:ORC(オーガニック・ランキン・サイクル)タービンによる熱電併給
  3. 0.02〜2MW:木材ガス化・ガスエンジンによる熱電併給

 わが国においても、こうした新しい技術の導入を検討することになるだろう。今回の別区分化で定められた40円/kWhがそのインセンティブになるかどうか。問題の核心はここにある。次週はこの点について考えることにしたい。  

付記:木質バイオマスエネルギー利用推進協議会は、本年5月26日の総会で(一般社団法人)日本木質バイオマスエネルギー協会(Japan Woody Bioenergy Associ-ation, JWBA)に衣替えすることになりました。今度ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~