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木質バイオマスと地域振興 エネルギー転換に必要な視点

地域の自立はエネルギーの自立から

農林業の卓越した中山間地は自然エネルギーの宝庫である。古代から20世紀の初頭に至るまで、人びとは自ら近くの野山に出向いて、枯木を集めたり、灌木を伐り出したりして調理用、暖房用の燃料を調達していた。その後、都市化がすすんで木質燃料が市場で取引されるようになると、市場向けの薪炭生産が中山間地の重要な生業(なりわい)となった。

この状況を一変させたのが1960年代に始まる「燃料革命」である。大量に輸入される安価な石油に押されて、薪や炭はあっという間に市場から消えていった。前にも述べたように、1立方メートルの木材は発熱量において1バレル(159リットル)の原油とほぼ等価である。70年代の初頭、日本に入ってくる原油の価格はバレル10ドルにも満たなかった。当時の薪ストーブやかまどはエネルギーの変換効率が低かったから、原油1バレル分の熱を得るのに2~3立方メートルの木材を要したと思われるが、これだけの薪をつくるには当時でも30ドルや40ドルはかかったであろう。エネルギー市場から木材が駆逐されるのは当然である。

80年代の欧州では、原油がバレル35~50ドルまで上昇しないと木質エネルギーの復活は難しいと言われていた。この要件が満たされるように.なるのは、今世紀に入ってからである。近年ではバレル100ドルの大台を超えることも珍しくない。石油と並んで石炭や天然ガスの価格も相当に引き上げられている。

こうした状況を背景にして世界の至るところで木質燃料復活の兆しが見られるようになった。それはまた、燃料革命のあと経済のグローバル化で地場産業の不振にあえいでいた中山間地からすれば、久方ぶりの朗報でもある。木質エネルギーを地域起こしに繋げようとする動きは欧州でも見られるようになった。

中部ヨーロッパの小国、オーストリアは木質バイオマスのエネルギー利用で世界の先頭を走る国の一つだが、この国が目指す「エネルギー転換(Energiewende)」には「燃料革命」で失われた木質燃料を復活させようという意欲が感じられる。政府の指図というより、地元の人たちが自発的に立ちあがって、さまざまな木質エネルギービジネスに取り組んでいる。外国や都市部から高価な化石エネルギーを買い続けていたのでは自分たちの経済が持たないという思いもあるだろう。「地域の自立はエネルギーの自立から」が一つの合言葉になりつつある。

何のためのエネルギー転換か

ドイツ語圏でよく聞かれる「エネルギー転換」というのは、在来の化石燃料に代えて再生可能なエネルギーを増やそうということで、別に目新しい主張ではないが、その理由づけにはいくつかのバラエティがあるように思う。最も一般的な大義名分は、地球温暖化防止のためのCO2削減であろう。また、国の安全保障の観点から外国産の化石燃料に頼るのは危ないという論議がある。さらに、地域振興を重要視する人たちは、再生可能なエネルギーによる雇用増加とエネルギー自給に期待をかけている。このいずれの立場をとるかで木質エネルギーの推進戦略も当然変わってくるだろう。

欧州連合(EU)などのエネルギー政策で真っ先にくるのが温暖化防止である。加盟国の発電事業者は、EU指令により発電量の一定割合を再生可能なエネルギー源で賄うことになっている。この義務を果たすために、オランダやベルギー、イギリスなどの国々では、大量の木質ペレットを外国から輸入して石炭火力発電所での混焼を進めてきた。こうしたタイプのバイオマス混焼は、最もコストのかからないCO2削減策の一つとされている。

しかし、大量のバイオマスを海外から輸入することには、供給の不安定性に加えて持続可能性の問題もあり、異を唱える向きが少なくない。次善の策として国産のバイオマスによる石炭混焼や、比較的規模の大きい発電専用プラントの設置がある。わが国でも、再生可能電力の固定価格買取(FIT)が制度化されたため、バイオマス発電への関心が高まり、電気出力で5MW、10MWないしはそれ以上のクラスのプラントが各地に建設されようとしている。

ところが、オーストリアやドイツのFITではエネルギーへの変換効率が60%以上でないと買取の対象にならない。というのも、通常のバイオマス発電では木材の持っているエネルギーの25%くらいしか電気に変えられないからである。こんな効率の悪い発電に貴重な木材を使うのは勿体ない。発電するなら、せめて発電の廃熱も利用する熱電併給(コージェネレーション、CHP)にしなさいということだ。

