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再エネ新時代における木質エネルギーの役割(8)

風力発電をバイオマスでカバーするデンマーク方式

再エネ活用による中山間地の振興

 デンマークは、1973年の最初の石油危機以来、脱化石燃料を目指して積極的なエネルギー政策を展開してきた。再生可能なエネルギーの導入に関して言えば、欧州の最先端を走り続けてきたと見てよいであろう。この国の最終エネルギー消費に占める再エネの比率でみると、1990年に6%であったものが2015年には28.6%になった。政府の長期計画ではこれを2030年までに50%に引き上げ、2050年には、熱、電気、輸送用燃料の全てを再エネで賄うことになっている。
 再エネ導入の軸になってきたのは風力発電だ。中でも近年の伸びが著しいのは大型の洋上風力である。すでに、風況がよければ国内の電力需要を上回るほどの電気が得られる日が何日もあるのだが、いつもそうとは限らない。
 北欧諸国の場合は資源的に恵まれているから、水力、風力、火力をうまく組み合わせれば相乗作用が期待できる。また国境を越えた送電網がよく整備されているうえに、Nord Poolのような成熟した電力の交換所もある。つまり電気の自由な売り買いを通して風力発電の変動をある程度調整できるのだ。
 もちろんこれだけでは不十分で、残余の調整はバイオマスを主要な燃料とする熱電併給(CHP)プラントの弾力的な運転を通してなされている。今回はこの調整がどのようにして行われているかを見ていくことにしたい。

再エネで卓越するバイオマスと風力

 デンマークにおける再エネ消費の伸びを種類別に追ったのが図1である。まず驚かされるのは、バイオマスと風力が抜きん出ていて、他の再エネの影が薄いことだ。図1の「その他」の合計エネルギー量は2015年の時点で約12ペタジュール(PJ)、内訳はヒートポンプ8.0、太陽光発電3.6、地熱0.1、水力0.07である。欧州で再エネ比率の高い国は、おおむね水力発電で稼いでいるのだが、デンマークの水力は限りなくゼロに近い。太陽光発電の導入も意外なほど遅れている。
 その一方で風力発電は着実な増加を続けてきた。15年のエネルギー供給量は約50PJで、総再エネ消費量(206PJ)の24%を占める。近年とくに目立つのは風力タービンの大型化であり、その大型の多くが洋上に設置されていることだ。
 バイオマスの伸びも特筆に価する。1990年に40PJほどであったものが、2015年には140PJ弱になり約3.5倍に増加した。再エネの総消費量でのシェアは67%にもなる。森林資源にあまり恵まれないデンマークで、なぜこのようなことが可能になったのか。節を改めて見ていくことにする。

図1 再生可能エネルギーの種類別消費量の推移
デンマーク、1990~2015 単位:PJ

バイオマスの多様な給源

 デンマークは平坦な国で、山が少ない。水力発電がほとんど見られないのもそのためだ。総森林面積は61万haで、国土面積に対する比率では14%。人口1人当たりすると、0.11haで日本の約半分だ。この森林の3/4は成長の良い植栽林で、2011~15年の平均丸太生産量は302万m3/年。森林面積当たりにすると4.9m3/ha/年だ。ちなみに同じFAOのデータベースで日本の数値を求めると0.8m3/ha/年になる。つまり同じ面積で日本の6倍の木材を生産している。
 とはいえ、デンマーク国内での木材生産量が今世紀に入って急速に増えたというわけではない。この数年やや高めになっているのは事実だが、1980年以降大部分の年は200~300万m3/年の範囲内にある。持続的な森林経営の体制がしっかりと確立されているから当然のことだろう。
 実のところ、この国のバイオマスエネルギーの給源は、日本などと比べると、すこぶる多様であり、国外からも相当量輸入されている。そうした状況を表1にまとめておいた。
 「燃材」というのはおおむね燃料用の薪を指すが、それが今日でも相当量使用されている。次の木質チップは大部分が国産だが、その仕向け先は主に比較的小型のボイラである。これに対してペレットはほとんどが外国からの輸入で、大型のボイラがその主たる使用者とされている。この背景には石炭火力発電所の、バイオマスへの燃料転換がある。この燃料転換に必要な大量のバイオマスを国内の森林で調達することができず、近隣の諸国や北米で生産されたペレットに全面的に頼ることになった。今世紀に入ってバイオマスの消費量が急増した最大の理由がここにある。
 さらに興味深いのは、家庭ごみなどの有機系廃棄物がエネルギー源として最大限に活用されていることと、農業の盛んな国だけにストロー(麦わら)のエネルギー利用が多いことも挙げられる。

