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木質バイオマス発電のFITはこのままでよいのか(4)~改善策の提案~

重要な政策ビジョン

 木質バイオマスを使った発電のコストは、太陽光や風力による発電のコストよりも変異の幅が大きい。発電技術に由来する出力規模別のコスト差にはそれほどのバラツキはないが、木質バイオマスの場合は燃料費のウェートが高く、しかもその燃料の調達コストは条件によって実にさまざまである。早く言えば、FITの買取価格を決める単純で客観的な基準がなかなか見当たらない。政策判断に頼る場面がどうしても多くなる。重要なのは「木質バイオマスのエネルギー利用は如何にあるべきか」の政策ビジョンだ。
 ただしこの課題はもう一段上の一般的なテーマ「森林の保護・保育と木材の利用は如何にあるべきか」に直結している。ドイツを軸とした中央ヨーロッパで、天然林を伐採するだけの「略奪林業」から、植えて育てる「育成林業」への移行が目立つようになるのは、17世紀末から18世紀にかけてのことだが、以来、一国あるいは一地域の森林をどのように保護し、利用するかは為政者の重大な関心事となってきた。
 というのも、木材生産の事業は自然環境の主要な構成要素である森林を舞台にして展開されており、しばしば社会的な緊張を生むからである。早い話、木材を伐採するという行為は人類が犯した自然破壊の最たるものなのだ。良好な自然環境を維持しながら、木材生産を続けるにはどうしたらよいか。それがドイツで誕生した「林学」という学問の主要なテーマの一つになり、探求の努力は今日まで続いている。その結果、次第に明らかになってきたのは、環境と木材は必ずしも二律背反ではなく、この両方を同時に手に入れる可能性が広く残されているということである。

森林管理の二つのシナリオ

 具体的な例で説明しよう。気候変動との絡みで温暖化効果ガスの排出削減が喫緊の課題として浮上しているが、地球をめぐる炭素循環の中で森林の果たす役割は非常に大きく、排出削減の一翼を担うことが期待されている。気候変動緩和の観点から望まれる森林利用とはどのようなものか。
 まず有機構造の大きい森林を造成して大気中のCO2を最大限に吸収させ、樹木と森林土壌に炭素の形で貯めこませることだ。しかし森林が高齢になり成熟してしまうと樹木の成長と枯損がバランスしてCO2の純吸収はゼロになる。そこで成熟した樹木を中心に抜き伐りしてやれば、森林は若返り成長力を取り戻すだろう。CO2の吸収が再び活発になる。また収穫した太い丸太で耐用年数の長い建築物をつくるとすれば、森林に貯められていた還元炭素はこの先何十年にもわたって木造建築物に保持されることになるだろう。しかも木材は非木質系のセメントやプラスチック、鉄類などに比べて製造時のCO2排出量が少ないから、これらを木質系に置き換えることによって温室効果ガスの削減が実現する。
 この建築物も解体されれば、いわゆる建設廃材になるが、すぐに燃やすのはもったいない。パーチクルボードや繊維版の製造にも使えるし、パルプ用のチップにもなるだろう。木を燃やすということは木材構造の最終破壊であるから、可能な限り再利用を繰り返した末に燃やすべきだ。もちろんすべての木質原料は廃棄される運命にある。木材伐採、木材加工、木材消費のいずれの段階でもエネルギー利用以外に仕向け先のない残廃材が相当量発生している。これらの残廃材を自然の状態で放置しておくと、低温の熱を少量ずつ出しながら分解し、元のH2OとCO2に還っていく。これが燃焼になると、高温の熱が発生して急激な分解が起こるというだけで、プロセス自体は少しも変わらない。自然に腐らせるような木材があったら、すべからく、それを燃やして熱や電気を取るに限る。その分、化石燃料の消費が減少するのだから。
 以上が低炭素社会を目指す森林管理・木材利用のシナリオである。持続可能な木材生産を目指す現代のシナリオと大筋では変わらない。ドイツやオーストリアで台頭した育成林業は次第に林木ストックの大きい森林の造成を志向するようになった。トウヒや欧州アカマツなど針葉樹の大径木が高く売れていた関係で、100年前後の長い伐期を設定して、持続的な木材生産を続けてきたのである。構造材として使えない小丸太や枝条は燃料に向けられていた。その後、紙パルプ産業や木質ボード産業などが大量の低質材を需要するようになり、加えて安価な石油が出回るようになったために、木質燃料の消費は急速に落ち込んでゆく。ところが20世紀末から始まる化石燃料価格の著しい上昇で木質燃料の華麗な復活が始まった。またエネルギー変換技術の進歩により熱効率の改善だけでなく、ごく質の低いバイオマスでも利用できるようになった。これはCO2削減の視点からも、木材利用の視点からも歓迎すべきことである。

