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バイオエネルギー政策の新たな展開:いずれ分散型熱電併給に落ち着く

RHIに見るイギリスの戦略

RHIにおいても、初期の助成額はかなり高いレベルにある。木質バイオマスによる熱生産は化石燃料との競争力が比較的高く、ドイツやオーストリアでは、政府の補助がなくてもビジネスになるケースが増えていると言われる。そのためEU諸国を統括する欧州委員会はイギリスのRHIは大型の熱供給を過剰に助成するものだとしてクレームを付けたほどである(前シリーズの「イギリスで始まった熱の固定価格買取制度」2014年3月3日参照)。

非家庭部門のバイオマスボイラの場合、12か月以降の助成額は熱kWh当たり2.2ペンス(熱出力1MW以下)と2.0ペンス(同1MW以上)である。ポンドと円の交換比率は不安定に動いていて確定的なことは言えないが、日本円でだいたい3.5〜4円くらいだろう。ところが最初の12カ月に支払われる助成額を見ると、小規模ボイラ(200kW以下)で8.4ペンス、中規模ボイラ(200〜999kW)で5.1ペンスと非常に高い(1MW以上にはこうした優遇はない)。これはあからさまな「誘い水」である。

さらに2014年4月から新しく始まった家庭用では、ストーブやボイラでつくられる熱に12.2ペンスが支払われる。kWh当たり20円前後で電気とあまり変わらない。

おそらく当局の胸算用としては、これほど高額の補助金を長期間払い続ける意思は毛頭ないであろう。そのカラクリはRHIの助成額を四半期ごとに見直すことにある。15年先、20年先まで買取価格を固定する電気のFITとは根本的に違う。イギリスでは木質バイオマスによる熱供給が中部ヨーロッパほど普及していない。燃料のサプライチェーンが十分に整っていないし、燃焼機器の設置やメインテナンスの体制にも不備があるから、熱の供給コストもまだまだ高い。しかし中欧並みに普及してくれば、コストのほうも同じくらいのレベルにまで下がってくる。

また化石燃料価格の上昇で、石油やガスによる熱供給コストが上昇する可能性も結構大きい。四半期ごとの補助額はこの両者のコスト差で計算されるから、この先10年と言わず、数年でゼロにできるかもしれない。当局はそれを勘定に入れて高額の「誘い水」を準備したのである。

行き着く先はどちらも分散型の熱電併給

木質バイオマスのエネルギー利用を推進するうえで、電気のFITと熱のFITのどちらが有効なのか。今後じっくりと検討すべき興味深いテーマである。ただここで注意しておきたいのは、両者の行き着く先はそれほど違わないということだ。

ドイツのバイオマスFITは電気を前面に押し出してはいるが、熱を軽視しているわけでは決してない。熱電併給(CHP)プラントで生産された電気については、2004年から2セント/kWhの割増しが付くようになり、2009年からはこれが3セントに引き上げられた。そして2012年の改定では、このボーナスが基本レートに組み込まれるとともに、CHPによる発電が義務化された。具体的には、熱を含むエネルギー変換の総合効率が60%以上でないと、FITで電気を買ってもらえない。発電だけの変換効率はせいぜい30%程度だから廃熱も相当に利用しないと60%に届かないのである。

他方イギリスのRHIでは、CHPの施設で生産された熱にはより多くの補助金を支払うという条項が新たに加えられた。すなわち非家庭用部門のバイオマスボイラへの報償額は、前述のように2.0〜2.2ペンス/kWh(12カ月以降)の範囲だが、CHPからの熱には出力規模に関係なく、その倍近い4.0ペンスが支払われる。熱と並んで電気にも配慮する姿勢が明確になった。

さて、熱電併給となると、蒸気タービンを使う通常の発電プラントでは都合が悪い。このタイプの発電で採算を取ろうとすると、プラントの電気出力を少なくとも2MW以上の規模にしなければならないが、ここから発生する排熱の量はあまりにも大きく、有効利用は難しい。もともと熱の需要というのは、産業用にしても家庭用にしても、あちこちに分散しているから、それに合わせて小出力のCHPプラントを各地につくっていくしかない。

とはいえ、熱需要があまりにも小さいと、熱電併給が技術的にできなくなるから、個別的な熱供給に替えて地域熱供給のような新しいシステムを導入することになる。比較的大きなプラントで集中的に熱をつくり各戸に送る方式である。ある程度の出力規模が確保されていれば、CHPプラントが入れられる。

熱電併給への二つのアプローチ

木質エネルギーの分野では早くから熱電併給で行くべきだという論議があった。しかしそれは主として発電サイドからのアプローチであったように思う。木質燃料を使う発電ではいくら頑張っても燃料の有するエネルギーの25〜30%くらいしか電気に換えられない。つまり70〜75%のエネルギーが無駄に捨てられることになるが、これはいかにももったいない。発電排熱をもっと有効に利用すべし、という主張がここから出てくる。

ところが近年熱生産のサイドからも熱電併給が主張されるようになった。確かに最新鋭の燃焼機器を使えば、バイオマスの完全燃焼に近づくことができ、燃料の持つ化学エネルギーの90%以上を有効な熱に変えることができる。しかしバイオマスを燃やせば、発電に向けられるほどの高温の熱が得られる。それをすべて冷暖房や給湯のような低温熱に落として使うのは、これまたもったいない。電気というのは何にでも使える、非常に便利なエネルギー媒体であり、熱供給のバイオマスプラントにおいても、無理のない範囲内でまず電気を取り、冷暖房・給湯のエネルギーはその発電排熱で賄うべきだという論議である。

国際エネルギー機関(IEA)のバイオエナジー専門家グループ(Task 22 & 23)は、2010年10月に分散型の熱電併給に関するワークショップを開き、論議のたたき台として次のような原則を提示した。

バイオマスボイラ運転の原則

  1. 熱利用を伴わぬ発電はやるな(No power without heat utilization)
  2. 発電なしの熱生産はやるな(No heat without power production)
  3. すべてのCHPプラントは熱主導で(All CHP plants in heat following mode)

この三つの原則のうち(1)は以前から言われてきたことだが、近年になって(2)が加えられた。最後の(3)が加えられたのは、バイオマスの本命はやはり熱生産であり、

熱電併給の場合も熱主導で行くべきだ、という信念が根底にあるからである。

まとめ

これまで二回にわたってドイツのFITとイギリスのRHIの動向を見てきた。いずれの経路を取るにしても分散型の熱電併給に行きつくのだが、日本ではどちらのアプローチを選択すべきか。木質バイオマスによる熱生産があまり普及していない現状から考えると、イギリスと同様に熱からのアプローチがより適切のように思う。残念なことに、日本で木質バイオマス発電といえば、現在のところ在来型の蒸気タービン方式だけに限られている。今回のFITで認定された発電プラントのほとんどは5MW以上であり、ここから分散型の熱電併給に移行するのは容易なことではない。

さらにバイオマスによる発電では、燃料費が発電コストの大きな割合を占めている。木質チップなどの価格は変動幅が大きいうえに、これまでは上昇する傾向にあった。それを考えると、20年間も売電価格が固定されるFITではリスクがあまりにも大きい。報償額を四半期ごとに見直すRHIのほうが市場への適応がずっとスムーズにいくのではあるまいか。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~