表1バイオマスのエネルギー利用
デンマーク 2015年 単位:一次エネルギーPJ

ペレット焚きCHPプラントの発電コスト

 デンマークの最近の動向を見ていて誰もが抱く疑問は、外国産のペレットで発電して経済的に引き合うかどうかである。図2は2015年に公表されたバイオマスエネルギーの報告書から引用したものだが、ペレット焚きCHPの発電コストが意外なほど低い。1デンマーク・クローナを18円として円に換算すると、10円/kWh程度におさまっている。理由は何か。一つは比較的大型のボイラで燃やされていることだが、それよりも重要なのは安価なペレットが、さしたる障害もなく輸入できるからである。発電コストが最も低いとされる陸上風力とあまり変わらない。
 その一方で、大型太陽光の発電コストは陸上風力の4倍、洋上風力の2.5倍くらいになっている。風力とバイオマスが卓越するのは基本的に市場競争力が強いからであろう。ただ、国内産のバイオマス、とくにストローと木質チップについては、以前からさまざまな政策的な支援がなされてきた。筆者の推測だが、国産バイオマスを使う小規模のCHPやDHではかなりのコスト高になっているように思う。木質ペレットにしても、デンマーク国内で生産したら、輸入品よりずっと割高になるはずだ。この国は国際化が進んだペレット市場の恩恵にあずかっている。

図2 再エネ電力の発電コスト
デンマーク、DKK(デンマーククローナ)/kWh

変動電源に対する対応策

 次の問題は、天候に左右される風力プラントからの電気の流れをどのようにして制御するかだが、エネルギー庁が公表した文書(脚注1)には次のような対応策が示されている。
 ① 熱供給と電力バランシングとの統合
 この国の電力の半分は小規模なCHPプラントで生産されている。CHPであれば、生産する熱と電気の割合をある程度弾力的に変えられるし、熱の貯蔵もできる。つまり風力の電気が十分なときは発電を減らして熱を生産し、貯めておくことができるのだ。
 ② 火力発電プラントでの技術革新
 世界の火力発電のほとんどは、産出がコンスタントになるように設計されているが、デンマークの火力プラントでは、他の国に比べて発電量調整のスピードが速く、最低の産出レベルが通常低く設定されている。
 ③ 風況予測の革新と組み込み
 デンマークの送電システムの管理者は、より正確な風況予測を使うことで、より多くの再エネを取り込むことができるようになった。
 ④ 電力市場の機能強化
 変動電源からの発電が増え、それが優先的に市場で引取られる結果、火力発電のシェアは低下しているが、電力の過不足を示すシグナルが電力の市場から送られるようになれば、CHPプラントや火力プラントはその電気を一般の卸市場だけでなく、いわゆる「副次市場(Ancillary market)」で有利に売ることもできる。

 (脚注1)Danish Energy Agency (2017), The Danish Energy Model

エネルギー効率上昇の鍵:地域熱供給(DH)と熱電併給(CHP)

 上記の変動電源への対応策のうち、これから取上げるのは①の「熱供給と電力バランシングとの統合」で、バイオマスが電力のバランシングにどのような役割を果たしているのか見ていくことにしたい。
 このコラムで前回述べたことだが(脚注2)、筆者は日本で最も有望な再エネは洋上風力だと考えている。その場合、日本でもデンマークのように、バイオマスが風まかせの変動電源をカバーできるだろうか。現状では非常に困難だと言わざるを得ない。肝心のDHとCHPがひどく後れた状態にあるからである。
 デンマークの地域熱供給の状況を概説した英文の資料(脚注3)には次のような記述が見える。
 「現在、国内の全住宅の63%がDHのネットに繋がっていて、暖房と給湯の提供を受けている。仮にCHPプラントで熱とともに電気も生産されれば、エネルギーの総合的な変換効率は85~90%に達するだろう。熱と電気を別々に生産するケースに比べて燃料が約30%節約される。DHとCHPは、デンマークの「グリーンへの移行」を可能にした鍵であったし、今後とも鍵であり続けるだろう。」
 CHPによって全体としての変換効率がどれほど上昇し、また燃料の投入がいかほど節約されるかは、熱電比率や熱の取り方によって相当に変わってくるが、引用された数字はこの国の平均というより、高めの値と見るべきであろう。しかしDHとCHPの普及が日本では想像できないほど高いレベルにあることは間違いない。
 表2は、公表されているエネルギー・バランス表から抜き出したものだが、燃料を燃やして熱や電気に変換する4種類のプラントについて、燃料投入とエネルギー産出の状況が示されている。大規模施設というのは指定された電力会社で、その多くは石炭火力だが、熱の供給でも重要な役割を果たしている。これには長い歴史があって、発電プラントの余剰熱を利用したDHシステムは今から100年近く前の1920~30年代に始まっていたのである。そして燃料投入の面で再エネ(大部分はバイオマス)の使用が増えてきて27%を占めるまでになった。今後はこの石炭火力の設置容量を減らしながら、さらなる燃料転換を進めることになっている。
 小規模施設というのは電力会社以外のプラントで、バイオマスの使用割合が高い。地域熱供給プラントでは、多様な燃料が使われていて、天然ガスがかなり入っている。また自主生産者(autoproducer)とは、本業が別にあって発電や地域熱供給を副業としてやっているものと定義されている。おそらくこの中に製材工場などに設置されたCHPプラントが含まれるであろう。バイオマスの利用が多くなるのは当然のことだ。さらに再エネ以外の廃棄物が使われているところを見ると、廃棄物処理業者のエネルギープラントがここに含まれているかもしれない。

