利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

小規模発電別区分化の狙いを改めて問う

 本年の4月1日から、木質バイオマス発電に対するFITの買取価格が2MW以下の小規模発電に限り40円/kWhに引き上げられた。蒸気タービンによる通常のバイオマス発電で採算を取ろうとすると、最低限5MW前後の出力規模を確保しなければならず、同時に毎年6万トンほどの燃料用チップを集めなければならない。わが国の現状ではこれだけの木質チップを安定確保できる地域は限られており、小規模発電の別区分化には大きな期待が寄せられている。ところが別区分化の対象が「未利用木材」に限定されているために、小規模発電も、熱電併給(コージェネレーション、CHP)の導入も、ともに難しくするという皮肉な結果を招いている。なぜそうなるのか。今回は日本木質バイオマスエネルギー協会が最近開いた勉強会での論議を参考にしながらこの点を検証してみたい。

発電専用の2MWプラント

 別区分化の問題点については本シリーズでも4か月前に一度取り上げた(2015年6月1日号掲載)。その要点は、kWh当たりの買取価格が32円から40円に引き上げられても、蒸気サイクルによるバイオマス発電の下限が5MWから2MWに下がったわけではない、ということである。32円の買取価格は5MWのモデルプラントで試算されたものだが、電力中央研究所の多喜真之氏らは、この試算とまったく同じ条件で出力規模を2MWにして発電コストを求めたところ、61.8円になった。40円の買取価格では全然間に合わない。
 発電コストがこれほど高くなった一因は、プラントの発電効率が低いからである。5MWの20.7%に対して2MWは12%でしかない。早い話、1kWhの電気をつくるのに、約1.7倍の燃料が要る。トン3,000円くらいの廃棄物系燃料ならこの影響は比較的小さいが、トン12,000円もの未利用木材を使うとなると、発電効率の低さは致命的である。
 ただここで注意しておきたいのは、多喜氏らの規模別発電コストの試算で、プラントの建設費と発電効率は、2013年までに国内でつくられた施設の実績値をベースにしていることである。最新の施設の発電効率はもう少し高いように思う。とくに2MWないしそれ以下の既設プラントは木材乾燥に熱を振り向ける製材工場や合板工場などに設置されたものが多い。発電効率が低くなるのは当然である。発電だけを考えて、2MWのバイオマスプラントを設計したら、どうなるか。それを本格的に検討しているのが株式会社タクマである。去る8月18日に開催されたわれわれの勉強会に同社の宮島欣幸氏を招いてお話を聞いた。

小規模発電成立の条件

 タクマが設計しているプラントは、発電端出力2MW(送電端1.7MW)でトラベリングストーカーが使われている。発電効率は約20%とかなり高い。固定床タイプの小規模プラントで発電効率が低くなるのは、ボイラの容量が小さくなればなるほどボイラの周壁から放射、伝導、対流によって外部に放散される熱の割合が高くなるからだが、この場合も一定の範囲内で蒸気の圧力と温度を高めることができ、発電効率を数%引き上げることは可能である。むろんそれには何がしかの追加投資が求められる。電気が40円で売れることで、やりやすくなったのかもしれない。その一方で、必要な運転員として10~12名が見込まれており、小規模の不利は歴然としている。
 問題はこのプラントの採算性だが、カギを握るのは燃料費だ。年間の稼働日数を330日(7,920時間)とすると、燃料用チップの必要量は約3万トンになる。ここで仮に工場着8,000円/生トンの未利用木材チップが確保できれば、収支は何とかトントンになるという。なお、内部収益率(IRR)は所定の8%には至らないものの、7%台となるだろうとのことであった。
 以上のようなわけで、2MWの蒸気タービン発電でも20%の発電効率が実現でき、比較的安価な未利用材チップが確保されれば、熱利用を伴わなくとも、収支が相償う可能性がある。前回の記事ではこうした可能性に一切言及していなかった。これは明らかに片手落ちであり、2MWの発電専用プラントの計画例を大急ぎで紹介させてもらった次第である。

発電と熱利用のトレードオフ

 これまで一般的には、2MWのバイオマスプラントでも熱も利用するCHPであれば採算が取れると言われてきた。どうすれば採算が取れるのか。宮島氏は発電効率と蒸気利用の関係を図1のようにまとめている。2MWプラントのボイラがつくり出す主蒸気は11t/hで、図の横軸に蒸気利用量が取られている。蒸気の全量を発電に回せば発電効率は最大値の20%となる。タービンから高温高圧の蒸気を取り出すことを「抽気」と言うが、抽気する蒸気量が多くなれば、発電効率は低下し、熱効率が上昇していく。両者は完全なトレードオフの関係にあるのだ。二つの効率の合計値である「総合効率は」は熱利用が多くなるにつれて着実に上昇する。
 ドイツ、オーストリア、スイスのFITでは、総合効率60%以上のバイオマスプラントからの電気でないと固定価格買取の対象にならない。図1でこの要件を満たす蒸気利用量を求めると、8t/hにもなる。これほどの熱を有効に使い切るのは大変なことだ。熱の仕向け先の実例としては比較的規模の大きい木材乾燥施設や食品工場などがある。欧州でよくみられるのは地域熱供給との接合だが、それでも小規模な施設では使いきれないだろう。

