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木質バイオマス発電のFITはこのままでよいのか(2) ~実質的な意味を失った「未利用木材」~

 日本の木質バイオマスFITの買取価格は「未利用木材」を基軸にして組み立てられている。ところが未利用木材とは一体何なのか、その肝心の定義が定かではない。当初は「間伐等で伐り倒されたまま山に残されている木材」といったニュアンスで使われていたが、それがいつの間にか「間伐材」になり、最近では山から下りてくる木材なら何でもよいとする風潮さえ生まれている。こんな拡大解釈を許していたら、用途間での材の取り合いが激化するのは目に見えている。紙パルプ業界や繊維板業界、さらには合板業会などから憤りの声が聞かれ始めた。
 筆者の知る限りでは、当初想定されていた「未利用木材」は、すでにあらかたなくなっている。以前は間伐された丸太がそのまま山に放置されている情景をよく目にしたが、最近ではほとんど見かけなくなった。にもかかわらず、未利用木材に固執しているものだから、定義の漂流が始まったのである。このような状況が長く続くのは決して好ましいことではない。メリットは何もなく、マイナスの弊害ばかりが増えていくからである。

FITでの木質バイオマスの三区分

 表1は、発足時のFITで区分された3種類の木質バイオマスの正式の呼称と具体的な中身を一覧したものだが、この区分が大きな混乱を産み出すことになった。
 経産省の告示によると、未利用木材とは「森林における立木竹の伐採または間伐により発生する未利用の木質バイオマス」のことである。立木竹の伐採で発生する木質バイオマスは、利用の有無によって二分されるわけだが、肝心の未利用の定義はどこにもない。また常識で考えれば、未利用木材以外の木質バイオマスが「一般木材」になりそうなものである。ところが経産省の告示では一般木材とは「木質バイオマスまたは農産物の収穫に伴って生じるバイオマス」とされ、山から下りてくる未利用以外の木材は含まれていない。早く言えば後者の居場所がないのである。
 そこで林野庁のガイドラインを見てみよう。経産省告示の内容説明にはなっていない。未利用の定義もないし、未利用以外の木材の取り扱いにも触れられていないのだ。告示とは一切かかわりがないかのように、間伐材と森林計画対象森林などから伐り出される木材が「未利用木材」で、それ以外の伐採木材は「一般木材」に押し込められた。後者は告示によって木質バイオマスの収穫に伴って生じるバイオマスと定義されていたではないか。なぜこのようなことになるのか、まったく理解できない。
 いずれにせよガイドラインの段階で未利用の文字が消えてしまった。また実務の面でも完全に無視されている。つまり、間伐材ないしは森林計画対象森林等から伐り出された証明があれば、未利用木材として認定されるのだ。本当に未利用か否かは何も問われない。
 FITがスタートする時点で聞かされていた説明とはすっかりかけ離れている。当時、林野庁から出ていた『木質バイオマス発電・証明ガイドラインQ&A』では、未利用木材の説明として「伐採されながら利用されずに林地に放置されている未利用間伐材や主伐残材といったもの」という記述がある。これなら告示の定義の説明になっているし、またそのころ流布していた「山に残された未利用間伐材2,000万立方メートル」とも呼応している。この種の未利用材はコストが嵩みすぎて出材されなかったわけだから、32円という買取価格もやむを得ないと、筆者などは判断していた。状況が変わってきた経緯を少し追ってみよう。

急速に減少した放置間伐材

 90年代から00年代にかけて目を覆いたくなるような切捨て間伐が横行していたのは事実である。毎年2,000万立方メートルもの木材が山に放置されているという衝撃的な数字も飛び出してきた。ただこの数字も間伐補助金の支給実績から推計される間伐材積と実際に山から運び出された間伐材積との差から推測されたもので、実際にどんな木材が山に残っているか詳しいことはまったく分らない。その発生量も年度によって相当変動しているはずだが、10年以上にわたって一つの数字が念仏のように繰り返されてきた。
 林野庁は一時期、切捨て間伐には補助金を出さないという方針を採っていたし、さらに2000年代の後半あたりから小径丸太の需要が増えていた。あれやこれやで、FITがスタートするころには、山に残された切捨て木材の量は相当に少なくなっていたように思う。そこへFITが始まって発電用チップの需要が増え、搬出手段のない一部の地域を除いて、放置木材が一気に消えてしまった。それが実情だとしたら、FITはターゲットを失ったことになる。

未利用材と林地残材

 筆者は、以前このシリーズで「山に残された切捨て間伐材や主伐残材=未利用木材」というこれまでの定義は、もはや実質的な意味を失っている、未利用材本来の定義に立ち返るべきだ、と主張した(脚注)。本来の定義とは、構造用材(あるいはパルプ用材)として使えない木材のことである。これは日本の「林地残材」やドイツの「森林残材(Waldrestholz)」に相当する。かつては製材用丸太やパルプ用丸太を伐り出した後、梢端部の小丸太や端材、末木枝条などが山に残されることが多かった。そうした残材は概して出口がなく「未利用材」とも呼ばれていたのだ。
 経産省の告示や林野庁のガイドラインでは、未利用木材を定義するに当たって「林地残材」という用語が注意深く回避されている。理由は二つあるようだ。人工林の間伐と言っても、おおむね30年生以上の壮齢林だから、山に残されている未利用間伐材には製材や合板にも向けられるかなり太い丸太も含まれている。この中から「林地残材」だけを選んで運び出すというのは、およそナンセンスだ。伐り倒されて山に残された木材すべてが未利用材でないと都合が悪い。
 そして二番目の理由はこうである。伐倒した木材のうち林地残材として使えるのは、せいぜい20~30%。発電での需要が増えるとすると、これだけではとても足りない。パルプ用のC材や、さらには合板用のB材も使える道を開いておく必要がある。こうした思惑があったとすれば、最初から未利用木材=間伐材といった拡大解釈の道が開かれていたと言わざるを得ない。

