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木質バイオマス発電への期待と懸念(3)~買取価格は試行錯誤で調整するしかない~

バイオマスFITのジレンマ

前々回前回と、二回にわたって述べてきたことを要約しよう。「未利用木材」からつくられる電気が32円/kWhで売れるようになったことで、全国各地で出力規模のかなり大きい発電所の建設計画が続々と持ち上がっている。構想中のものまで含めると、全部で90カ所くらいになり、合計出力は130万KW(原発2基分)に達するらしい。これが本格的に稼働し始めたら、木質燃料の年間の消費量は1,000万トン超えるだろう。

他方、国内の森林では、利用されないまま伐り捨てられている間伐材などが、毎年2,000万立方メートルくらいは発生していると言われてきた。これが全部出てくれば、新規発電用の1,000万トンは賄える。ただ従来、ボイラ用木質チップの定番は建築廃材か工場残材で、調達コストの高い森林チップはほとんど使われていなかった。近年、伐出作業の機械化が進んで、森林チップの生産コストが低下傾向にあるとはいえ、全体としてまだまだ高く、32円のFITに対応して出てくるのは、いわゆる未利用木材の一部であろう。

未利用材があまり出てこないとすると、既存の木材関連業界と木質原料の奪い合いが激化するのは避けられない。製材、合板、木質ボード、紙パルプ、ペレット製造など木材を原料とするあらゆる業界に影響が及ぶ。現行のバイオマスFITでは、主伐や間伐のあと、山に残されるのが「未利用木材」であるとされ、材の特質をもとに定義されているわけではない。製材用材と低質の燃料用木材が一緒に伐り出されるような事態になれば、どこまでが未利用材なのか全く区別がつかなくなってしまう。

このような状況において、未利用木材の出材量を増やすべく、電気の買取価格を引き上げたり、出材補助金を出したりしたら、他の用途への食い込みがさらに激しくなって、収拾がつかなくなるだろう。マテリアル利用との競合を避ける正道は、路網整備と伐出・搬送・破砕技術の改善を通して割高な森林チップの生産コストを着実に引き下げ、FITの買取価格を可能な限り低く抑えることだ。これが前回の結論であった。

もちろん、これは時間のかかる話で、直ぐにというわけにはいかない。良し悪しは別にして32円、24円、13円という3本柱の買取価格は、すでに決められている。FIT対応の発電事業が本格的に動き出せば、木質原料を巡る他用途との競合がどこで生じているかも、ある程度明らかになるであろう。状況を見ながら必要な微調整を加えていくしかないのだが、その場合にどのような調整が考えられるであろうか。海外での経験も参考にしながら考えることにしたい。

燃料で決まる発電コスト

われわれの木質バイオマスエネルギー利用推進協議会では、平成25年度の調査事業の一環として発電コストの事例調査を行った。図1を見ていただきたい。全部で7つの事例を3つのグループに分けて、発電コストの比較をしている。順に説明すると、

  1. 国内の固定床ボイラによる発電
    このグループの3事例は同じメーカーの発電装置で、送電端出力が小(2.9MW)、中(5.5MW)、大(20.0MW)と異なっている。いずれも実際に稼働しているプラントのデータだが、規模別の比較ができるように一部「標準化」している。
  2. 国内の流動床ボイラによる発電
    ここにある2事例は、出力規模のほか燃料構成が少し異なっている。すなわち、4.8MWのプラントは未利用木材を主たる燃料とし、10.5MWのプラントは廃棄物系のバイオマスで燃料の半分をまかなっている。
  3. ドイツの固定床ボイラによる発電
    ドイツのバイオマスFITで、5MWと20MWのモデルとなった標準プラント。両者とも、熱電併給(CHP)プラントだが、電力のみで発電コストを試算した(1ユーロ=130円で換算)。ちなみに電力のみでは採算がとれない。

図を一覧して明らかなように、発電コストの高低はもっぱら燃料コストによるものである。燃料費以外のコストの合計には、それほど大きな差はない。蒸気ボイラ・タービン方式は、すでに成熟した発電技術であり、日本でもドイツでもあまり変わらないということであろう。

規模別のコスト比較を意図した、①のグループで注意してほしいのは規模が大きくなるほど、燃料のトン当たり単価が、8,000円、9,000円、10,000円と高くなっていることである。同じ質の森林チップを集めるという前提に立てば、集荷量の増加とともに単価が上昇する可能性は高い。このため出力規模によるコスト差が多少緩和されているかもしれないが、5.5MWと20MWの差はわずかである。さすが2.9MWのプラントになると、発電効率が20%に低下し、燃料以外の費目でやや割高になっている。

