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各地に見られ始めた「バイオマス集配センター」(1)〜地域に残された未利用バイオマスを組織的に動員する〜

 地域内で生み出される雑多な木質バイオマスを一か所に集めて、乾燥・破砕・玉切り、割り等の加工を加えて規格化された木質チップや薪を製作し、その需要者に供給するローカルな集配センターが、国内、国外の各地でいわば自然発生的に誕生しつつある。地域に残された未利用の木質バイオマス資源を動員する要として期待が大きい。今回は各地のセンターに共通した特徴を概観し、次回からは実際に動いている内外の実例を三つほど紹介することにしたい。

木質系ボイラ燃料の多様化

木質バイオマスが熱供給や発電のためのボイラ燃料として本格的に使われるようになるのは比較的新しいことである。1960年代から70年代にかけて北米や北欧では林業・林産業の近代化・大規模化が進展した。大型の製材工場や紙パルプ工場は1年間に数万〜数十万m3の原木を潰すことになるが、そこから発生する残廃材の量は大変なもので、その処分に苦慮していた。大型の木材加工場はまた施設の運転と製品の乾燥に大量の熱と電気を使う。工場残廃材をボイラで燃やし、必要なエネルギーを自社で賄う方式が急速に定着していくのはごく自然な流れであった。

林産業での木屑利用は、燃料の輸送が不要にうえに、熱や電気もその場で使われるから、すこぶる合理的なシステムである。木質バイオマスのエネルギー利用としては最も経済的で安定した方式と言えるであろう。原油価格がバレル10ドル以下の時代でも十分な市場競争力を持っていた。

やがて化石燃料価格の上昇が始まる。林産業以外の分野でもボイラ燃料を石炭や重油、天然ガスから木質バイオマスに切り替えるケースが増えてゆく。とくに北欧では炭素税の影響もあって、地域熱供給施設での燃料転換が急速に進む。最初に使われた燃料は、林産業の残廃材と並んで、建築廃材などの廃棄物系の木質バイオマスであった。

しかし木質燃料の需要増加が急であったために、これだけでは全然足りない。製材用丸太やパルプ用丸太を伐り出した後に山に残る小径材や末木枝条まで使われるようになった。また従来なら伐り捨てられて小径の保育間伐木までエネルギー用に引き出されている。とくに平坦林の多いフィンランドなどでは、伐り倒した樹木の根株まで運び出されることが多い。さらに公園緑地や高速道路・水路周辺の樹林帯などでは景観維持のために、定期的に手が入れられているが、ここからも相当な「修景残材」が発生しており、未開拓の有望なエネルギー源として期待されている。

いずれにしても、よく言われるようにバイオマスは地球上に「広く薄く」分布する資源である。農山村でも都市でも至ることころにさまざまな樹木があり、年々成長している。適当に伐り透かしてやらないと、繁茂して手に負えなくなるだろう。エネルギー用の木材を意識的に育成することも考えられるが、当面は自然に生えてくるバイオマスの活用が焦点になる。そのために考え出されたのが「バイオマスの集配センター」だ。

集配センターの軸となる三つの機能

欧州連合(EU)は、Intelligent Energyプロジェクトの一つとして、2011〜14年にBiomass Logistic & Trade Centre IIを実施した。このプロジェクトにはオーストリアやドイツを含む9か国の関係機関が参加しているが、その狙いは各地に散在する木質バイオマス資源を持続可能な形で動員すること(sustainable mobilization)であった。

EUの各国には未利用の木質バイオマスが大量に残されているが、活用を阻む障害もたくさんある。何よりも売買(取引)がバラバラに分散していて、組織化された市場ができていない。ようやくオーストリアのシュタイアマルク州などではBiomassehofと呼ばれるローカルなセンターがつくられて、組織的な取引が始まっている。この種のセンターをEU全体に広げようという思いからプロジェクトがスタートした。

本稿でいう「バイオマス集配センター」は上記のBiomass Logistic & Trade Centre (BL&TC)の訳語である。実際に動いているセンターの事例をもとに、共通した特徴を拾い上げると、次の3点に帰着する。

  1. 域内で生み出される燃料用の雑多な木質原料をその生産者(ないしは所有者)から生トン単位で買い取る
  2. 集めた木質原料をセンターの土場に保管して乾燥させ、欧州(EN)規格や国際(ISO)規格に適合した木質チップや薪に加工する
  3. 生産された木質燃料をその品質に応じて域内の需要者に販売する

