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木質ペレット市場の国際化と狙われる日本

国際商品となった木質ペレット

 オランダはロッテルダムのエネルギー取引所で、木質ペレットが「グローバル・コモディティ」として化石燃料と同様の扱いを受けるようになったのは、今から4年前の2009年のことである。ペレットの先物取引が始まり、価格が告示されるようになった。これは木質燃料にとって画期的なことである。

 昔ながらの薪や粗朶(そだ:切り取った木の枝)はもとより、木質チップにしても基本的にはローカルな燃料であり、国境を越えた取引はごく限られていた。かさ張るうえに、形質のばらつきが大きく、商品として扱いにくい。おまけに肝心のエネルギー密度が低いから運賃をかけて遠くまで運ぶことができないのだ。それがペレットに加工されることで、国際的なエネルギー市場への仲間入りを果たしたのである。

写真1 木質ペレット
写真1 木質ペレット

 木質ペレット(写真1)というのは、木材を細かく粉砕して直径6~10mm、長さ10~30mmの円筒状に固めた成型燃料である。形状が小粒に統一され、水分も10%以下に押さえられている。これなら人手をかけずに燃料をストーブやボイラに完全自動で送り込むことができるし、均一で安定した燃焼も保証される。最近のペレット燃焼機器は性能がよくなっているから、利便性でも効率性でも化石燃料焚きの機器と十分に太刀打ちできる。

 当初は、家庭用のストーブや小型のボイラで燃やされることが多かったが、近年では欧州の火力発電所などで大量に使われるようになり、ペレットの消費量は世界的なスケールで急速に増加している。これに対応して、アメリカ、カナダ、ロシア、ブラジルなどでは年産数十万トンの大規模なペレット工場が続々と建設され、建設中・計画中のものも目白押しである。これらの工場は日本への輸出も視野に入れているらしい。

 わが国でも1980年代の前半から、木質ペレットの生産が始まった。現在も数十か所でペレットの製造が行われているが、小規模工場が圧倒的で、年間の生産量は全部合わせても10万トンにも満たない。海外からの輸入が本格化すれば一発で吹っ飛ぶ可能性がある。バイオマス電力の固定価格買取りが始まったことで、その可能性は一段と大きくなった。

2020年に日本はペレット消費大国?

 国際エネルギー機関(IEA)には、バイオエネルギーに特化した課題別のプロジェクトチームがある。各国の専門家の参加を得て調査研究を行い、提言などもしている集団だ。そのうちの一つ、Task 40は「バイオエネルギーの需給と国際貿易」にかかわるグループだが、彼らが最近まとめたレポートによると、2020年にペレットの消費大国になるのは日本と韓国、それに中国だと予測している(表1)。

 2010年の時点で世界のペレットの生産能力は2800万トン程度と推定されているが、消費量ベースでみると、表1にあるように、西ヨーロッパが7割、北アメリカが2割を占め、これ以外の地域での消費は全部合わせてもせいぜい1割程度だろう。ところがその後、欧州と北米の消費の伸びが鈍化し、日本と韓国、中国での消費量が猛烈な勢いで増えると予測されている。

 このような見方は海外の専門家のあいだでかなり広がっているのだが、日本の国内では、政府筋からも、業界や学界からも、一つも出てこない。国内で発言がないのは世界の状況がよく分かっていないからだと思う。木質ペレットが国際商品になったと言っても、その意味を理解できる人はごく少ないし、業界の内部においてさえ刻々と変わる海外の需給動向に十分な注意が払われていない。激震に見舞われて慌てふためくことになるだろう。

 そのような話をすると、すぐさま質問される。木質ペレットの消費の中心が欧州から東アジアに移るという推論にどれほどの根拠はあるのか。また東アジアで消費が増えるにしても、森林資源に乏しいこの地域では自給は無理だから輸入に頼るしかないが、それは本当に可能なのか、と。

ペレット輸入はなぜ激増するか

 今回取り上げたTask 40のレポートでも、需要予測の根拠が明確に示されているわけではない。早く言えば、状況証拠による推論である。同じ報告書の別の箇所に、石炭の輸入量で各国をランク付けした表が出ているが(表2)、ペレットの輸入量を予測する際、これが一つの手掛かりになっているのは間違いない。

