利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(6・完)~これから日本はどうするか~

 木質ペレットは、ほんの数年前までローカルな単位で生産され消費される「ニッチ市場の産物」であった。それが今や「メジャーなエネルギー商品(commodity)」として国際的に流通し始めている。少なくとも、欧州を中心に20カ国のペレット協会を束ねる欧州ペレット協議会(EPC)は、そのような認識の下に、世界規格を取り込んだENplus規格を制定し、グローバルなスケールで良質ペレットの認証を進めている。
 日本はまだこの流れに乗っていない。ローカルで閉鎖的なニッチ市場を舞台に細々とした生産と消費が続いている。140を超えるペレット生産施設のうち年間の生産量が2,000トンにも満たない小規模工場が9割にも達する。当然のことながら、ペレットの生産コストは高くなり、品質のばらつきも大きい。
 ただ、ペレット購入者の多くが公的機関であるとか、あるいはペレット燃焼機器の設置に補助金が出ているといった事情が幸いして、比較的高い価格のペレットでも引き取ってもらえる。また品質について言えば、木質ペレットのかさ密度、機械的耐久性、微粉率、灰分などの項目で標準からの逸脱が多少あったにしても、すぐさま重大な事故につながるわけではない。不完全燃焼が起きて不愉快な思いをするとか、灰燼の除去に余計な手間がかかるといった程度のものである。これまでは、いわばそれを当然のこととして受け入れてきた。閉鎖的なニッチ市場であったからである。
 ところが最近、高品質のペレットを前提にして開発された小型ガス化発電装置がドイツから入ってきて地元産のペレットで運転したところ、思わぬトラブルが発生した。自動制御装置がうまく働かず、ガス化がスケジュール通りに進まないのである。品質規格の重要さを劇的に見せ付けた最初のケースと言ってよい。
 これからは、品質が安定していて価格の安い外国産のペレットがどんどん入ってくるようになるだろう。閉鎖的なニッチ市場はひとたまりもない。国内に豊かな森林資源を抱えながら外国産の木質ペレットに席巻されるという悪夢の到来である。よく知られているように、1970年代以降の外材の大量輸入で建築用材やパルプ材の国内生産はすっかり萎縮してしまった。これと同じことが起ころうとしている。

ペレット製造施設の3タイプ

 今日世界で稼動している木質ペレット施設をごく大雑把に区分すると次の三つのタイプに分けることができる。
 ① 木材加工業に併設された副業型
 典型的には集成材工場やプレカット工場などに見られるタイプで、工場から出てくる乾いたプレーナー屑を直接造粒機に投入してペレットをつくっている。ペレット生産はどちらかと言うと「片手間仕事」だが、生産にあまりコストがかからず、ごく小規模でも経済的に成り立つ。
 ② おが屑利用の独立型
 以前の欧州では製材工場に併設された副業型(①のケース)も散見されたが、規模を大きくして独立型で経営する例が増えてきた。その場合の規模としては、年産3~5万トンあたりが下限になるだろう。原則として24時間操業で、乾燥にはベルト・ドライヤが使われる。ただし相当に大きい製材工場でないと必要なおが屑を自社だけでは賄えない。いくつもの製材工場からおが屑を購入し、それでも不足すれば外部からチップや丸太を買い入れて補充する独立型が一般化している。
 ③ 早生樹利用の独立型
 アメリカ東南部で見られ始めた大型工場を想定しているが、今後各地でエネルギー植林が実施されるようになれば、このタイプのものが増えてくるだろう。
 日本の林業は構造材の生産が主軸になっているから、欧州と同様に今後とも木材加工業の副産物でペレットを製造することになると思う。問題は②の年産3~5万トンの工場がつくれるかどうかである。その投資額は破砕装置と乾燥施設を含めて10数億円程度で、驚くほどの額ではない。にもかかわらず日本の企業が出資を躊躇するのは、製品の安定した出口がないからである。まず出口をつくらないことには、何も始まらない。

有望な石炭火力での混焼用ペレット

 わが国の環境省はこれまで石炭火力発電所の新設に待ったをかけてきたが、条件付きで容認することになったらしい。その場合に厳しく求められるのはCO2排出量の削減だが、最も手っ取り早い手段は石炭とバイオマスを一緒に燃やすことである。バイオマス混焼を前面に出して発電所の建設に着手した事例がすでにいくつか報告されている。
 財務省の貿易統計によると、混焼用ペレットの輸入量は20万トン/年までに増えてきた。カナダ、中国、東南アジアなどから20~25円/kgで国内の港に入っているようだ。今後これが急速に増えていくことは間違いない。国産のペレットもこの巨大な市場への食い込みを図るべきである。もちろん現在のままの生産体制ではどうにもならないが、年産3~5万トンの工場で出荷価格25~30円/kgのペレットがつくれれば、何とかなると思う。
 それには何をすればよいのか。まず留意すべきは、火力発電所の巨大なボイラであれば、質の低いペレットでも十分に使えるということだ。そのお陰で、ペレット製造に使える木質原料の幅が広がってくる。国内でつくられている暖房用ペレットのほとんどは、スギ、ヒノキ、カラマツなどの針葉樹に限られていて、とくに樹皮の入らない「ホワイトペレット」が好まれているが、発電用となると広葉樹でも構わないし、樹皮が多くてもOKだ。要するに安い原料が使えるというメリットがある。