配送センターの基本的な要件は上記の3点に集約できるが、いずれの要件についても、以下に述べるように地域の状況に応じてさまざまなバリエーションがあり得る。

木質バイオマスの集荷を巡って

燃料用木質バイオマスの供給源として最も重要なのは、森林伐採に伴って発生する小径丸太や林地残材である。その供給者を属人的に見ると、毎年数千m3の丸太を扱う専業的な素材生産者から、何年か置きに数十m3の丸太を自分で伐り出す森林所有者まで、さまざまだ。ある程度数量がまとまっていれば、未加工のバイオマスを大口の利用者にそのまま売り渡すこともできるであろう。しかし林地残材などの数量が少ないと買い手を見つけるのが難しい。集配センターが量の多寡にかかわらず、生トン当たりいくらで買ってくれればこれに越したことはない。

そうなると木質バイオマスの供給者は一挙に広がってくる。材が売れるとなれば、混み合った雑木山の整理に取りかかる人も出てくるだろう。屋敷や田畑の周りに生い茂る灌木類もエネルギー利用の対象になるし、公園緑地の管理者からは修景残材が寄せられる。

もちろん集配センターはバイオマスの提供を受動的に待つのではなく、もっと積極的に動くこともできる。実際問題として雑木山の整理を自分でやれる土地所有者はだんだん少なくなっている。センター自身が整理伐採を実行し、バイオマスをセンターの土場まで運び込むケースが増えるかもしれない。中山間地の市町村にとって、良好な景観の維持はこれからの重要テーマであり、集配センターと契約を結んで適切な植生管理を計画的に進めることもできるだろう。

集配センターが備えるべき設備

雑多な木質バイオマスを運び込んで一定期間貯蔵する必要があるから、ある程度の広がりを持った土地を確保しなければならない。また乾燥した薪やチップを保管するための建屋が要る。薪の製造施設、チップ製造のための破砕機、それに運び込まれたバイオマスの重さをトラックごと測る計測台も不可欠だ。

集配センターがつくられる背景としてもう一つ見逃せないのは、木質燃料の品質保証を求める顧客が増えていることである。木質焚き燃焼機器の性能が向上するにつれて、燃料の品質にも厳しい註文が付くようになった。さらに環境保護と持続性確保の観点ら木質燃料の由来(出所)についても明確な説明が求められている。

木質燃料の品質保証にあたっては、広く認められた品質規格の試験方法にしたがって、寸法、含水率、かさ密度、発熱量、灰分、主要な化学成分の含有量などの計測が必要になるだろう。重金属類の計測などは外注に出すとしても、それ以外はセンターが保有する簡易な装置で計測することが望ましい。ちなみに、木質チップでも薪でも引渡し価格を左右する主要な品質パラメターは、出所、寸法、含水率、灰分の四つである。

木質燃料の出荷を巡って

木質バイオマスの集荷と同様に、製品の出荷についても、いくつかの選択肢がある。一番消極的なのは、センターが保管しているチップや薪を店頭で顧客に引き渡す方式である。次に考えられるのは、センターの責任で製品を顧客のところまで運搬するやり方で、必要ならそれを燃料庫に収納することもできるだろう。そして最も積極的なのは新しい顧客の獲得である。

そうした試みの一つとして挙げられるのは、オーストリアでよく見られる「エネルギー契約(Holzenergie-Contracting)」だ。比較的容量の大きい木質焚きボイラが入れられる事業所、公的機関、集合住宅などであれば、単独で契約を結ぶことができよう。このほか数件の熱需要者を束ねた「マイクロネッツ」も対象となる。こうした顧客に対してボイラの設置から燃料の供給、メインテナンス、燃焼灰の処理など一切のサービスの提供を約束し、消費された熱の量に応じて料金を徴収するシステムである。

配送センターの規模と運営主体

配送センターのバイオマスの集荷範囲はそれほど広くはなく、せいぜい半径50kmの圏内とどまるだろう。集められるバイオマスの量も数万トンのオーダーで、10万トンを超えることはめったにない。したがって地域の熱需要を地域の資源で満たすことに主眼があり、大型のバイオマス発電所の燃料需要を一手に引き受けるには規模が小さすぎる。

シュタイアマルク州のBiomassehofの場合は、「地産地消」の原則が徹底していて、域外からのバイオマスの調達を認めず、また薪やチップを域外に出すことを禁止しているところがある。センターの運営は地域の農民や森林所用者のグループが担う。

これも一つのタイプだが、むろんこれだけに限られるわけではない。地域の非営利団体が運営を担うこともあり得るし、民間企業でも同じ機能を果たすことできる。ただ、品質保証のお墨付きを出すとすれば、第三者機関による然るべき監視が必要になるだろう。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~