 2010年の石炭の輸入量は日本がトップで、続いて中国が2位、韓国が3位となっている。この三者で世界の石炭輸入量の約45%を占めることになるが、表1で見た2020年のペレットの消費量でも同じような比率になっている。国内のエネルギー需要を満たすために大量の石炭が輸入されているわけだが、木質ペレットや後述するトレファイド・ペレットであれば遠距離輸送が可能で、石炭に代えてペレットを輸入するという選択肢が出てくる。

 加えて石炭の場合は発熱量当たりのCO2排出量がとりわけ大きい。CO2削減の観点からは、石炭の消費をできるだけ減らして、カーボンニュートラルな木質燃料の使用を増やすのが理にかなっている。現に、韓国では2020年までに温室効果ガスの排出量を30%削減するという目標があり、これを達成するには500万トンのペレットが必要になるという。ちなみに、表1にある日韓の1350万トンのうち500万トンが韓国向けであるとすれば、日本は残りの850万トンということであろうか。

 わが国ではまだ「エネルギー基本計画」ができておらず、木質エネルギーの導入目標値もはっきりとは決められていない(※)。引用できるデータがないから「状況証拠」に頼るしかないのだが、よく聞かれるのは、①原発事故を経験した日本は、ここしばらくは石炭火力に頼らざるを得ない、②同時に国際社会からはCO2削減を求められており、バイオマスの石炭混焼がますます重要になる、という推論である。

 加えて、昨年7月からのFITの発足で、輸入バイオマスの混焼でつくられた電気も24円/kWhで買取られることになった。石炭混焼は最もコストのかからない発電方式である(本シリーズの「木質エネルギーの市場競争力:熱供給と発電」を参照のこと)。それを考えれば24円という買取り価格はかなり高い。

 EUの諸国では、本部で決められた再生可能エネルギーの導入目標を達成すべく、各国は海外から入る発電用バイオマスについても一定の支援措置を講じているが、混焼用の輸入バイオマスに価格固定型のFITを適用している例は見当たらない。発電用ペレットを大量に輸入している諸国を見ると、デンマークとオランダは市場価格に固定プレミアムを上乗せするPITであり、ベルギー、スウェーデン、イギリスはグリーン電力証書と組み合わせたクウォータシステムをとっている。

 いずれのケースも報償額はそれほど高くないのだが、それでも世界中のペレットが上記の国ぐにに殺到している。日本の火力発電所がそれよりも高く買うとなれば、世界のペレットはこちらに向きを変えるだろう。

※ 2013年11月時点。2014年4月11日に資源エネルギー庁がエネルギー基本計画の第四次計画を公表している。
http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140411001/20140411001.html

大規模化する世界のペレット工場

 隔月雑誌の「Bioenergy International」には年に1回『世界のペレットマップ』という付録がついてくる。この付録には年産1万トン以上のペレット工場について企業名、所在地、生産能力が明記されていて参考になることが多い。

 表3は2009年と13年のペレットマップのデータを使って、生産規模別の工場数と地域別の総生産能力を集計したものである。工場数はこの4年ほどのあいだに世界全体で500弱から700強に増加した。規模別には大型のものほど増加倍率が高く、年産10万トン以上の工場だけで100を超えるまでになった。また総生産能力の地域別のシェアで見ると、09年に70%を占めていた欧州の優位が揺らぎ、北米、さらには「その他」地域への拡散が著しい。

 しからば日本はどうか。13年のペレットマップには5つの工場がリストアップされているが、その生産能力はすべて3万トン以下。恐らくペレット製造機の入っている事業所の総数は100を下らないであろう。だがそのほとんどは年産1000トンかそれ以下の小規模プラントだ。率直に言わせてもらえれば、世界の大勢が本格的な工場生産に移行しているのに、日本のそれは未だ家内工業の域にとどまっているように思う。

 それはともかく、世界のペレット生産は今後さらに伸びると見られている。バイオエナジー Task 40 の別の研究グループは、2010年に300万トンであったEUのペレット輸入量は20年までにその5倍の1600万トンになると予測している。これはアメリカ、カナダ、ロシアなどの産地の動向をベースにしたものだ。比較的近い将来のことだから既存の工場での拡張計画や、新設予定工場での生産能力や操業開始時期が分かれば、ある程度の見当はつく。