 蒸気利用量が増えれば発電量は減少する。発電効率で見ると、8t/hの蒸気を抜くことで20%から10%程度に引下げられている。早く言えば、電気の販売収入が半減する。図2にあるように、全部の蒸気を発電に振り向けた場合の売電収入は5.38億円(7920時間×1,7MW×40円)だが、熱電併給においてもこのレベルを維持するには、売電収入の減少分が抽気した蒸気の利用収入で補てんされなければならない。図の←→の部分である。熱電併給の最低限の条件はこの補てんができるか否かであり、それは熱の利用可能性と熱の販売価格に依存する。
 ここで注意してほしいのは、発電の場合は未利用木材を使うことで売電価格が40円になって得をするが、熱利用にはそうしたメリットがまったくない。蒸気利用量が増えれば増えるほど、未利用木材を使うメリットが急速に薄れていく。

ORC発電での試算

 われわれの8月の勉強会では、蒸気タービン発電に関する宮島氏の報告のほかに、久木裕氏と竹林正雄氏からそれぞれORCタービン発電と木材ガス化発電についての報告をいただいた。
 小規模発電でORCが重視されるのは、電気出力数百kWから2MWのレンジをカバーする有力な発電方式が他にないからである。通常の蒸気サイクルと違うのは、バイオマス燃焼で加熱したサーマルオイル(310℃)を沸点の低い有機媒体(シリコンオイル)と熱交換して発電することだ。サーマルオイルを介して投入された熱の約20%が電気に変換され、残りの78%は80~90℃の温水に変えることができる。小規模でもエネルギー効率はかなり高い。
 熱媒体の使用圧力と温度が低いから安全性に優れ、メインテナンスが容易である。欧州ではオペレーターによる常時監視が不要で、無人運転になっているケースが多い。
 久木氏は1MWのORCで収支を試算している。主要な前提条件は、送電端出力742 kW、年間稼働時間8,424、管理者1名、運転員3名、燃料消費量24,500t/年(水分率50%、単価9,500円/t)、売電単価40円/kWh、熱利用率65%、売熱単価10円/
kWh。こうした条件で熱を含む発電コストを計算すると62.2円/kWhになるが、熱収入を勘案すると26.5円にまで下がってくる。ただし後者の発電コストは熱の利用率と熱の販売価格いかんで大きく揺れ動く。
 久木氏の報告で面白かったのは、トン1万円の未利用木材で発電して電気を40円/
kWhで売るよりも、たとえ電気が24円でしか売れなくともトン5千円の一般材で発電したほうが有利なことを、具体的な数字で示したことだ。図3にあるように、営業利益は7,200万円から9,500万円に増え、内部収益率は7.1%から8.6%に高まる。熱のウェートの大きいCHPなら、どのような発電方式でも起こり得ることだ。

むすび

 小規模なバイオマス発電が成立するための重要な条件は、第一に安価なバイオマスを確保することであり、第二に熱が有利に売れる出口を確保することである。この二つの条件を満たしてくれる身近な例は、やはり製材や合板などの木材加工工場だ。工場残材をボイラで燃やして発電し、同時に発生する熱を木材製品の乾燥に振り向けることができるからだ。燃料と熱の輸送距離は限りなくゼロに近く、最も合理的なやり方と言える。
 ところが工場残材は一般木材だからその電気は24円でしか売れない。製材加工や合板加工などのマテリアル利用をスキップして、A材やB、C材を含む「未利用木材」を丸ごと発電に向け、その電気を40円で売ったほうが有利になるケースが当然出てくるだろう。小規模発電の別区分化で、未利用木材の使用を条件としたために、小規模発電とCHP化を却って難しくするような事態を生み出している。当面の対応としては、「未利用木材に限る」という条項を削除すべきだと思う。
 このシリーズで以前に指摘したように、FITでいう「未利用木材」にはきちんとした定義が与えられていない。「伐採されながら利用されずに林地に放置されている未利用間伐材や主伐材」(林野庁『ガイドラインQ&A』)という意味での未利用木材が、毎年2,000万立方メートルも発生していると言われてきたが、それは相当以前の話しであって、現在ではほとんど見られなくなっている。
 ドイツのバイオマスFITでは、マテリアル利用と競合しない樹皮や林地残材、修景残材などを使用した場合には、2013年まで「原料割増し」として基本レートに上乗せしていた。その上乗せ額は、0.5MW以下の発電でkWh当たり6セント、0.5~5MWで2.5セント。日本円にするとそれぞれ8円と3円強くらいになる。5MW以上の発電についてはこの種のボーナスは支払われない。日本においても、一般木材を基本ベースにして、未利用木材をドイツの原料割増しと同様の扱いにすることも十分に考えられるであろう。
 ついでに修正すべき点をもう一つだけ付け加えておきたい。当初木質バイオマス発電の買取価格は5MWの蒸気タービン発電をモデルにして決定され、出力規模による差別化がなされていなかった。今年から2MW以下の別区分化で小規模の買取価格は引き上げられたが、5MW以上はそのままになっている。周知のように、通常の発電方式では出力規模が大きくなるにつれて発電コストは目に見えて低下してゆく。買取価格が5MWのプラントと同じなら、それ以上の大型発電の内部収益率は相当に高くなるだろう。つまり将来木質燃料の奪い合いが激しくなったとき、より高い価格を提示して木質チップを独り占めできるということだ。その影響はマテリアル利用のみならず、発電以外のエネルギー利用全般に及ぶ。
 欧州ではFIT対象のプラントに出力の上限を設けたり、熱電併給を義務付けたりして、大型発電を抑制する方向に動いてきた。日本の場合はそうした制限は一切なく青天井だ。小規模発電の買取価格を引き上げたのなら、それとバランスさせる形で、大規模発電の買取価格を引き下げるのが次にとるべき当然の措置であろう。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~