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迫られる「未利用木材」の再定義

 わが国の木質バイオマスFITでは、間伐などで伐り倒されたまま山に放置されている「未利用木材」を有効に活用すべく、32円/kWhの買取価格が決められた。しかし実際にはこの種の「伐り捨て間伐」は次第に減ってきている。最近では、山から下りてきた丸太をすべて未利用とみなす風潮さえ出てきた。このままでは、製材や合板に向けられる丸太との競合をますます激化させ、さらには木質資源のカスケード利用を難しくするかもしれない。未利用木材による小規模発電の報償額が、40円/kWhに引き上げられたことで、その可能性は一層大きくなった。問題の所在を明らかにし、筆者なりの改善策を提示したい。

中身の曖昧な未利用木材の定義

 以前このシリーズの「木質原料をめぐるマテリアル利用との競合」(2014.05.12日付)で指摘したことだが、わが国の木質バイオマスFITを支えているのは、「国内の森林で毎年2,000万m3の未利用木材が発生している」という大前提である。

表1は、発足時のFITで区分された3種類の木質バイオマスの正式の呼称と具体的な中身を一覧にしたものだ。経産省の告示にあるように、「未利用木材」とは「森林における立木竹の伐採又は間伐に由来する未利用の木質バイオマス」のことで、間伐材に限らず、一定の条件を満たせば主伐材も含まれる。

未利用木材が具体的にどのようなものを指すのか。林野庁の「ガイドライン」にも明確な説明は見当たらない。『木質バイオマス発電・証明ガイドラインQ&A』は、この問いに対して「伐採されながら利用されずに林地に放置されている未利用間伐材や主伐残材といったもの」と答えている。

一般に未利用材と言えば、製材用丸太や合板用丸太などを伐り出した後に残る小径材や枝条、端材などの「林地残材」を指すのだが、森林に放置されたとされる2,000万m3の中には製材や合板に向けられる丸太も相当に含まれている。林地残材に限定すると、この太い部分を山に残して、低質のものだけを集めてくるという馬鹿げた話になってしまう。また林地残材だけだと、発電燃料として集められる量もそれほど大きくはならない。当局が未利用木材の中身をあえて明確にしていないのは、以上のような事情があったからではないかと推測している。

それはともかく、木材生産のために造成した人工林で、かなり大きな林木を伐倒したまま放置するとは、まことに異様な事態である。幸いなことに、近ごろこの種の伐り捨て間伐はあまり見かけなくなった。伐出作業の機械化も進んでいる。林内で樹木を伐倒したら枝のついたまま林道端まで引きずり出し、プロセッサやハーベスタで造材する方式が採られるようになった。造材の結果、生産された丸太や残材は仕分けされて、それぞれの用途(製材、合板、パルプ製造、燃料など)に振り向けられている。「未利用木材」は一つも出ていない。つまり林地に残るか否かを基準にした利用/未利用の区別はもはやナンセンスだ。結局のところ、現状では山から出てくる丸太や残材のチップはすべて未利用木材扱いになりつつある。

マテリアル利用との競合を避ける仕組みがない

FITがスタートした時点では、木質バイオマスに関して「既存利用に影響を与えない」という原則が謳われていた。この原則を何で担保するのか。これまで見たとおり、「未利用木材」の定義はすこぶるあいまいで、何の役にも立たない。林野庁が作成している「ガイドライン」にしても、表1を見れば明らかなように、3種類の木質バイオマスをその由来にしたがって厳正に区分するためのものだ。利用方法ないしは仕向け先を方向付けるものではない。

ただ『ガイドラインQ&A』では、木質バイオマスの供給者に対して、発電用として引き合いがあった場合、「既存用途で出荷していた分はまわさない」、「既存用途での出荷を確保しつつチップの製造量を増やして発電用に出荷する」などの対応を求めている。こんな生ぬるいやり方で「既存利用への影響」が防げるだろうか。

木質バイオマスのFITでとくに厄介なのは、どのようなレベルに報償額を決めるにせよ、製材、合板、紙パルプなどのマテリアル利用と、発電以外のエネルギー利用の両方に深刻な影響を与えてしまうことである。簡単なデータを用いて説明しよう。

図1は、林業の盛んなオーストリアで樹齢80年生くらいの樹木がどのように使われるかを模式的に示したものである。例示された用途は、製材、合板、パルプ、エネルギーの四つで、丸太1m3当たりの単価もこの順番で高い。この樹木の所有者は各材種の市場価格にしたがって出荷するだろう。バイオマスの電気がFITで高く買い取られることになれば、エネルギー用丸太の価格が上昇し、やがてパルプ材の価格を凌駕するかもしれない。木質原料をめぐる奪い合いは、まず紙パルプ産業との間で起こるだろう。それはすでに世界の各地で起こっている。低質バイオマスに頼る木質ボードの製造でも、エネルギー部門との原料の取り合いで、早くから苦戦を強いられていた。図1によると、合板用とエネルギー用の価格差はかなり大きいが、スギやヒノキを使う、わが国の合板業界からは、FITによって原料の調達が思うようにならなくなったという声が聞こえてくる。製材用材(いわゆるA材)までは及んでいないにしても、B材、C材の領域ではエネルギー利用との競合が明らかに目立ち始めている。