共同便益の追及

 ところでCO2削減の視点と木材利用の視点とでは追及する便益がまったく異なっている。したがって両者が描く森林経営のシナリオが完全に一致することはあり得ない。しかし両者が追及する便益には共通するものも少なからずあるし、互いの補強しあうような側面もある。共同便益(cobenefit)と呼ばれるものだ(脚注)。この共同便益を軸に互いに譲り合い微調整しながら共通のシナリオを描くことは可能であろう。木材生産に対しては近世の時代から伐採規制や森林の利用区分(ゾーニング)などの「環境制約」が課せられてきたが、近年では「持続可能な森林管理のために基準や指標」が国際的なレベルで論議されている。
 ただ木質バイオマスのエネルギー利用に注目が集まるようになるのは比較的最近のことだ。工場残廃材や建設廃材の活用にとどまっている限り、別に問題は生じなかった。それがこの10年ほどのあいだに欧州諸国で木質燃料の需要が急増し、マテリアル利用との競合が激しくなった。木質バイオマスのエネルギー利用は如何にあるべきかが、改めて問われることになったのである。

(脚注)共同便益の概念は、杉山大志「炭素価格政策と排出量取引制度」電力中欧研究所、SERC15006(2016年3月)に拠った。

木質バイオマスのエネルギー利用:四つのキーワード

 現在はまだ論議の段階で決定版は見えていないが、これまでの提案を総覧すると次の四つのキーワードにまとめることができるように思う。分散型熱電併給、カスケード利用、未利用資源の活用、地域振興がそれである。
 (1)目指すべきは分散型の熱電併給
 木質バイオマスの際立った特徴は、比較的安いコストで良質の熱を生産することである。先端的な技術を使えば木材のもつ化学エネルギーの90%を有効な熱に変換することができるけれど、発電だけだと変換効率はせいぜい25~30%くらいにしかならない。発電する場合も、分散型の熱電併給システムにして発電廃熱も有効に利用すべきだ。また1トンの木質チップを燃やして化石燃料に代替する場合、熱供給であれば約1トンのCO2が節減されるが、発電だけだとその半分にとどまる。
 (2)カスケード利用の徹底
 山から伐り出される1本の樹木についていえば、幹の部分からは製材用材、合板用材、パルプ用材など付加価値の高い順に採材していき、最後に残った末木枝条などもエネルギー源として使い尽くすこと、それがカスケード利用である。また丸太を受け入れた木材加工業においても、工場の中にCHPプラントを設置すれば、安価な工場残廃材が使えると同時に木材乾燥のような熱の出口もあり、低コストのエネルギー変換が実現する。
 (3)地域に賦存する多様な未利用資源の活用
 地域に賦存するバイオマス資源はすこぶる多様で、この中にはエネルギー源としてしか使えないものも沢山ある。現状では発電用チップの給源を人工林の間伐材などに求めているため、マテリアル利用との競合が激しくなっている。競合を回避する意味からも本来の「未利用」資源の活用に力点を置くべきである。
 (4)重要な地域振興の視点
 木質バイオマスを最も効率的に集め、利用できるのは中山間地である。そのバイオマスで地域の「エネルギー自立」を目指すことになれば、地域内での雇用を増やし、外部に支払われるエネルギー代を減らすことができるであろう。

新しい提案の枠組み

 上記の四つのキーワードを念頭において木質バイオマスFITをデザインすることになるが、現存のスキームをまったく無視して、根底からつくり直すというわけには行かない。問題はどう補正するかである。筆者の脳裏にあるスキームの基本的な枠組みは次の三点に集約される。
 (1)FITの適用範囲を出力10MW未満のプラントに限定し、それ以上の大型発電
    については石炭火力でのバイオマス混焼を含めてRPSのような別立てで助成
    する。
 (2)買取価格の基本レートは燃料の種類やプラントの電気出力とは関係なく、一
    律に24円/kWh(現行の一般木材の買取価格)とする。
 (3)新たに割増(ボーナス)制度を導入して、条件に応じた最小限の補正を行
    う。この場合、ドイツが2004年の法(EEG)改正で導入した「燃料割増」
    「CHP割増」「技術割増」が参考になろう。
 上記の提案では、13円に抑えられていた建設廃材の買取価格が24円に引き上げられている。その理由はこうだ。木質燃料への需要が増えていくにつれて、建設廃材の価格がかなり速いスピードで上昇していくだろう。これを無理に抑えることのほうがむしろ不自然だ。リサイクル材にもピンからキリまであって、小型のボイラで燃やせるような建廃をいつまでも廃棄物扱いにするのはおかしい。筆者はそのように考えている。
 ボーナス方式を導入したのは、それなりのメリットがあるからである。第一は、設定の目的がはっきりしていて、状況を見ながら比較的容易に改廃ができること、第二は、出力階層ごとにボーナスの額を変えることで買取価格の規模による差別化が可能になることである。ボーナスが適切に設定できれば、燃料の種類による買取価格の差別化と出力規模による差別化の両方をバランスよく取り込めるのではないか、そんな期待が込められている。もう少し詳しく説明しよう。