地域振興を重視するオーストリアでは、木質エネルギーの本命は発電ではなく熱供給と見られている。この分野であれば、小型のストーブやボイラでも木材の有するエネルギーの85~90%が有効な熱に変換でき、化石燃料価格が上昇した昨今では、石油や天然ガスとコスト面でもある程度対抗できるだろう。地域の資源を有効に使って地域の熱需要を満たすことがまず優先され、発電はいわば付け足しになっている。

熱電併給というのは確かに望ましいことだが、実際にやるとなると容易なことではない。熱の需要は、概して小口であちこちに分散している上に、温水や蒸気にしてパイプで輸送するにしても遠くまでは運べない。熱電併給のCHPプラントは、それぞれの地域の熱需要に合わせて設計するしかないのである。プラントの規模はその地域で集められるバイオマスの量とも絡んでくる。遠方から運ぶとなると輸送費がかさむ。何よりも優先されるのは、地元でなければ使えないような低質バイオマスの活用であろう。いずれにしても、比較的小規模な分散型のCHPプラントにならざるを得ない。

オーストリア:全世帯の45%が木質燃料による暖房

前置きはこれくらいにして、地域振興重視のオーストリアで木質バイオマスを軸にした「エネルギー転換」がどのように進んでいるか見ていくことにしよう。この国では、2011年の時点で総一次エネルギー供給の14.7%が木質の燃料で賄われていたが、その最大の仕向け先は世帯用の暖房と給湯である。

表1は、世帯におけるエネルギー消費の実状をまとめたものだ。世帯で費やされるすべてのエネルギーを9つのカテゴリーに分け、それらが2003/04年から2011/12年にかけてどのように変化したかが示されている。まず注目されるのは、総エネルギー消費が4.6%ほど減少するなかで、バイオマスと太陽熱・ヒートポンプの再生可能なエネルギーが増加し、暖房油・液化天然ガスと石炭が大きく減少していることだ。

この「エネルギー転換」でバイオマスが果たした役割は圧倒的である。総消費に占めるシェアで見ると、この7,8年のあいだに26.4%から35.6%へと10ポイント近く高まった。バイオマスは個別熱供給と地域熱供給に大別されている。前者は世帯ごとにストーブやボイラを設置して熱を得るタイプのもで、薪、木質ペレット・ブリケット、木質チップがその燃料である。昔から使われてきた薪が、今なお大きなウェートを持っていることに注意されたい。近くに樹林地があれば薪は最も安価に入手できる燃料なのである。さらに薪ストーブの性能が改善され、新しいタイプの薪ボイラが開発されたことも見逃せない。

木質ペレットとブリケットは、薪に比べるとずっと均一で取扱いやすい燃料になっている。都市部でもストーブや小型ボイラで使われることが多く、近年急速に消費量を伸ばしているが、絶対量ではまだ薪に遠く及ばない。木質チップは中型・大型のボイラ用の燃料であるため、世帯で使われるのはまれなケースである。

もう一つの地域熱供給(DH)というのは、人家がある程度集まっている地域に、熱出力で100kWから3,000kW程度のボイラを設置し、近隣の住宅や事業所に暖房・給湯用の温水をパイプで送るシステムである。地域の森林所有者が何人かで有限会社や組合をつくって施設の運営にあたっているケースが多い。必要な燃料チップのかなりの部分はメンバーによる自家生産で賄われている。バイオマスでつくられた電気が固定価格で買取られるようになって、発電もおこなう比較的大型のDHも見られるようになった。

図1はそうした施設の分布図だが、国内に満遍なく散らばっている様子がよくわかる。木質バイオマスを使うDH施設を全部数え上げると1,200を超えるらしい。表1によるとDHからの熱供給も伸び率が高く、60%の増加を記録している。

図2は各世帯の暖房方式に着目して普及の状況を見たものだが、2011/12年の時点で木質燃料で個別的に暖房している世帯は全体の20%、バイオマスDHから熱を得ている世帯は25%あり、両方合わせると45%に達する。2003/04に比べると8ポイントほど高まっている。逆に、天然ガス以下の化石燃料に頼る世帯の割合は10ポイント低下した。

中山間地におけるエネルギー自立の構図

都市部と農村部とを区別した統計はないが、木質バイオマスのエネルギー利用が盛んなのは、やはり農村部ないしは中山間地である。それはおおむね天然ガスの配管が及んでいない地域とも重なるだろう。特に、人口密度の低い山間部では、樹林地がすぐ近くにあるため、自分で薪をつくって燃料にしている世帯が多い。非農家のサラリーマン世帯などでは、取扱いの便利な木質ペレットを使うケースが増えてくる。

