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各地に見られ始めた「バイオマス集配センター」(2)〜岡山県真庭市のバイオマス集積基地〜

日本においても山から下りてくる低質丸太(構造用材に不向きな小径材や欠陥のある丸太)を生トン単位で買取り、燃料用チップに加工して販売する例が増えている。その先鞭をつけたのが真庭市のバイオマス集積基地だ。現在のところ国内で最も整備された集配センターの一つと言えるであろう。

日本版バイオマス集配センターの誕生

真庭市はNEDOの「バイオマスエネルギー地域システム化実験事業」に応募して採択され、2005〜09年度にわたって事業を実施した。これは林地残材や樹皮等の未利用資源を燃料化する実証実験で、筆者はその評価委員として最初から関わってきた。そこで集積基地が誕生した当時の状況から見ていくことにしよう。

真庭市はもともと林業・林産業の盛んなところである。すでにいくつかの製材工場は木屑焚きのボイラを入れて木材乾燥を行っていたし、集成材を製造する銘建工業などは2MWの熱電併給プラントを設置して発電も行っていた。さらにNEDO事業が始まったことで、それ以外の工場や事業所にもチップ焚きボイラが新しく導入された。熱の仕向け先は木材乾燥のほか、温泉・プールの加温や公共施設の冷暖房などである。

木質焚きボイラがこれほど増えてくると、次に問題となるのは必要なボイラ燃料の確保である。製材工場の残廃材だけではとても足りない。構造用木材の伐採に伴って発生する小径丸太を利用するしかないのだが、こうした小径丸太を集積基地が買い取って、製紙用、燃料用のチップに加工し、後者を域内のバイオマスプラントに配送する方式が、地元の関係者の協議で編み出された。当時の生トン当たりの買取価格は、スギ3,000円、ヒノキ4,000円、ザツ5,000円である。

実のところ、NEDO事業の当初の計画には集積基地の構想はまったく含まれていなかった。基地の建設はこの事業が終了する1年前の08年のことである。その意味ではNEDO事業の意図せざる副産物ということになるが、最終年度の事業総括で筆者が最も高い評点を与えたのがこの集積基地である。地元の林業・林産業を担うリーダーたちの豊かな構想力に感服した。前回見たEUの「バイオマス集配センター」と理念は同じであり、その日本版と見てよい。

背景にある伐出作業の機械化

真庭市の産業団地に建設された集積基地は3.5億円の資金を投じた本格的な施設である。完成直後に案内してもらって、多少不安に思ったのは低質バイオマスが本当に山から下りてくるかどうかであった。幸いなことに、この心配は杞憂に終わり、施設のオープンとともに集荷量は順調に増えていった。

真庭地域で手広く素材生産を行っているM氏は、最初から低質丸太をこの施設に運び込んでいた一人だが、彼の話によると、低質丸太を10トントラックに積んできて3〜5万円で引き取ってもらえれば、何とか引き合うとのことであった。ただしこれも運送距離によりけりで、あまり遠くなると採算が取れない。

M氏は早くから伐出作業の機械化を推し進め、当時としては常識を超えた低コストで構造用の素材を生産していた。従来の常識からすれば、製材用丸太の採れない幹の先端部分まで丸太にして出してくるのは大変のことである。枝が一杯ついていて、何よりも枝払いに手間がかかる。しかし機械化方式であれば、林木を伐倒して枝のついたまま林道端まで引きずり出し、プロセッサで造材する方式を採っているから、幹の先端部でも簡単に枝払いができ、低いコストで丸太にすることができる。

また素材生産の現場に行くと、太くても曲がりのある丸太や、腐れや割れが入って構造材として使えない丸太が結構出ている。定尺に満たない端材「タンコロ」も必ず出てくるのだが、全木で集材してプロセッサで造材すれば、こうした低質材が林道端の一か所で発生する。10トントラックに積み込んで、容易に運び出せるのもそのためだ。

集積基地の概要

筆者はこの2、3年来、真庭市に足を運んでいない。そこで市の林業・バイオマス産業課の森田学氏にお願いして、最近の資料をいくつか送ってもらった。以下、その資料に依拠しながら、最近の動きを見ておこう。

図1の上段にあるのは集積基地の近影であり、後段に施設の概要がまとめられている。この基地を運営しているのは真庭木材事業協同組合だ。毎年の取扱量は、次の表1にあるように、09年度以降順調に伸びていて、14年度は25,000トンを超えている。ただし集められた丸太のほとんどは製紙用チップの製造に向けられていて、その量は年間20,000トンに達するという。したがって燃料用はそれほど多くない。

燃料用チップの生産は、むしろ真庭森林組合が運営する月田総合集積基地にゆだねられてきた。この基地にも5,000トンほどの処理能力がある。エネルギー利用の面で注目されるのは、関係者の間で木質燃料についての規格が決められていることだ。それは表2にあるようなごく単純なものだが、木質チップの含水率(ウェットベース)を30%未満としたのはかなり厳しい。比較的小型のボイラが多いからであろう。月田の集積基地では、丸太を井形組して3カ月から半年天日乾燥して水分を下げていた。さらに皮をむいて乾燥時間を短縮することもある。燃料チップの出荷価格は含水率を勘案して決められる。

新たな課題:大型バイオマス発電への対応

 真庭市の産業団地に電気出力1万kWのバイオマス発電所が建設されて、今年から運転を始めている。計画では年7,920時間の運転で14.8万トンの木質バイオマスを消費するという。このうちの9万トンを山からくる未利用木材で賄い、残りは工場残材などの一般木材を充てる。

いずれにしても燃料用チップの需要が一挙に増加することになる。そこで真庭バイオマス集積基地は同じ産業団地内に発電燃料の取扱いに特化した第2工場を建設した。扱えるバイオマス量は約5万トンで、敷地面積は第1工場の約2.5倍、総事業費は5.38億円である。

発電燃料に特化したため、小径丸太のみならず、末木枝条やタンコロも受け入れられるようになった。未利用木材の買取価格はスギがトン当たり4,500円、その他の樹種は5,000円。

燃料用チップの生産事業には、真庭市の木材事業協同組合や森林組合だけでなく、一般の民間企業の参入も見られ始めた。1万トン程度を扱う「フォレストこいでチップ化施設」もその一つだ。

真庭市全域で1年間に発生する未利用木材の量は9万トンを超えると推定されているが、この先10年20年にわたって、必要な木質燃料を持続可能な形で確保するのは容易なことではないだろう。林業・林産業の先進地として引き続き新たな課題に挑戦してもらいたい。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~