ドイツのバイオマスFITでは買取価格が日本よりかなり低めに設定されているが、それは安い燃料のお蔭で発電コストが低いレベルに抑えられているからである。

試行錯誤のドイツのバイオマスFIT

バイオマスFITで厄介なのは、買取価格のベースとなるべき発電の標準コストが簡単に決められないことである。同じ未利用木材でも、その調達コストはトン当たり5,000円から15,000円くらいの範囲に散らばっているから、電気の買取価格のほうも、例えばkWh当たり20円から40円くらいの範囲で設定することもできるだろう。低いほうに設定すると、山からバイオマスが出なくなって肝心の発電量が減るし、高く設定すれば発電量は増えるが、マテリアル利用に向けられるべき木質原料まで奪ってしまう。実際の買取価格はこの兼ね合いで決められる。ただし、最適なレベルが事前に設定できるとは思えない。やってみなければ何が起こるか分からないのである。暫定的にせよ決められたスキームを運用しながら、調整していくしかない。

2000年にスタートしたドイツのバイオマスFITも試行錯誤の連続であった。当初、発電の規模を0.5MW未満、0.5~5MW、5~20MWの3段階に分け、kWh当たりの報償額をそれぞれ10.2、9.2、8.7セントとして始めたのだが、応募してきたのは廃材利用の5MW以上の発電プラントばかりで、中小規模の申し出は少なかった。そこで、04年に報償額の枠組みが大幅に改定される。すなわち、当初の額を「基本レート」として残し、それに加算する形で「原料割増し」「CHP割増し」「技術割増し」のボーナスが設けられたのである。

原料割増しが付くのは、集荷にコストのかかる林地残材や樹皮などで、ボーナスの額は発電規模の小さいクラスほど大きい。マテリアル利用と競合しない「未利用の」バイオマスを使えば優遇するという、当局の政策意図がはっきりと読み取れる。

CHP割増しというのは、発電に伴って発生する排熱も利用するのであれば、電気にボーナスを付けますよ、ということだが、その理由としてよく聞かれるのは次の二つである。①国民の負担でFITが運営されている以上、効率の悪いエネルギー変換は対象とすべきではない、②用途の多い木質資源は貴重であり、効率の悪い発電に使うべきではない。CHP割増しは12年の法律改正で基本レートに組み込まれ、それと同時にエネルギーの総合変換効率が60%以上でないと、FITの対象にしないという規定が加わった。発電だけでこの要件を満たすのは不可能だから、好むと好まざるとにかかわらず、熱電併給にせざるを得ない。これは5MW以上の大規模発電にとって、非常に厳しい要件である。

いずれにしても、小規模分散型CHPの推進がFIT運用の軸になっているわけだが、この規模では蒸気ボイラ・タービン型の発電方式が使えない。ORCタービンや木材ガス化エンジンによる発電が推奨され、技術ボーナスが付けられるようになった。この割増しは12年の法改正で廃止されている。普及が一段落したということであろうか。

木質バイオマス発電の様変わり

欧州でバイオマスFITを実施している国は20前後で、スキームの複雑なものから、単純なものまで様々だ。そのなかで、発電の規模や燃料の種類に応じて細かく買取価格を設定しているのは、ドイツ、オーストリア、スイスの三国である。互いに隣接しているうえに、森林・林業の状況がよく似ているから、共通点が多いのは当然だが、無視できない差異もある。

各国の現行の報償額を表1にまとめてみた。日本の買取価格とも直接比較できるように、現在の為替レートで円に換算されている。まず目に付くのは、発電の規模区分で、5MW以下のクラス分けが非常に細かい。例えば、オーストリアでは以前、最小のクラスが2MW以下の一本になっていたが、12年の政令でこれが4つのクラスに細分された。スイスでも同様の傾向がみられ、0.05MW以下というクラスまで設けられている。

