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木質バイオマス発電のFITはこのままでよいのか(1)~燃料の種類で買取価格は決められるか~

 固定価格買取制度(FIT)がわが国でスタートして4年が過ぎようとしている。木質バイオマス発電については、当初に決められた買取価格の骨組みを維持したまま今日に至っているが、そこに内在する問題点もようやく明らかになってきた。これから数回にわたって、そうした問題点を改めて整理するとともに、どのような改善策があり得るかを提示したいと思う。
 なお、この提案は筆者の個人的な意見であり、(一社)日本木質バイオエネルギー協会の公式見解ではもとよりないし、理事会等の論議を経て出たものでもない。意図しているのは、筆者なりの筋を通した素案を提示し、これからの論議のたたき台にしてもらうことである。皆さんの多様な意見を吸収してより良いプランに改良されていくことを、心から願っている。

ユニークな日本の木質バイオマスFIT

 わが国のFITはドイツをお手本にしたと言われているが、木質バイオマスに関する限り、両国の報償額(買取価格)の体系はまったく異なっている。表1を見れば一目瞭然だろう。
 ドイツの場合は、発電プラントを電気出力で4つのクラスに区分しそれごとに報償額を決めている。報償額は基本レートと燃料割増で構成されており、樹皮や森林残材、修景残材のような調達コストが嵩み、マテリアル利用と競合しない燃料を使うとボーナスがもらえる。割増の付かない燃料であれば、どのような種類のものを使っても報償額は変わらない(脚注)。

 ここで留意すべきは出力規模による報償額の落差は相当に大きいことだ。150kW未満の施設ではkWh当たりの基本レートが18.5円で、これに燃料割増の8.5円が加算されると合計で27円になる。ところが5MW以上の発電では基本レートが8.5円にまで引き下げられて、割増は何もつかない。小規模な熱電併給(CHP)を優遇する政策スタンスが鮮明である。近年、5MW以上の大型発電の新設がほとんど見られなくなり、数百kW以下の小型ガス化発電が大幅に増えているが、FITを通しての政策誘導によるところが大きい。
 ところが日本の場合は、燃料の種類によって買取価格に大きな落差がつけられた。当初は、間伐などで伐倒されたまま山に残される「未利用木材」が32円、製材工場の残材や修景残材などの「一般木材」が24円、建設廃材などのリサイクル材は13円と決められていた。燃料の種類による落差は相当なものだ。
 その一方でプラントの出力規模による発電コストの大きな落差は一切無視されていた。2014年から未利用木材に限って2MW未満プラントでの買取価格が40円に引き上げられるが、これはマイナーな補正と言うべきであろう。蒸気タービン発電の場合、出力規模に関係なく同一額が支払われるから、計算上は大規模になるほど有利になる。FITを契機に10MW以上の大型プラントが続々と計画されているのはそのためだ。大規模を優遇する政策意図が初めからあったとは思えないが、結果的にはそのようになってしまった。日独を比較して明らかなのは、報償の仕組みをどのようにデザインするかで、結果に大差が生じるということだ。肝に銘じておきたい。
 それはともかく、筆者の知る限り、出力規模による発電コストの落差を無視して、燃料の種類だけで報償額を決めている例は非常に珍しいと思う。いま問われているのは、燃料の種類だけで本当に木質バイオマス発電の買取価格が決められるのか、そして発電プラントの出力規模を無視してよいのか、の2点である。

(脚注)ドイツのFITにおける固形バイオマスの報償額は2000年の発足以来何回か改定されているが、表にあるのは2012年の法律改正で定められたものだ。実のところ表の「燃料割増」も14年の改正でなくなっているし、さらに言えば、現時点ではごく小規模な発電施設を除いて、本来の「固定価格買取」は適用されていない。大部分の発電者はつくった電気を直接市場に販売して「プレミアム」を受け取る仕組みになっている。これも17年からは一般競争入札に移行するらしい。

燃料の種類が重視された背景

 FITの導入が検討されていた2010年代初頭の状況が背景にある。公的助成のもとで人工林の間伐が大々的に進められていたのだが、肝心の間伐材がなかなか山から出てこない。伐り捨てられたまま山に放置されているというのである。一説によると、毎年伐り捨てられる木材の量は2,000万立方メートルに達していたらしい。これは市場に出てくる国産丸太の総量にも匹敵する。
 木質バイオマスの買取価格はこの「未利用木材」の活用を主眼にして決められることになり、燃料の種類が前面に出てきたのである。それにしても、未利用木材、一般木材、建設廃材等の三者のあいだで、32円から13円という大きな落差は何を基準にして決められたのか。
 未利用木材を活用するという強い政策意図があったのは否定できないが、表向きには「燃料の調達コストの差」とされている。しかし現実の調達コストには大きなバラツキがある。同じ未利用木材のチップでも形質や燃焼特性がさまざまで、価格的にも生トン当たり5,000円から15,000円くらいの幅があると思う。またすべての種類の木質燃料のあいだでは、市場での取引を通して相互の価格調整が絶えず行われている。買取価格の基準にするには、あまりにもバラツキが大きく、あまりにも不安定ではないか、そのような疑問が脳裏を掠めるのである。

