利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

バイオエネルギー政策の新たな展開:ドイツのFITとイギリスのRHI

連載再開の弁

本誌の編集部から、木質バイオマスのエネルギー利用について、隔週で6回くらい記事を書いてくれないかと頼まれたのは、2013年の初夏のことである。連載が始まったのは同年の8月5日号からで、第1回目のテーマはグローバルな視点でバイオマス利用の動向を概観することであった。

最終稿となる予定の6回目は「鍵を握る木質バイオマスのカスケード利用」とし、一区切りつけたつもりでいたのだが、もう少し続けろということになり、結局23回もの長いシリーズになってしまった。最後(14年6月5日号)は「木質バイオマス発電への期待と懸念〜眠れる森林資源を活かす道〜」で終えたのである。

このシリーズのすべての記事に共通するのは、海外の動向や事例をまず紹介し、そのうえで日本における木質エネルギービジネスのあり方を考えるというパターンである。なぜそうなるかと言えば、私自身、海外の動向に絶えず触発されて日本での問題を掘り起こし、問題解決に向けての模索を続けてきたからである。

しかし23回も連載していると、海外のネタも尽きてくる。ひとまず筆を擱いて、1〜2年したら、今度は国内での優れた導入事例を順次紹介していきたいと考えていた。それが半年もしないうちに、編集部の誘いに乗せられて、筆を執ることになったのは、定点観測の対象としてきたドイツとイギリスで新しい動きがあったからである。海外の状況は刻々と変わっていて、半年といえども待ってはくれない。

電気と熱の固定価格買取制度

上記の二国はバイオエネルギー政策で対照的なアプローチをとっている。固定価格買取制度(FIT)の元祖と目されているドイツでは、バイオマス発電についても出力規模や条件に応じて、きめ細かに買取価格を設定し、さまざまなタイプの事業者が無理なく参加できる状況をつくり出そうとしてきた。それが2014年夏の制度改革で大きく変わりそうな気配である。つまり、買取価格を固定する従来のFITは、電気料金に一定のプレミアムを上乗せするFIPにいずれ置き換えられ、最終的には公開入札に移行するという方針が示されたのだ。とくにバイオマス発電については、毎年新規に認可されるFITの総出力に厳しい上限が設けられたため、関係者が受けた衝撃はさらに大きかった。

これに対してイギリスのFITではバイオマスを始めから外している。この国のエネルギー政策では、バイオマスの本命は発電ではなく、熱供給にあるというスタンスを以前から貫いていた。電気のほうは風力発電や太陽光発電で賄うにしても、熱の供給はバイオマスでやるのが最も効率的で、コストも安いというのだ。こうした考えにもとづいて、再生可能な熱に対する新しい助成制度(Renewable Heat Incentive, RHI)をスタートさせた。早く言えば、再生可能な熱の生産コストと、化石燃料による熱生産のコストの差を政府の補助金で埋める制度である。その支援期間は7年ないし20年と比較的長い。彼らがこれを世界初の「熱のFIT」だと喧伝する理由がここにある。

RHIのプログラムは非家庭部門(non-domestic sector)と家庭部門に分けて段階的に実施された。非家庭部門に含まれるのは産業、ビジネス、公共部門などで、2011年11月から制度の運用が始まった。支援期間は20年。スタートしてまだ3年足らずだが、2014年9月までの実績で見ると、固形バイオマスを燃やすボイラのケースが圧倒的多数を占めている。すなわち認可件数で5,700件(全体の94%)、認可熱出力で102万kW(同98%)に達しており、残りの数パーセントがヒートポンプと太陽熱だ。

第二段階の家庭部門ではバイオマスストーブとバイオマスボイラが助成の対象になり、2014年の4月から運用が始まった。支援期間は7年。家庭用の小型の燃焼機器でRHIがうまくいくかどうか、われわれも半信半疑で見守っていたのだが、最近公表された政府の報告書によると、4月から9月までの半年間に新たに認可された件数は全部で1,755件。このうちバイオマスシステムが44%で、最もシェアが大きい。ただ、家庭部門ではヒートポンプと太陽熱の導入例も多く、それぞれ件数で36%と20%となっている。バイオマスシステムの導入が多いのは、おおむね都市ガスの配管のない地域である。

固定価格買取は誘い水

ドイツで昨年の夏に断行された制度改革(EEG Reform)の要点は、今後新設されるプラントからの電気の買取価格を大幅な引き下げることと、可能な限り「市場原理」を導入して運用することである。考えてみれば、これは当然のことだ。風力発電にしても太陽光発電にしても、比較的新しい「未熟な」技術であり、在来の化石燃料による発電とはコスト面で太刀打ちできない。放っておいたらいつまでたっても普及しないだろう。そこで発電された電気の全量を固定した価格でかなりの期間にわたって買取るFIT制度が誕生した。

