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木質バイオマス発電:苦難の歴史に学ぶ(5)〜日本でもRPSとともに始まった独立型のバイオマス専焼発電〜 

これまで木質バイオマス発電と言えば、製材工場や紙パルプ工場に組み込まれているケースが多かった。工場の残廃材や黒液がそのまま発電の燃料になり、また発電で発生する排熱も製材品やパルプ製品の乾燥に使えるからである。林産業から切り離された独立型の発電プラントは、おおむねFITのような政策的支援に支えられて登場した。日本でもRPSが施行されたあとに、この種の発電プラントがいくつかお目見えしたが、燃料の確保で大変な苦労を強いられた。今回のFITの発足で、燃料問題の重要性はまた一段と高まっている。過去の経験に踏まえて今後どうするかをしっかりと検討しなければならない。

木質発電事業の先駆け:紙パルプ産業での自家発電

質の低い木質バイオマスを産業用の熱や電気に変換する技術を最初に確立したのは紙パルプ産業である。規模の大きい紙パルプ工場では比較的早くから大型の自家発電装置を導入していた。紙パルプの製造では加熱や乾燥に大量の蒸気が使われるし、また製造設備を動かすための電気も要る。まさに典型的なエネルギー消費産業だが、その一方で燃料となる木質系の廃棄物を大量に生み出している。パルプ製造に使えない木屑、ぺーパースラッジ、黒液がそれだ。

ぺーパースラッジというのは、製紙原料のうち紙にならなかった微細繊維や、タルク、カオリン、古紙混入遺物などからなる「製紙汚泥」のことで、産業廃棄物扱いである。また黒液というのは、クラフトパルプの製造で出てくる無機物と、木材から溶出したリグニンなどの有機物を含む黒色の廃液で、これまた1960年代から70年代にかけて世間を騒がせた「ヘドロ公害」の元凶である。

紙パルプ工場の自家発電装置は、こうした厄介な廃棄物を有用な熱や電気に換える、まさに魔法の装置であった。さらに近年では、石炭、重油・灯油、都市ガス・LPGのような化石燃料も投入されているし、廃タイヤやRFP(古紙として再利用できない紙と廃プラスチックを固形化したもの)も使われている。多様な燃料を受け入れていることも、このタイプの発電プラントの特徴と言っていい。

設置されているボイラの容量を見ると、時間当たりの蒸発量が50トン以下のものも散見されるが、大勢は180〜260トンでかなり大型である。ボイラの種類としては循環流動層が多く、蒸気温度は高温腐食を考慮して510℃前後。発電機の容量は10〜70MWだが、熱を使う関係で、抽気復水タービンによる熱電併給が一般的である。

製材業での熱電併給

欧州の大型の製材工場では、製材の残廃材を利用した熱電併給が行われている。工場に丸太が入ってくると、まずバーカーで皮が剥がされるが、ここで発生する大量の樹皮が発電に向けられる。以前であれば樹皮は埋め立て処分するしかなく、相当額の処理料を払っていた。それが燃料として利用されるようになるのは比較的最近のことだ。

製材所の発電プラントが生み出す電気は、一部所内で消費され、残りは外部に販売される。一方発電の排熱のほうは、製材品の乾燥、ペレット原料の乾燥、所内の暖房に向けられ、余った分は地域熱供給施設などに売られている。製材で出てくるおが屑はそのままペレットの原料になるし、背板・端材を破砕してペレットにすることもある。いずれにせよ工場に入ってきた丸太は、製材品、ペレット原料、熱電併給装置の燃料として余すところなく使われ、捨てられる部分は一つもない。

残念なことに、わが国の製材工場は規模が小さく、工場の残廃材で自家発電する例はなかなか出てこなかった。発電どころか、木材乾燥用の木屑ボイラすら入れられず、高価な重油に頼ることが少なくない。その一方でバークなどの残廃材をトン当たり1〜2万円も払って産業廃棄物として処理していたのである。ようやく近年になって製材工場の規模拡大が進み、木屑ボイラを導入が増えている。

