利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(5)~日本の現状と課題~

 木質ペレット市場の国際化が進展する中で、ペレット製造プラントの大型化が進み、廉価で品質の安定したペレットの大量生産が始まっている。前々回に述べたように、年産能力1万トン以上の工場は世界全体で800を超えているが、日本の工場でこのリストに載っているのは6カ所だけである。そのいずれの工場も年産能力は3万トンに満たない。海外では年産能力10万トン以上の工場が150も稼働しているというのに、何とも情けない話である。
 わが国の場合は、一昔前の家内工業的な体質が色濃く残っていて、本格的な工場生産体制への移行がうまくいっていない。その結果、木質ペレットの生産コストが割高になり、原油価格が低落した昨今ではすっかり市場競争力を失っている。さらに操業率が低く間断的な小規模生産では、どうしても製品の品質に大きなばらつきが出てしまう。今日の先端的な燃焼機器は高品質ペレットの安定した補給を絶対の条件としており、国産ペレットではこの要件を満たせないケースが少なくない。
 おそらく北米やロシア、さらには東南アジアなどでのペレット生産能力の拡大は今後とも続くであろう。その製品の有力な捌け口として虎視眈々と狙われているのが日本である。何の備えもないまま、海外からのペレット輸入が本格化するようなことがあれば、国内のペレット産業は間違いなく壊滅的な打撃を受けると思う。

あまりにも零細な日本のペレット工場

 北米で開発された木質ペレットの製造技術を日本に導入して生産が始まったのは1982年のことだが、当時の石油価格の上昇にも支えられて、わずか数年の間に小規模なペレット工場が26もつくられて、年に3万トン近くのペレットを生産していた。しかしその後の石油価格の下落で工場数が激減、90年代に動いていたのはわずか3工場であったと言われる。
 状況が大きく変化したのは今世紀に入ってからである。02年にはバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定され、翌03年からは林野庁の助成事業も始まった。さらに石油価格が上昇基調に転じたことも見逃せない。03年以降は図1にあるように、工場数も生産量も順調に伸びている。しかし生産規模の拡大は見られない。
 2014年で見ると、工場数は142もあるのに、生産量の合計は12.6万トンにとどまっている。1工場あたりにすると、887トンに過ぎず、10年前とあまり変わっていない。ちなみに14年のオーストリアでは、大小27の工場が94.5万トンのペレットを生産していた。1工場あたりにすると2.5万トンにもなるが、この平均値は年々大きくなってきており、日本との落差がますます目立つようになった。

 次の表1は日本木質ペレット協会が83の施設について2013年の生産実績を調べ、その結果をまとめたものだが、驚くべきことに全施設の93%は年間の生産量が2,000トンに満たず、しかも100トン以下の施設が30%もあることだ。工場の大型化が進む世界の常識からすれば、これほど零細な生産規模でどうやって収支を合わせているのか不審に思えるであろう。日本の木質ペレット生産は、本格的なビジネスというより、未だ「お飾り」的な要素を多分に残しているのではあるまいか。
 お飾りとはどういうことか。例えば中央の省庁から新エネルギー関連・環境関連の重点市町村などに指定されたとしよう。そこで国の補助金を使って何をやるかということになるのだが、中山間地であれば木質バイオマスのエネルギー利用がしばしば候補に挙がってくる。庁舎や学校、病院などの冷暖房・給湯を重油からペレットに切替える話がそれだ。小型のペレットボイラが導入され、それと同時にペレットの製造施設もつくられる。
 たしかに木質バイオマスの「地産地消」には違いないのだが、こんなに小さな規模でペレットをつくっていたのでは、相当なコスト高を覚悟しなければならない。幸いなことに、ペレットボイラとペレットの製造施設の両方に補助金が入っているから、何とかやっていけるというわけだ。しかし一般の市民はこんな割高なペレットを敬遠するだろう。日本のペレット生産が補助金頼みの「お飾り」にとどまっている限り、木質ペレット市場の本格的な拡張は望めない。勝負を決めるのは化石燃料との競争力である。

低価格で需要を伸ばした欧州の木質ペレット

 今世紀に入ってオーストリアなどで木質ペレットの消費量と生産量が急速に伸びたのは、化石燃料、とくに石油価格が不安定な変動を繰り返しながら上昇していく中で、ペレットの価格は比較的低いレベルで安定的に推移したからである。この国で暖房用軽油の年平均価格がピークを記録するのは12年でkWh当たり10セント(約13円)であったが、ペレットはその半分の5セント(約6.5円)で購入できた。その後軽油価格は急落し、15年12月時点で8.2円にまで落ちているが、ペレットのほうは6.1円だからその優位はまだ動いていない(図2)。液化天然ガスと都市ガスのコストは、ともに10円を超え、電気に至っては26円にもなる。
 ただし暖房機器の価格は熱出力が同じなら木質焚きのほうがかなり高い。したがって木質燃料の発熱量当たりの価格が化石燃料と同じでは競争にならないだろう。燃料価格に一定以上の差をつけておかないと、木質焚きのメリットは出てこないのである。