高い買取価格が提示されれば、その分野の発電事業に多くの個人や企業が続々と参入してくる。いくつかの国ぐにでFITの導入により風力発電ないしは太陽光発電が爆発的に増加した。しかし高い買取価格がいつまでも維持されるわけではない。新しくつくられる発電プラントに対しては、買取価格を漸次引き下げて、いずれ市場メカニズムの中に埋め込む戦略が隠されている。そうしないと不都合な事態が生じてしまうのだ。

ドイツの場合は、報償額が膨らんで電気料金が高くなり国民負担が次第に重くなっていた。一部の製造業が電気料金の安い近隣の諸国に逃げ出すのではないかと囁かれていたものである。また電力の需給調整にも問題が出てきて、再生可能電力をもっと制御可能な形で計画的に導入すべきたという意見も聞かれた。そうした不都合に対処すべく出てきたのが今回のEEG Reformなのである。

ドイツでFITがスタートするのは2000年のことだが、当初、バイオマス発電の分野で応募してくるのは建築廃材などを使った比較的大型の施設に限られていた。そこで2004年に法律が改定されて、小規模発電を中心に「原料割増し」「熱電併給割増し」「新技術割増し」のようなボーナスが支払われることになった。これによって小規模発電の買取価格が大幅に上昇し、小規模な熱電併給施設が年を追って増えていく。

ところが2012年の改定あたりから、木質系のバイオマス発電を抑制する動きが出てくる。木質原料のエネルギー利用が、あまりにも急激に増えたために、マテリアル利用との競合が激しくなり、発電に回す余裕がなくなったのである。とくに5MW以上の大規模発電では買取価格がかなり大幅に減額されることになった(詳しくは前シリーズの「ドイツのFITはバイオマス発電をどう変えたか」2013年11月11を参照されたい)。

さらに昨年の8月1日からは、制度改革のあおりを受けて、最後まで残っていた原料割増しまで廃止されてしまった。比較的優遇されていた小規模プラントでも、安い燃料が手に入るとか、発電排熱が有利に売れるといった、恵まれた条件がないと、経済事業として成り立たなくなっている。マテリアル利用や発電以外の熱利用とのバランスを考えると、これが本来の姿かもしれない。

木質バイオマスシステムにおけるコストダウンの可能性

風力発電や太陽光発電の場合、発電コストの引き下げは変換技術の進歩や変換装置の低廉化に負うところが大きい。ところがバイオマス発電、とくに蒸気タービン方式ではこの種のコストダウンがあまり望めない。しかしその一方で、バイオマス燃料の調達戦略と発電排熱の出口戦略によって発電事業の収益性は大幅に改善される。

比較的安価な木質燃料を安定して確保するにはどうするか。何よりも重要なのは、木質原料のカスケード利用を徹底することであろう。その近道は製材業などの木材加工業のなかに木質バイオマスのエネルギー利用を組み込むことである。スギやヒノキの太い丸太が製材工場に入ったとすると、まず優先して採られるのは良質の柱や板であり、その残りの部分からも可能な限りさまざまな形の板類が採られる。製材の背板は製紙用のチップになることが多い。最後に残るのは、マテリアル利用のできない木屑や樹皮であり、これが発電プラントの燃料となる。

木屑や樹皮は安価ではあるが、運賃の負担能力も小さい。工場の敷地に発電プラントを据えて、その場で燃やすに限る。そのうえ木材加工工場の多くは、24時間稼働する木材の乾燥施設を備えているから、発電排熱の理想的な出口が準備されている。このようなわけで、木材加工工場に併設された熱電併給プラントにおいて発電コストが最も低くなる可能性が高い。

FITの買取価格が将来的に引き下げられるとすれば、いずれこの併設型に傾かざるを得ないであろう。現在すでに稼働している発電プラントは、最初の高い買取価格が20年間保障されることになるが、燃料価格の上昇が続くとすると、ここでも併設型を志向せざるを得なくなる。合理的な木材利用の観点からすれば、これは望ましいことだ。高い買取価格が維持されていたのでは、こうした合理化は望めない。

バイオマス熱電併給プラント Heidegrund(独)            www.eta-energieberatung.de
バイオマス熱電併給プラント Heidegrund(独)   www.eta-energieberatung.de

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~