これまで木質バイオマス発電と言えば、数千kW以上の大掛かりなプラントをイメージしたものだが、今ではこれと並んで、数百kWの熱電併給プラントが大きく浮上してきた。上記の三ヶ国は、いずれも総合効率60%以上をFIT適応の条件にしている。表1で共通しているのは、発電の規模を細かく分けて、小さいクラスほど報償額を多くする政策を取っていることだ。このような政策が取れるようになった第一の理由は、言うまでもなくORCタービンや木材ガス化発電のような技術が、ようやく実用化の域に入ってきたことにあるのだが、それと同時に、発電が熱供給の延長線上に位置づけられるようになったことも見逃せない。木材加工場や小規模な地域熱供給の施設には、数百kWのバイオマスボイラが入っている。ここで熱だけを取るのはもったいない。まず電気を取って、その排熱で木材乾燥用、暖房給湯用の熱を確保しようという発想である。比較的小規模のCHPプラントであれば、木材工場から出る残廃材や近隣から集められる低質バイオマスで燃料を賄うことができ、大規模発電で懸念されるようなマテリアル利用との激しい競合は避けられる。各国が分散型CHPに強く傾斜する理由はこのようなところにもあるだろう。

その一方で、5MW以上の発電は「冷遇」されている。とくにそれが目立つのはドイツであって、このクラスの買取価格は10円以下に抑えられている。おまけに原料割増しもつかない。前出図1にあるドイツの20MWプラントは、安価な廃材を使っても発電コストは10円を超えており、電気だけでは採算の取れない構造になっている。ただ、注意を要するのは出力の大きい発電プラントでも、最初の0.15MW、次の0.15~0.5MW、さらに0.5~5MWについては、表1にあるそれぞれの報償額が支払われるから、原料割増しまで含めると5MW以下の発電量なら20円以上にはなるだろう。しかし、熱電併給であっても5MW以上の発電には、その半分以下しか支払われない。早く言えば、たくさん電気をつくるのはやめなさいということだ。他方、オーストリアとスイスでは5MW以上のクラスに対してドイツほど極端な差は付けていない。大規模クラスの発電量が多少増えても、マテリアル利用への悪影響は小さいと判断されているのかもしれない。

木質燃料の分別利用

FITの買取価格を、使用する燃料の種類によって差を付けているのは、オーストリアである。表1で基準になっている「生チップ」には、森林チップのほかに、製材の背板や端材からのチップも含まれている。これ以外の低質の工場残廃材を使って発電した場合、その報償額は基準の25%減、建築廃材などでは40%減になる。燃料の調達コストに、はっきりした差があれば、買取価格にも差をつけるのは当然のことであろう。しかし、ドイツは「原料割増し」のカテゴリーを設けたものの、それ以外は一本で取扱われている。

燃料の取引において、森林チップ、工場残材チップ、廃木材チップの3区分はたしかに有効だが、いずれもその中身は多様で、取引価格にも大きな幅がある。低質の森林チップは、高質の廃木材チップより安くなることも十分にあり得よう。木質チップの需要者は種類、形質、価格で差別される多様な燃料の中から、各自のボイラに適合するチップを選択している。もしそうだとすれば、買取価格に差を付ければ、使われる燃料が自ずと決まってくる可能性もあるだろう。ドイツでは、このメカニズムが比較的うまく働いているように思う。

0.5MW以下の小規模なCHPで、一般に採用されているのは、ガス化発電である。電気出力が小さいにもかかわらず、発電効率が30%近くになり、運転の安全性や信頼性も大幅に改善されている。その代り、燃料への注文が非常に厳しく、例えば水分率10~15%以下という制限が付く。人工的に乾燥したチップか、良質のペレットしか使えない。

直接燃焼の小型ボイラの場合も、比較的水分率が低くて、灰分の少ない木質燃料が要求される。また、サイクロンやバグフィルターのような除塵装置を備えていないケースが多いから、環境汚染物資質を含む廃木材は利用できないのである。

他方、発電な℃に使われる大型ボイラであれば、多様な燃料を受け入れることができる。水分率が多少高くとも、燃焼炉内の熱で乾燥するプロセスが組み込まれているし、形状のまちまちな燃料でもプッシュフィーダで送り込むことができる。さらに、低質のバイオマスを燃やす大型ボイラには、しっかりした除塵装置が付いているから、ハロゲン化合物や防腐剤を含んだ廃木材の使用も許される。

このようなわけで、小型のCHPプラントでは高価な良質の燃料しか使えず、大型の発電プラントであれば、安価な低質の燃料をも使うことができる。この両者で、電気の買取価格が大きく異なるのは当然だろう。逆に、大規模発電の買取価格が低く抑えられていれば、安い燃料しか使えないということになり、「分別利用」の秩序が自ずと出来上がっていく。

未利用木材、一般木材、建築廃材の三本建てをいつまでも続けるのか、それとも市場メカニズムを利用したドイツ流の分別利用にするのか。今後、検討する価値は十分にあると思う。

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動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~