木材加工業のなかで比較的早くに自家発電を始めたのは合板工場や集成材工場であった。1980年代の後半には、秋田県河辺町の秋田プライウッド、岡山県真庭市の銘建工業、愛知県蒲郡市と広島県廿日市市にあるウッドワンの二つの工場などに入っている。電気出力は比較的小さくいずれも2MWまで。

RPS法で促進された木質バイオマス発電

このようなわけで木質バイオマスのエネルギー利用は木材産業の規模拡大・近代化と軌を一にして進展してきたと見てよい。わが国では紙パルプ産業でこれが比較的順調に進んだものの、国産木材を使った製材業ではその歩みが遅々としていた。それでも、RPS法の施行(2003年4月)を契機に状況が少し変わってくる。RPSというのは、Renewables Portfolio Standardの略で、この法律により電気事業者は新エネルギー等から発電される電気を一定量以上利用することを義務付けられ、木質バイオマスの電気も市場価格よりはいくらか高い値段で売れるようになった。RPSを前提にしてつくられた木質燃料焚きの発電設備はかなりの数にのぼる。

RPS法は、2012年のFIT法の施行に伴い廃止されることになるが、2002〜11年に運転を開始した木質燃料焚きの発電設備71件のうち、30件は「RPSを前提とした設備」であり、19件は「RPSを追加した設備」であった(表1参照)。両方合わせると49件で、全設備の7割近くに達する。製材工場などに付設される発電施設がちらほら出てくるのはこの段階からだ。

一例をあげると、秋田県能代市の能代バイオマス発電所(定格出力3MW)、長野市のいいずなお山の発電所(1.3MW)、岐阜県川辺町の川辺バイオマス発電所(4.3MW)、岐阜県白川町の白川バイオマス発電所(0.6MW)などである。一見して明らかなように、規模的には押しなべて小さい。国産材を扱う製材工場ではこの辺りが精いっぱいのところであろう。

ほぼ出揃った木質バイオマス発電の四つのタイプ

RPSとの関連でとくに注目すべきは、2005年から06年にかけて、林産業から切り離された独立型のバイオマス発電所がいくつか動き始めたことである。燃料は主としてリサイクルチップで、家屋の解体材や道路工事・開発事業などで発生する幹・枝・根株を破砕したものだ。建廃のような燃料を使っている限り、木材加工工場との連携が絶たれていてもそれほど問題にはならない。

典型的な事例として筆者の念頭にあるのは、ファーストエスコ社が建造した三つの発電プラントだ。すなわち福島県白河(11.5)、山口県岩国(10MW)、および大分県日田(12MW)がそれである。いずれも収入は売電だけで、発電排熱の利用はない。

バイオマス専焼で独立型の発電プラントが出現したことで、木質バイオマス発電の主要なタイプがほぼ出揃ったように思う。少し整理してみよう。

  1. 木材加工工場(製材、合板、集成材など)に併設された熱電併給プラント
  2. バイオマス専焼の発電専用プラント
  3. 紙パルプ工場に併設された熱電併給プラント
  4. 石炭火力発電所でのバイオマス混焼

国内バイオマス発電の現状を調査した火力原子力発電技術協会の報告書(2008年)もほぼ同様の視点でタイプ分けを行い、相当数の具体的な事例を列記している。それを参考にしながら各タイプの特徴をまとめると表2のようになる。ひと口に「木質バイオマス発電」と言っても、この中には実にさまざまなものが含まれている。重々注意していただきたい。

今回のFITで設備認定を得ているプラントのほとんどは(2)のタイプである。未利用木材を使う独立型の木質バイオマス発電が、安定したビジネスとして本当に成り立つかどうか。また成り立つためにはどのような条件が必要なのか。次週はファーストエスコ社の岩国バイオパワーが直面した苦難を例に引きながら、この問題を考えることにする。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~