(脚注)拙稿「迫られる未利用木材の再定義」環境ビジネスオンライン、2015/7/13付

マテリアル利用との競合

 木質バイオマスに対する報償額を日独で比較すると、全般的に日本のほうが高めになっている。そのなかで建廃バイオマスの13円/kWhだけが国際的に見てもリーズナブルなレベルにあると思う。当時言われていたのは、リサイクル材はマテリアル利用にも広く使われており、買取価格は上げられない、とのことであった。
 こうした配慮が未利用木材に対してなぜなされなかったか。当時の担当者から聞いた限りでは、マテリアル利用の業者さんたちは森林に放置された未利用間伐材には手をつけてない、だから競合は起こらないとのことであった。しかし未利用木材の範囲が間伐材一般、さらには山から下りてくる木材一般に広がるとすれば、話はまるで違ってくる。
 木質バイオマスFITで買取価格を決める際、何よりも考慮すべきはマテリアル利用への影響である。ドイツでは今世紀に入って木質バイオマスのエネルギー利用が急増し、マテリアル利用中心の木材産業連盟などからFITへの強烈な反発が出てきた。その結果、大型発電の報償額が大きく引き下げられたうえに、総合変換効率60%以上という高いハードルを課せられて、5MW以上の固形バイオマス発電はFITから実質的に締め出されてしまったのである。
 大型の木質バイオマス発電所には大きな燃焼炉が入っていて低質のバイオマスでも燃やすことができるし、しっかりした除塵装置が付設されているなら環境汚染物質を含む廃棄物系の燃料でもある程度まで受け入れられる。つまりカスケード利用の序列としては一番下にあってスイーパーのような役割を果たしているわけだから、他のどこにも使えないような、低質で安価なバイオマスがここに集まる仕組みをつくるべきである。大型発電の買取価格を安易に引き上げると、既存の木材利用の秩序が根底から突き崩されてしまう。マテリアル利用との競合を避ける最善の方途は、買取価格をできるだけ低くしておくことだ。
 未利用木材に適用される32円の買取価格はかなり高いレベルにある。これを通常の間伐材や森林から出てくる一般材に一律に適用するのは無謀に過ぎるだろう。未利用材活用の主旨を貫くなら、マテリアル利用との競合が少ないバイオマスや、コストが嵩んでこれまで利用されてこなかったバイオマスに限って適用すべきだと思う。そのような観点からドイツのFITは森林残材や修景残材に「燃料割増」の恩恵を与えてきた。わが国では旧薪炭林のような天然性広葉樹林が伸び放題で放置されている。これこそ正真正銘の未利用資源であり、燃料割増の有力な候補である。

山のバイオマスに高いFIT価格を適用することの難点

 山から下りてくる木材を買取価格の頂点にすえて、工場残材や建廃をそれに従属させるやり方は、一見、山側ないしは林業のサイドに利益をもたらすように思えるが、短期的にはともかく長い目で見て森林価値の最大化には決してつながらないと思う。
 国内の人工林のほとんどは構造用材の獲得を目的にして育てられてきた。ここには多大の労力と資金がつぎ込まれている。収穫された木材も可能な限り構造用材として利用し、マテリアルとして使えない部分をエネルギー利用に向けるのが正常な姿である。そうしてこそ人工林価値の最大化が達成されるのだ。ところが山から下りてくる木材にFITの高い買取価格が適用さるとなれば、マテリアル利用をすっ飛ばして発電所に流れてしまうだろう。
 2014年の4月からは未利用木材を使った2MW以下の発電が「別区分化」されて、40円/kWhが支払われるようになった。小規模発電を優遇する動きは欧州諸国でも広がっており、分散型の熱電併給システムを普及させるうえで重要な役割を果たしている。その限りで、別区分化は慶賀すべきことなのだが、どうしたことか適用対象を未利用木材に限定してしまった。熱電併給の小型システムが一番導入しやすいのは製材や合板などの木材工場である。自社の工場残材で燃料が賄えて、発電の排熱が自社製品の乾燥に使えるからだ。どのみち高価な未利用木材は使いづらい。
 低質の間伐材などを大量に集めている、ある業者さんの話では、この中には製材や合板に向く材が3割くらい含まれていると言う。2MW以下のCHPプラントを備えた木材加工場が、その中から良質の丸太だけを選び出して製品をつくり、出てきた木屑で発電したとしよう。工場残材は一般木材だから電気は24円でしか売れない。ところが木材加工を一切やめて、入手した丸太の全部を発電に回せば、電気は40円で売れる。
 これはどこかおかしい。カスケード利用を重視するなら、むしろ山から下りてくる木材の買取価格を低め、工場残材に対するそれを高めたほうが良いのかもしれない。

むすび

 以上のようなわけで、FITの買取価格を燃料の種類で決めるのは相当な無理がある。しかも軸になるべき「未利用木材」の定義を曖昧にしてきたために、さまざまな拡大解釈を生み、マテリアル利用との材の奪い合いが激化してしまった。もはや未利用木材に「未利用」の片鱗はなく、詐称と言うしかない。それどころか、32円という買取価格だけを残して中身をすり替えたわけだから、詐欺まがいのやり方である。このようなことをいつまでも続けるべきではない。
 次回では、もう一つの検討課題であるプラントの出力規模と買取価格の問題を取り上げる。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~