さらに、エネルギー用バイオマスにも用途に応じた序列がある。家庭用の薪やペレットの製造には比較的質の高い丸太が向けられる。また小型のチップボイラでは除塵装置が付けられないから、ピュアな良質チップが要求される。その意味では発電用の大型ボイラであれば、除塵装置がしっかりと付けられているから、燃料の受け入れ幅が広い。ハロゲン化合物の含まれる安価な木質廃棄物でもOKだ。発電用バイオマスはボトムラインにあるだけに、FITの影響は広い範囲に及び、木質バイオマスの本命ともいうべき熱供給の燃料まで奪ってしまう。

未利用木材がカスケード利用を難しくする

小規模木質バイオマス発電で40円/kWhの対象になるのは未利用木材だけを使うプラントに限られる。ところがこのように限定したために、木質資源のカスケード利用が却って難しくなる可能性が出てきた。前回述べたように、木質バイオマスによる分散型CHPで最もやりやすいには製材業などの木材加工業である。木材加工の残廃材でCHPプラントを稼働させ、その排熱を製品などの乾燥に向けられるからである。

そこでB材やC材を含む未利用木材を買ってきて製材し、その残廃材で発電したとしよう。工場残材は一般木材だから、できた電気は24円でしか売れない。そんなことならカスケード利用なぞやらないで、B、C材含めて全部発電に回したほうがいい。電気が40円で売れるからだ。これは木材利用の原則にもとる本末転倒と言うべきだろう。

もとより木材の需給構造は林産物の市場取引を通して刻々と変わっている。5年、10年というタイムスパンで見てみると、変化の激しさに驚かされることが多い。今世紀に入ってから、化石燃料価格の世界的な上昇で、エネルギー用木材の価格が大幅に引き上げられた。それが関連する業界にさまざまな影響を与えているが、市場がそのように動いてきた以上、文句を言っても始まらない。

しかしFITは政府による市場への介入である。高い買取価格を提示すれば、木質バイオマス発電への参入者は確実に増加するが、その一方で原料を巡って他分野との奪い合いが激化するだろう。政策変更を求める声が高まるのは当然のことだ。木質原料のマテリアル利用とエネルギー利用は本来、相補関係にあって、決定的に対立する理由はどこにもない。政策運営のまずさが、往々にして対立の原因をつくっている。

まとめと提言

わが国のFIT制度がスタートして3年が経過した。電源構成で再エネの比率を高めるにはFITしかない、ドイツではうまくいっている、ということで始めたのだが、実際にやってみると、予想以上に大変なことも分かってきた。木質バイオマス発電もその例外ではない。3年経って問題のありかがようやく見えてきたように思う。

今回取り上げたのは、木質バイオマスの区分にかかわる問題である。未利用木材の電気なら32円/kWh(小規模では40円)で売れるのに、一般木材のそれは24円だ。したがって、未利用木材をどう定義するかは決定的な意味を持つわけだが、「伐採のあと山に残された間伐材や主伐残材」=「未利用木材」というこれまでの定義は、もはや実質的な意味を失っている。「伐り捨て間伐2,000万m3/年」という前提が崩れつつあるからだ。

未利用木材の本来の定義に立ち返るべきだろう。それは構造用材としては使えない木材のことである。人工林の主伐・間伐で発生する小径丸太や末木枝条もその一つだが、もっと重要なのはこれまで放置されてきた天然生林・竹林の整理伐採から出てくる低質バイオマスや、森林以外の公園緑地などから発生する「修景残材」などである。これらはまさに残された貴重な木質資源であって、収集に手間がかかることから、あまり利用されてこなかった。FITが活躍すべき重要な領域がここにある。

もう一つ提案したいのは、カスケード利用を阻害するような木質バイオマスの区分は改めるべきだということだ。山からの小丸太からつくられた燃料用チップと製材の背板からつくられたそれとを差別するのはおかしい。燃料としての物理的・化学的特性に差はないはずだ。ドイツやオーストリアのFITでも差別していない。

今回取り上げた未利用木材の定義を巡る問題は、木質バイオマスFITの根幹にかかわっている。それだけに安易な扱いは許されない。しかしこのままではマテリアル利用などとの競合激化が目に見えている。軌道修正をするなら早いほうがよい。どのように修正するかについてはさまざまな意見があるだろう。今後の活発な論議を期待して、敢えて私見を述べさせてもらった。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~