発電の出力規模と燃料の選択

 わが国では木質燃料の価格データが十分に集積されておらず、断定的なことは何も言えないが、15年にわたって固形バイオマスFITを運用してきたドイツには興味深い調査データがいくつかある。ドイツバイオマス研究センター(BDFZ)は定期的にFIT認定の発電者に質問表を送り、投入した燃料の種類や調達価格を調べているが、まず、直接燃焼タイプの大型の発電プラントと小型のガス化プラントがそれぞれどのような木質燃料を使っているか見てみよう(図1)。直接燃焼プラントでは古材(Altholz、日本の建設廃材等)のウェートが高い。AⅢ、AⅣクラスの古材はハロゲン化合物や防腐剤を含んでいて、除塵装置のあるボイラでないと燃やせない。
 逆に小型のガス化発電のほうは良質の木質燃料を要求する。したがって古材や樹皮の利用は見られない。森林残材(Waldrestholz)のチップが62%にも達しているのは、8.3円もの燃料割増が効いているのかもしれない。こうした違いはあるものの、直接燃焼プラントと共通する燃料もかなり使われている。それがどのように使い分けられているかは、次項で触れることにする。

種類別木質燃料価格の中位値とバラツキ

 FIT認定のバイオマス発電所が木質燃料にどれくらい支払って入手しているかを見たのが表2である。前出図1の燃料構成比は絶乾重によるものだが、表2のほうは数量の重みなしで1件ごとの調査値を並べ、その中位値を取ったものである。中位値や、数量を勘案した算術平均で見れば、ご覧の通り燃料の種類によってかなり明確な差異が確認できる。しかしこれは見せかけのものだ。
 図2を見ていただきたい。バイオマス発電所に入荷した燃料の生トン当たりの単価が落とされている。横軸は燃料の水分率だ。一般に他の条件が同じなら水分が少なくなるほど価値が高くなるから、傾向線は右下がりになるのが普通である。ただ比較的乾いた古材が含まれるためにそうはなっていない。この表で注目してほしいのは、発電用の生チップとしてドイツで広く使われている森林残材チップと修景残材チップの価格帯がほぼ完全に重なっていることである(日本のFITでは前者が未利用木材、後者が一般木材に分類され買取価格に32円と24円の差がつけられている)。この両者は前出の表2の中位値で見ると、2015年の調査でそれぞれ絶乾トン当たり91ユーロと70ユーロで確かに差は出ているのだが、図2になるとそれが表に出てこない。森林残材、修景残材ともに文字通りの玉石混交なのだ。小径丸太を切削した良質チップあれば、枝葉を多く含んだ低質チップもある。
 前述のように、ドイツのFITでは出力規模で報償額に強い傾斜がつけられていて、5MW以上の発電は8.5円/kWhでしか買ってもらえない。そのために図2の下に沈んでいる安い燃料しか使えないのだ。森林残材のうちの低質チップがこちらに回されている。その一方で、小規模発電は技術的に質の高い燃料でないと使えないが、幸いなことにこのクラスでは基本レートが高く、割増もつくから、比較的高価な良質の燃料を使うこともできる。

見えてきた木質バイオマスFITの制度的欠陥

 日本でも発電プラントに入荷した燃料について図2と同様のグラフをつくることができるだろう。未利用木材(小径丸太、末木枝条、端材など)と一般木材(さまざまな工場残材、修景残材など)については、重なり合うケースがたくさん出てくるに違いない。例えば、間伐材の小丸太でつくったチップと製材の背板からつくったチップがともにトン8,000円で並んでいたとしよう。両者は形状や燃焼特性においてまったく差がないから並ぶのは当然である。
 ところが、現行の制度に従うなら、間伐材チップは未利用木材に入れられているためその電気は32円で売れるが、背板チップは一般木材とされているから24円でしか売れない。発電者からすれば、燃料の調達コストが同じなのに、なぜこれほどの差がつけられるのか不審に思うだろう。現行制度の最大の難点は、この問いにきちんと答えられないことだ。
 さらに悪いことに未利用木材と一般木材の見分けがつきにくい。一般木材で発電したのに、未利用木材だと主張して32円を請求しようとする誘引が常に付きまとう。そうした不正が起こらないようにするには誰かが絶えず監視していなければならぬ。こんな馬鹿なことをしている国はどこにもない。未利用木材と一般木材の区分は監視に値するほど重要なことなのか。
 この問題については引き続き次回で論議を深めることにしよう。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~