表2エネルギー変換施設における投入と産出の状況
デンマーク、2015年 単位:PJ

(脚注2)熊崎実「中山間地におけるエネルギー自立の夢と課題」『環境ビジネスオンライン』2017年10月2日,10日,17日付
(同3)Think Denmark, District Heating (2016), http://stateofgreen.com

なぜ地域熱供給か

 地域熱供給システムというのは、一つの場所で集中的に熱を生産し、熱パイプを通して多数の顧客に配る仕組みである。そのメリットとして一般に挙げられるのは、第一に、それぞれの住宅や事業所が個別にストーブやボイラを入れて暖房・給湯を行うよりも高い変換効率が得られること、第二に、DHに設置されるボイラは比較的大型で、除塵装置も付設できることから、使用できる燃料の幅が広がり、質の低いバイオマスでも燃やせることである。また顧客からすれば、燃焼装置を自分で設置・運転する必要がなくなり、いつでも好きなときに暖房や給湯のサービスが受けられる。
 しかしデンマークの近年のDHは、さらなるエネルギー源の多様化を目指している。例えばこれまでは捨てられていた工業廃熱も熱需要のあるところに運ばれれば、価値の高いエネルギーに一変する。また大型の蓄熱槽が設置されていれば、DHプラントから出てくる余剰の熱のみならず、集熱パネルを通して太陽熱を大々的に取り込むことができるだろう。さらに言えば、風力発電で大きな余剰が出たらその電気で温水をつくり、熱の形で貯めることもできる。
 おそらくデンマークほど「蓄熱」に熱心な国は他にあるまい。筆者がいささか驚いたのは、季節間蓄熱が行われていることだ。地面に巨大な穴(ピット)をつくって断水シートを張り、そこに温水を溜める。その表面を浮遊断熱層で覆うという単純な構造だが、数週間から数か月貯蔵できるという。したがって夏の間に太陽熱を取り込んでおいて、秋口から冬に使うこともできる。大きなピットのつくれない都市部では、地下水貯蔵でも対応できるらしい。余剰熱を低温で貯蔵し、必要なときにヒートポンプで温度を上げて使用するのだ。
 いずれにしても、デンマークで特徴的なのは「蓄電」ではなく、大小の蓄熱槽をうまく活用して、余剰エネルギーを貯蔵し、必要なときに小出しして使うシステムがしっかりと根付き始めていることである。

燃料転換を容易にするDHシステム

 住宅や事業所に入っている暖房・給湯設備のほとんどは、電気、石油、天然ガス、木質チップ・ペレットなど一種類の燃料で運転されている。燃料として何が望ましいかは、燃料市場の動向や政府のエネルギー政策などによって変わってくるが、そのたびに設備を取り替えるのは容易ではない。しかし多種類の燃料を扱うDHのシステムであれば、比較的簡単に燃料変更ができるし、また設備の更新・改変が必要であったとしても、DHプラントだけでやればよい。
 デンマークでも1980年から2015年の間に地域熱供給システムの燃料構成は目まぐるしく変わってきた(図2)。化石燃料では主役が石油から石炭、天然ガスへと変わり、その間再エネが一貫して増加している。DHが燃料転換の円滑化に役立っていることは明かだ。

図3デンマークの地域熱供給
燃料構成の推移 1980~2015年 構成比%

むすび

 デンマークのエネルギー事情を調べていて、つくづく思うのは、エネルギーの消費を減らし、再エネの導入を増やす方途は限りなくあるというということだ。日本などはまだ何もやっていないに等しい。CHPにしてもDHにしてもデンマークには数十年に及ぶ長い歴史がある。一気に追いつくことはできないにしても、5年先10年先を睨んで今から始めれば十分に追いつけると思う。
 加えて日本にはデンマークにはない地理的な利点がある。その一つが木質バイオマスで、人口1人当たりの資源的なポテンシャルは日本のほうが大きい。これを現実のものにするには、いくつもの障碍を乗り越えねばならないのだが(前掲脚注2を参照のこと)。また雨が多く山岳地形であることから水力発電所が数多くあり、揚水発電の可能性を考慮すれば調整電源としても相当な能力を持っている。さらに緯度が低い分、太陽エネルギーのポテンシャルも大きいだろう。
 デンマークでできて日本でできないという理由はどこにもない。

付記 本稿の初出は、週刊ウェッブ誌『環境ビジネスオンライン』の11月4日付から三回に分けて掲載したものである。

 

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