燃料割増

 現行の「未利用木材」のカテゴリーを抹消し、それに代えて本来の未利用資源を対象にした「燃料割増」を設ける。未利用のまま放置されている木質資源と言えば、林地残材のほか、旧薪炭林などの整理伐採、開発や景観維持にかかわって発生する伐採木や剪定枝、竹などがある。これらはマテリアル利用との競合が比較的少ない。そのうえ放置された雑木山や竹林から定期的にバイオマスが取り出されるようになれば、手入れの行き届いた自然景観を再び日本の農山村に取り戻すことができるだろう。ちなみにドイツの燃料割増は出力規模で差がつけられていて、0.5MW未満は6セント、5MWまでは2.5セント、それ以上はゼロとなっていた(1ユーロ=130円で換算)。

CHP割増と技術割増

 現行のスキームでは未利用木材を使う2MW以下の発電に対して40円/kWhの買取価格を設定していたが、これもなくしたほうがよい。こんなに小規模では40円にしてみても発電だけでは採算が取れない。ORCや木材ガス化発電のような新しい技術を導入して熱電併給(CHP)でいくことになるだろう。もしそうであるのなら、2MWの出力規模で区切るよりも、CHP割増と技術割増の併用で対応したほうがずっとすっきりする。
 なおドイツのCHP割増は2004~11年まですべての出力階層共通で2~3セント/kWhになっていたが、2012年にはこれが基本レートに組み込まれた。ただし5MW以上のクラスだけは例外で、この組み込みがなく、CHP割増は完全になくなった。また技術割増は5MW以下のクラスに限って2004~11年まで2セント/kWh支給し、12年の法改正で廃止した。新技術が普及して一段落したという判断があったのかもしれない。

残された課題

 三種類のボーナスをどのようなレベルに設定し、出力規模による落差をどれくらいにするかという課題が残っている。ドイツの場合は木質燃料の需給が逼迫してきたために発電の抑制に踏み切った。発電量から言えば大型プラントのシェアが圧倒的で、小型ガス化プラントの数が増えたとしてもその発電量はしれたものである。そうした背景もあって小規模の熱電併給が優遇されることになった。日本でも木質バイオマスのエネルギー利用がマテリアル利用を強く圧迫するようなことにでもなれば、同様の措置をとることになるだろう。国内の資源状況から見て許容される発電量はどれほどのものか、その判断が重要な意味を持ってくる。
 ベースとした24円についてもさまざまな論議があるだろう。ただはっきりしているのは、FITのスキームは近い将来、市場メカニズムに統合されるということだ。もし24円が高すぎるようであれば、新規の発電プラントに対する買取価格をどんどん引き下げていかねばならない。いくつかの国では、年当たり、ないし四半期ごとの引下げ率(degression)をかなり高くして、市場化を急いでいるように見える。またオーストリアのように設置される発電プラントの合計出力が一定の閾値を超えたら買取価格を大幅に引き下げると予告している国もある。そうした選択を迫られる時期が日本にもやがてやってくると思う。
 いずれにしてもFIT制度の本来の目的は固定された価格で再生可能な電気をいつまでも買い続けることではない。優遇されているあいだに発電コストの削減を推し進め、補助なしでも市場で競争できる力をつけなさい、というメッセージなのだ。こうした「市場化」の筋道は、欧州委員会の「エネルギー・環境分野の国家助成ガイドライン」(2014年4月)に明確に示されている。ドイツはこのガイドラインに従って、固形バイオマス発電の分野でもFITの改革を断行した。われわれとしても「市場化」の流れを念頭に置きながら、今後のFITのあり方を考えなければならない。これが次回のテーマである。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~