中山間地では、世帯以外の事業所や官公庁、学校、病院などにも暖房給湯用の中型のボイラが入っていて、相当な量のペレットやチップが燃やされている。これらの事業所は、下記の地域熱供給施設の顧客になっているケースも少なくない。さらに製材工場や集成材工場、ペレット工場などには木材乾燥用のボイラが入っていて、工場から出てくる残廃材を燃料としている。

住宅のほか、事業所や公的建造物などが比較的固まって所在すれば、小規模な地域熱供給施設が入れられる。EUのバイオエネルギー政策では、個別熱供給から地域熱供給への移行が推奨されているが、バイオマスのDHには次のような利点があるからである。

○顧客にとってのメリット

  • 暖(冷)房・給湯用の熱をいつでも必要なだけ使うことができる
  • 長期間(通常は15年程度)熱の供給が保証される
  • 熱生産のための機器を各自で持つ必要がなく、燃料の調達や機器の維持管理も不要になる
  • 化石燃料ベースの熱供給よりも安上がりである

○地域としてもメリット

  • 地域の森林資源を活用することができ、雇用が増える
  • 個別暖房に比べて、全体としてのエネルギー変換効率が高まる
  • 比較的規模の大きいボイラが導入された場合は、ごく質の低いバイオマスを燃やすことができる上、発電も可能になる

個別熱供給の場合は、ストーブにしてもボイラにしても比較的小型で、燃焼効率を上げたり、有害物質の排出を抑えるための複雑な装置がつけられない。そのために、汚染物質を含まないよく乾いた木質燃料を使うことになる。乾燥薪、ペレットがそうだし、チップであれば高品質のものが要求される。近隣にある雑多な低質バイオマスを使い切るには、やはり大型のボイラが有効である。これにオーガニック・ランキンサイクルの発電ユニットを入れ込めば、数100kWから2,000kW程度の発電もできるだろう。中山間地のエネルギー自立にDHは欠かせない。

中山間地の深刻な現状と木質エネルギーへの期待

オーストリアの経験を日本にそのまま持ち込むわけにはいかないが、参考になることが多いように思う。わが国の場合、「燃料革命」で薪炭の需要が激減すると、広葉樹の薪炭林は構造用木材の生産を狙ったスギやヒノキの人工林に大々的に切り替えられた。ところが、肝心の木材生産のほうは外国産の木材に押されて、今なお低いレベルに喘いでいる。20年、30年にわたる国内林業の沈滞で林道網の整備がおざなりにされ、森林の管理放棄ともいうべき現象が広がってきた。国内の森林には、60億m3もの林木が貯め込まれているが、手入れ不足で森林は過密になり、間伐しようにも道がないから運び出せない。

国連の食糧農業機関(FAO)のデータベースで、森林面積1ha当りの木材生産量(2006~10年の平均)を計算すると、ドイツの5.36m3、オーストリアの4.98m3に対して、日本はたったの0.69m3で、独・墺の1/7でしかない。わが国の森林は、高温多雨の温帯域にあるから潜在的な生産力は独・墺よりも高いはずだ。その森林が十分に活用されていない。工業製品を輸出して原材料は輸入する「貿易立国」の見地からすれば、当然のことかもしれないが、これでは中山間地は救われない。

農林業の衰退に直面した中山間地の自治体は、外部からの工場誘致に試みたものの雇用の増加にはなかなか繋がらなかった。その一方で電気や石油製品、天然ガスなどへの支出が年々膨らみ、大変な額のお金が都市域や海外に流れている。地域の資源を使ってエネルギーが自給できるようになれば、地元でエネルギー関連の雇用が増え、その分外部への支払いを減らすことができるであろう。

オーストリアの森林面積は約400万haで日本の1/6だが、人口1人当たりにすると0.47haで、日本の0.20haの2.4倍である。東京や大阪のような巨大都市を抱えた日本で、一次エネルギー総供給の15%近くを木質バイオマスで稼ぎだすのは非常に難しい。しかし、中山間地に限って見れば、彼我の差は大幅に縮まってくる。

国内の人工林は、比較的若い齢級のものが多く、間伐しても低質材の比率が高かった。間伐が進まなかった一因は、その低質材の販売不振にある。木質燃料の価格が上昇すれば、この状況が変わり、構造用木材の生産も増えるかもしれない。前回お話ししたドイツの経験はその好例である。

次回は、オーストリアで普及した小規模な地域熱供給のシステムの実例を紹介しながら、日本での可能性について考えることにしたい。

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動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~