割高な国産ペレット

 同じような視点から国産ペレットの価格競争力を見てみよう。図3には産業用の軽油とA重油、それに民生用灯油について、発熱量当たりの月次価格が書き込まれている。15年12月の軽油価格は8円/kWh台で、前出のオーストリアのそれとあまり変わらない。ただ、軽油には1リットル当たり32.1円の引取り税が課せられているが、用途が農業・漁業用に限定されたA重油ではこれが免除されているため、軽油に比べると相当な割安になっている。ハウス園芸などの暖房に木質燃料を使う場合は、これが大きな障害になることもあり得よう。
 さて、化石燃料価格のグラフに木質ペレットの価格を重ねたいのだが、残念なことに後者については信頼できる時系列データが整備されていない。日本木質ペレット協会の15年の調査によれば、全木ペレットの工場出荷価格は、フレコン(450~600kg)で30~51円/㎏(平均39円)、小袋(10~20㎏)で35~56円/㎏(平均45円)であった。これは工場での出口価格だから、消費者の手にわたるまでに運賃などで10円/㎏前後付加されることになろう。
 ここで木質ペレットの低位発熱量を欧州の慣例に従って4.8kWh/kgとし、発熱量当たりの価格を計算すると、図3に書き込まれているように、ペレット40円/㎏であれば8.3円/kWh、50円なら10.4円、60円なら12.5 円となる。仮に小袋のペレットが55円/kgで消費者に渡っていたとすると、kWh当たりでは11.5円だから、この4年間産業用軽油よりもおおむね割高になっていた。14年夏の軽油価格のピーク時に多少割安になるが、その後の石油価格の下落で、差が大きく開いてしまった。またフレコン・ペレットが平均49円/kgで消費者に届いていたとすれば、10.2円/kWhとなり、14年末までは軽油よりも割安になっていた(その後は逆転)。さらに価格の安いA重油との比較では、この4年間常時ペレットが割高になっている。

 前出の図2によると、オーストリアの暖房用ペレットの平均価格は15年12月の時点で6.1円/kWhになっていた。kg当たりでは29円になり、図3の30円ラインがその目安と見てよい。また発電用ペレット価格については国際的な指標としてPIX Nordic CIFを使うことができる。16年1月のPIXは14.2ユーロセント/kg、日本円に直すと18円程度であった。これは1,000トンの取引の単価だから、小口取引のものと同列で比較するわけにはいかないが、日本にもkg当たり20円台の混焼用ペレットがすでに入ってきている。

軽視できない品質のばらつき

 以上に見たように、石油価格が下落する中で、競合する軽油や灯油、A重油との競争力を急速に失っている。外国産のペレットが本格的に入ってくるようになると、零細な国内のペレット工場は一掃されるかもしれない。高い生産コストに加えて、もう一つ心配なのは、製品の品質が安定せず、ばらつきが大きいことである。
 岩手大学名誉教授の沢辺攻氏を主査にして最近実施された全国スケールの品質調査によると、日本木質ペレット協会(JPA)の品質規格をクリアできない製品がかなり出回っていることが、明らかになった。品質項目としては、ペレットの長さ、かさ密度、微粉率、機械的耐久性などが主なものだが、これらはいずれも燃焼トラブルの原因となる。とくに近年出回り始めた高性能の燃焼機器は一定の品質基準から外れたペレットを極度に嫌う。
 ただ、ペレットの物性に関する上記の項目は、沢辺氏によると、製造装置や製造条件の改善で解決できる性質のものであり、基準外れが生じた原因は「良質のペレットを作ろうとする意欲の欠如と製造技術の未熟さ」にあるとされる。さらに言えば、ごく小型の造粒装置を用いた間断的な生産では、品質のばらつきがどうしても出てしまうように思う。品質の揃った製品を安定して生産するとなれば、24時間操業の大型工場にはかなわない。
 わが国でもJPAの品質規格はあるのだが、協会の認定を受けて品質をコントロールしている工場は、比較的規模の大きい一部の工場に限られる。ごく零細な工場にしてみれば、それなりの経費を払って規格認定を取っても、生産量が少なくメリットがない。小規模生産の不利はどこまでも付きまとう。
 前方には、化石燃料価格の下落という危険な崖があり、後方からは安価な外国産ペレットが追いかけてくる。どう対応したらよいのか。次回のテーマとしたい。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~