ISOの「工業用」ペレット規格

 国際規格といわれるISO17225-2では、「商用・家庭用」とは別立てで、発電を意識した「工業用」ペレットの品質基準を制定している。表1は、両者で基準値の違う項目だけを抜き出して比較したものだ。工業用の場合も1~3の三つのクラスに分かれていて、数字が大きくなるほど、基準が緩くなる。1で想定されているのは比較的小型のボイラであり、3は石炭混焼のような大型のケースである。
 一見して明らかなように、とくに大きく変わっているのは粉化率だ。工業用であれば、微粉の量が多少増えても問題はないということだろう。また石炭混焼では直径が10mm、12mmの太いペレットでも受け入れられる。この二つの基準値が緩められると、製造コストの引き下げにつながってくる。
 また工業用では灰分の上限値が引き上げられていて、樹皮の多い原料も使えるようになった。さらに重金属を含む微量成分の下限値が商用・家庭用の2倍になっていることに注意したい。大型のボイラでは高性能のサイクロンやバグフィルターのような除塵装置がついているため、廃材ペレットのようなものでもある程度まで受け入れられるということだ。

両方を生産することのメリット

 国内のペレット工場で年産量がとくに低くなるのは、装置の製造能力が小さいうえに年間の稼働日数が少ないからである。ペレットの需要が集中する冬場だけ機械を動かし、夏場は休ませているケースが結構多い。しかるに発電用のペレット場合は、需要にこうした季節性がない。夏場などに遊んでいる機械をフルに稼動させて発電用のペレットをどんどん生産すればよい。国内で生産できるペレットの量など、火力発電所での莫大な需要量に比べれば、知れたものだから、条件が合えばいくらでも引き取ってもらえるだろう。製造施設の稼働率が上がれば、ペレットの生産コストは確実に低下する。
 家庭用と工業用のペレットはおおむね同一の施設で生産できる。ペレットの直径が違ってくれば、ダイだけを取替えればよく、別々の生産ラインをつくる必要はない。この2種類のペレットを生産することで、使える木質原料の幅が一段と広がってくる。
 これまで木質バイオマスのエネルギー利用と言えば、熱供給でも発電でも人工林の間伐材ばかりに焦点が当てられてきたように思う。これではマテリアル利用との競合が激しくなるのは当然のことだ。残された大きなポテンシャルは天然性の広葉樹林だが、発電用のペレット製造でこれが使えるとすれば、またとない朗報である。

原料確保の難題

 実のところわが国の場合は、木質ペレットの需要開拓と並んで、ペレット原料の確保も大問題である。1トンのペレットつくるには、おが屑で約7.5(丸太なら2.2)立方メートルの木材が必要とされている。年産3万トンの工場でも、おが屑なら約23万立方、丸太なら6.6万立方集めなければならない。欧州でごく普通に見られる中堅のペレット工場が日本に一つもないのは、これだけの原料を集めるのが、難しいからでもある。
 前にも触れたように、木質ペレット生産の世界的な拡大は製材工場の近代化・大規模化に支えられていた。というのも原料のおが屑が大量に得られ、かつ木材乾燥用の木屑ボイラも備えられているからである。ところがわが国の製材工場はつい最近に至るまで押しなべて規模が小さく、おが屑でペレットをつくり、端材や樹皮などで必要な熱を生産するという体制が取れなかった。おが屑の多くは今でも畜舎の敷き料やきのこ栽培の菌床として使われている。
 早く言えば、製材工場における木質原料のカスケード利用のなかにエネルギー生産が組み込まれていないのだ。その分、製材工場の経営基盤が不安定になっている。またペレット製造の側からすると、木材加工業から切り離されたことで大変なコスト高を招いてしまった。同じことが、熱供給事業や熱電併給事業にも当てはまると思う。ようやく最近になって製材工場の大型化が進み始めた。この機会を逃さずに、マテリアル利用との確かな連携関係を構築していきたいものである。
 もう一つの課題はこれまで放置されてきた旧薪炭林などの有効活用だ。熱供給や発電などのエネルギー生産に振り向けるのであれば、樹種や樹木の部位・形質のいかんを問わず、どんな木質原料でも使える。ペレット原料としてとくに期待されるのは広葉樹の天然生林だが、長いあいだ木材生産の対象外とされてきたために、木材を運び出す道がほとんどついていない。路網整備が大きな課題として残っている。これまた一朝一夕でやり遂げられる仕事ではないが、長い先を見据えて辛抱強くやっていくしかあるまい。ひとたび管理放棄された森林を木材生産の戦列に連れ戻すのは、どのみち容易なことではないのである。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~