海外の分散型CHP技術は日本でも使えるか

 前回詳しく述べたように、2MW以下の木質バイオマス発電では、未利用木材を使う限り、熱電併給でないと蒸気タービン方式は入れられない。おそらく1MW以下のクラスになれば、熱電併給でも無理である。ドイツやオーストリアでは、1MW前後のものはORCタービンでカバーされ、それよりも小さいクラスでは木材をガス化してガスエンジンで発電するケースが多くなっている。
 欧州で普及しているORCタービンやガス化発電ユニットを日本に輸入して、本格的な熱電併給(CHP)を推進しようとする動きがようやく出てきた。一部の機器については、輸入契約を結んだ国内企業を通して、収支計算に必要なデータが入手できるようになっている。木質バイオマスエネルギー利用推進協議会は、平成26年度の委託調査で、海外の代表的なCHP技術を日本に入れた場合の収支計算を行った。それらの調査結果を踏まえて導入の可能性を考えてみたい。

ドイツで公表された小型CHPの発電コスト

 固形バイオマス発電の分野で分散型CHPの設置が目立つようになるのは、ドイツでも比較的最近のことである。ORCタービンの場合は2004年あたりからであり、ガス化発電のユニットでは2008年以降である。いずれもFIT報償額の引き上げに負うところが大きいが、設置台数の伸びはともに大きかった。
 2012年末までにFITで認定された施設について発電方式別のプラント数を見ると、蒸気タービン160基、ORCタービン80基、ガスエンジン250基と推定されている。最後のガスエンジンというのが小型のガス化発電のことで、2010年あたりからの増加がとくに著しい。こうした情報は比較的早くから伝えられていたが、詳しいことはほとんど分かっていなかった。
 それが2014年の制度改革(EEG Reform)を契機に経済エネルギー省から詳細な資料が公表され、実態が少し明らかになってきた。固形バイオマスをガスして発電するプラントは2009年の時点で50基くらいはあったらしい。その機種はさまざまで、しかも出入りが激しかった。設置してみたものの、うまく運転できず消えていくものがある一方で、新参者が絶えずその穴を埋めていた。そうした混沌状態の中から二つの機種が抜け出してくる。Spanner社の30kWユニット(チップ焚き)とBurkhardt社の170kWユニット(ペレット焚き)がそれだ。
 経済エネルギー省の資料では、この二機種にORC発電と蒸気タービンの各一機種を加えて、固形バイオマスCHPの発電コストが改めて試算されている。発電コストの算出方法を表1に即して説明しておこう。熱電併給であるため、やや特異な計算方法が採られている。まず熱供給と発電を一体にして1年間のコストを求め、それを年間の発電量で割って「熱供給を含むコスト」を計算する。次いで年間の熱収入を発電量で除して発電1kWh当たりの熱収入を求める。最後に、先に求めた熱収入を含むコストからkWh当たりの熱収入を差し引く。得られた答えが発電コストだ。
 表1によると、4MWの蒸気タービンによるCHPプラントの発電コストが15.6ユーロセント/kWhで四つの機種の中では最も低い。しかし1MWのORCや、30kWと170kWの小規模ガス化プラントの電気コストもおおむね20セント以下に収まっている。ただし使用する燃料の単価には相当な差がある。蒸気タービンとORCは絶乾トン当たり85ユーロの通常のチップだが、Spanner社のガス化ユニットは水分15%以下の乾燥チップ(絶乾トン当たり126ユーロ)、Burkhardt社のそれは良質のペレット(同160ユーロ)である。後二者とも出力当たりの初期投資額が比較的低く、蒸気タービンやORCタービンとあまり変わらない。また年間に8,000時間稼働するというのも注目に値する。

海外の機器を日本輸入して稼働させたらどうなるか

 小型CHPの発電コストが20セント/kWh以内に収まるなら、日本への導入も有望になってくる。1ユーロ=130円で邦貨に換算すると26円になり、32円のFITの買取価格(未利用木材)で十分に採算が取れるからである。
 問題は機器を日本に輸入して稼働させた場合、発電コストがどうなるかだ。170kWのガス化発電ユニットと1MWのORCユニットで試算した一例が表2にまとめられている。表の参考欄には、コスト計算の基礎となる前提条件が列記されているが、まず注目してほしいのは設備費である。ドイツのモデルプラントでの初期投資額は、表1にあるように170kWのガス化プラントで50万ユーロ(0.65億円)、1MWのORCプラントで665万ユーロ(8.65億円)である。ところが日本に入れるとその設備費は建屋を含めて、それぞれ1.57億円と 18.6億円にもなる。ドイツ国内の投資額の2倍以上だ。また燃料の単価はチップでは両国間で大差はないが、ペレットは日本のほうが50%ほど高い。さらに表2では熱の販売単価を9.7円/kWhとしている。これは100円/LのA重油と同等の熱単価だ。しかしドイツの場合、発電排熱はガス化発電で5セント(6.5円)、ORCなら3セント(3.9円)でしか売れないと見ている。
 以上のような前提条件のもとで、日本で動かした場合の発電コストを計算すると、ガス化発電33.0円、ORC34.5円となった。小規模木質バイオマス発電の別区分化で電気が40円/kWhで売れれば十分に引き合うレベルである。ただしこの計算では減価償却費は費用として計上されているものの、利子率(ドイツでは8%)や目標とすべき内部収益率(IRR、日本のFITでは8%)が一切考慮されていない。8%のIRRを確保しようとすると、発電コストは、ガス化発電で43.3円、ORC発電で51.8円にまで引き上げられるという。初期投資額が大幅に増えたことを考えれば、当然の帰結と言うべきであろう。
 もう一つ気になるのは、発電排熱の60%前後を有効に利用することができるかどうか、またそれが9.7円/kWhで売れるかどうかである。楽観的に過ぎるという意見もあろうかと思う。

発電コストは条件次第だ

 実のところ、木質バイオマス発電の収支は条件次第でどのようにでも変わってくる。前出の表1に付された感度分析の結果(図1)を見れば、一目瞭然だろう。縦軸は発電コストで、横軸はパラメターの変化率である。傾斜の急なパラメターほど発電コストへの効きが大きい。事例として取り上げたのは、30kWのガス化発電と4MWの蒸気タービン発電だ。両者に共通して強く効いているのは、燃料価格、熱の売価、それに年間稼働時間である。
 30kWのガス化発電の場合、基準となった発電コストは19.7セントであったが、燃料の価格が50%上がると発電コストは25セントに上昇し、逆に40%下落すると15セントにまで下がる。他方、熱の販売価格が50%下落すると、発電コスト23セントに上昇、逆に50%の上昇なら発電コストは16セントに低下する。また年間稼働時間の短縮は発電コストの急激な上昇を招く。さらに初期投資が相対的に大きい蒸気タービン発電では設備投資額の変動も相当に効いてくる。

 分散型CHPのユニットを海外から輸入するにあたって留意すべき点をまとめると次のようになる。

  1. 表2の試算例は輸入の第1号機ということで、かなりの割高になっていると思う。今後は導入台数を増やすか、国内での部品生産や新機種の開発を行って、設備費を極力圧縮していきたい。
  2. 発電コストを引き下げる要件は、図1の感度分析から明らかなように、①より安価な燃料が継続的に確保できること、②安定した熱の販売先があること、③年間の稼働時間が相当に長いこと、の三点である。

 今回の別区分化で買取価格が40円/kWhに引き上げられたとしても、上記の二つの要件がある程度まで満たされないと、分散型CHP発電の導入は難しいように思う。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~