 稼働中の大型ペレット工場と建設中または計画中の大型工場については、すでに長いリストが作成されている。参考までに両者のベストテンを一覧にしておこう(表4)。木材資源に恵まれた地域で、巨大な工場がどんどん誕生している。彼らはいずれ大量に出てくる製品の出口を必死に探し始めるだろう。

バイオマスの高密度化がこれからの流れ

 ペレットは高密度化された(densified)バイオマス燃料とも呼ばれる。燃料としての形質が均質化して、エネルギー密度が高められたからである。バイオマスの高密度化がさらに進展すれば、輸送距離が延びて流通圏の拡大につながるであろう。木質ペレットの登場でその第一歩が踏み出された。しかしそれは始まりであって、終着点ではない。

 木質ペレットは木を細かくして乾燥させ、そのまま固めたものであるから、本来木材が持っていたエネルギーの全部がこの中に閉じ込められている。それは大きな長所だが、原料となる木の個性まで受け継いでしまうという難点がある。樹木の種類や部位で製品の燃料特性が違ってくるのだ。良いペレットをつくるにはなるべく均一な原料を使わなければならない。とくに広葉樹では樹種による違いが大きいために、混ぜて使うのが難しいとされている。また木質ペレットは水分を吸収するから屋外で野積みすることができない。

 もう一つ重要なのは使える原料の範囲である。もともと木質ペレットは製材工場のおが屑やかんな屑を原料にしていた。これなら木の木部だけだから、樹皮を含まない良質のホワイトペレットになる。近年では低質の丸太を破砕して原料にするケースが増加し、多少樹皮も混ざるようになったが、木部が主体でることには変わりはない。しかし今後エネルギー利用の対象となるのは、もっと質の低い雑多なバイオマスである。これを高密度化する技術として近年注目されているのが「トレファクション」だ。「焙煎」「半炭化」などの日本語があてられることもあるが、ここでは英語のtorrefactionのままにしておく。

 簡単に言えば、常圧、無酸素のもとで乾燥したバイオマスに230~300℃の熱を加える熱化学処理の一つである。木質ペレットとは違って軽い熱分解が加わるから木材の揮発性成分の一部が失われる。質量の減少は20~40%になるが、エネルギーの損失は10~20%にとどまるらしい。その一方で水分率は1~5%に低下し、吸湿性もなくなる。また木でも草でもリグノセルロースと呼ばれるバイオマスなら、だいたい似たような燃料に変化し、エネルギー密度も木質ペレットよりはかなり高い。生物の特徴がなくなって石炭に近づくのである。

 ただ木質のチップにトレファクションを加えると非常に壊れやすくなる。これは石炭火力での混焼には好都合だが、粉末になって飛散しやすいという難点がある。取扱い上の便宜を考えて、ペレット状に固められることが多い。トレファイド・ペレットがそれだ。この新しいタイプのペレットは現在のところ一般に流通しているわけではないが、名の知れたペレット企業のいくつかはトレファクションも視野に入れた長期計画を持っていると言われる。

 高密度化の別の形態として熱分解オイル(pyrolysis oil)がある。これも無酸素状態でバイオマスに500℃ほどの熱を瞬間的に加えて得られるものだ。この種の高速熱分解では液体状のオイルのほかに固形の炭(チャー)と不凝縮ガスが出てくるが、炭にはそれ自体で商業価値があり、ガスのほうは熱分解のエネルギー源となるから、無駄になる部分は一つもない。熱分解オイルは重油に代わる燃料としてボイラで直接燃やすことができる。現在の市場は小さいが、比較的大きな製造プラントがカナダで稼働しているようだ。

 バイオマスの高密度化によって得られる3種類の燃料の特性が表5にまとめられている。生のままの木材に比べると、水分が少なくなる一方で、発熱量、かさ密度、エネルギー密度のいずれもが相当に高まっている。もちろん、低質のバイオマスをどこまでグレードアップするかはコストとの兼ね合いで決まることだが、これからも化石燃料価格の上昇が続くようだと、高密度バイオマスの国境を越えた交易がますます盛んになるのは間違いない。

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