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国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(4)~重要さが増す品質の外部チェックと内部モニター~

 欧州においては、木質ペレット市場の国際化に対応して、ペレットの国別品質規格がENの欧州規格に統一され、2014年末からはこれもISOの国際規格に置き換えられた。前回述べたように、欧州ペレット協議会(EPC)はこのISO規格を自ら運営するENplusにいち早く取り込み、世界的なスケールで認証事業を展開している。ドイツとオーストリアで生産されるペレットの90%はすでにENplusの認証を得ているという。
 数年前まで高品質ペレットの認証と言えば、DINplusがドイツのみならず国際的にも通用する商標になっていた。これが現在どうなっているか調べてみると、ENplusに完全に吸収されたわけでも、なくなったわけでもない。いわば二本立ての状況が続いているのである。さらに事態を複雑にしているのは、製品差別化のための「自主規格」だ。つまりDINplusとENplusの両方の認証を取ったうえで、自分たちが生産するペレットの品質はそのいずれよりも優れていると主張しているのである。
 品質競争が激化していることは明らかだ。高品質ペレットを謳い文句にする限り、規格パラメターの基準値は狭い範囲でしか変えられない。基準値の細かい違い以上に重要なのは、質の高いペレットを確実、かつコンスタントに消費者のもとに届けられているかどうかである。いい加減な設備の工場では高品質の製品を安定して生産するのは難しい。また製造のプロセスにおいても徹底した品質管理の体制ができていなければならない。そうしたことを初めて認証の条件にしたのがDINplusであった。

DINplusのペレット認証

 この認証制度は、高品質のペレットを生産する工場を対象にして、ドイツの認証審査会社DINCERTCOが2002年にスタートさせたものである。この会社の来歴をたどると、ドイツ規格協会DINと検査試験会社のTÜVRheinland AGが共同出資して誕生している。
 品質規格のほうは、ドイツのDIN51731とオーストリアのÖNORM M7135をベースにしてつくられた。両国でペレットの交易が盛んになり、規格を統一しようという機運も高まっていたであろう。パラメターの基準値は、表1に示されるように、DINの数値に代えてÖNORMの数値が取り入れられている(重金属だけは例外)。DINplusの「プラスアルファ」はただそれだけのことなのか。

 もちろんそうではない。品質基準の順守を義務付けるだけでなく、それが常時、確実に実行されているかどうかをチェックするメカニズムを組み入れたことである。その一つが外部からの抜き打ち検査であり、いま一つは工場内部でしっかりした品質管理体制が確立しているかどうかのチェックである。
 DINplus認証は広く受け入れられ、これまでに102のペレット生産者が認証されたという。うちドイツの取得者は61。残りは国外の企業になるが、彼らにもそれなりのメリットがあるのであろう。フランス、ベルギー、スイスなどの生産者からすれば、DINplus認証があると自国でのペレット販売で有利になるという。また東欧諸国のペレット生産者の場合は、この商標を使って中欧に売り込むことができる。
 DINplusはこれからどうなるか。DINCERTCOはそのホームページで、「この規格認証には歴史と実績がある。国際基準に対応したアップデートを図っていきたい」と決意を表明している。

ENplusのペレット認証

 ENplusは、国際規格(ISO 17225-2)をベースにして、主に灰の含有量と灰の軟化温度により、A1、A2、Bの三つのクラスに分けている。A1は最良のクラスで小型のボイラ向きであり、A2は多少の灰分に耐えられる機器で使われる。Bはおおむね100kW以上の大型ボイラ向きだ。
 プレミアムとされているのはA1(ないしはA2まで)で、パラメターの最新の基準値(Version 3.0)を表2にまとめておいた。基準値自体は、かつてのEN規格や最近出たISO規格の数字と大きく異なっているわけではない。この場合の「プラスアルファ」が何かと言えば、品質保証の範囲が「木質ペレットの生産から配送までの全サプライチェーン」をカバーしていることである。

 ENplus認証は世界に門戸が開けていて日本のペレット工場でも取得できる。ただし高品質が「売り」だから、品質管理にはかなり厳しい註文がつく。外部からのチェックは年に1回入るのだが、それだけでは心もとない。より重要なのは、工場での日常的な品質管理である。ルールブックの国際版には、認証のためのチェクポイントが列記されているが、重用なのは次の二点だと思う。
 まず認証された工場は、十分な知識を持った品質管理の責任者を置かねばならない。その任務は、一定の品質基準をクリアすべく工場内で必要な措置を講じると同時に、職員に対する内部外部の研修や顧客からの苦情処理にも対処することになっている。EPCの本部に苦情が寄せられた場合は、直ちに第三者機関が現地に派遣されて検査を実施し、必要な是正措置が取られるという。
 もう一つ重要なのが、製造されるペレットの品質を絶えずモニタリングすることだ。その頻度はシフトが変わるごとに最低1回とされ、年産5万トンで24時間操業の工場なら1日3回程度が目安となるらしい。毎回一定量のサンプルを取って、かさ密度、水分率、機械的耐久性、長さ、微粉の量が計測され、記録される。
 日本の国内に、こうした体制を整えられるペレット工場がどれだけあるだろうか。ごく少数であることは間違いない。

差別化のための「銘柄規格」

 ドイツやオーストリアを旅行していると、FireStixxと大書したペレット専用の大型トラックに出くわすことがある(図1)。以前に聞いた話では、この商標を出しているのは比較的規模の小さいペレット工場のネットワークで、樹皮を含まない製材工場のおが屑だけを原料にして、品質の高さを売りにしているとのことであった。独自の規格で「ホワイトペレット」を生産するだけでなく、高い品質を保ったまま顧客のもとに届けているのである。

 このネットワークの最近のホームページを見ると、DINplusとENplusの両方の認証を取っている。しかし彼らの扱うペレットはこのいずれよりも質が高いと主張する。その根拠として挙げられているのが、表3のような品質比較だ。長さでは分布の幅を狭くし、水分率と灰の含有量では限界まで引き下げ、発熱量を目一杯高めている。
 前回取り上げた業界最大手のGerman Pelletsの社歴によると、2011年にFireStixxの企業グループと商標を買収し、欧州における有力な高品質ブランドを獲得したとなっている。両者が結んだ契約の詳細は分からない。仮にペレットの配送をFireStixxが全面的に分担するとすれば、全サプライチェーンにわたる品質管理が容易になるだろう。そしてGerman Pellets社も、自社で扱うプレミアム・ペレットの品質については、DINplusとENplus の認証に加えて、一部のパラメターの基準値がそれを上回ると喧伝している。FireStixxの販売戦略とまったく変わらない。
 このようなわけで、ペレットの品質規格が製品の差別化に使われるようになり、規格自体が「屋上屋を重ねる」複雑な構造になりつつある。ただ、パラメターの限界値を多少上下させたとしても、その影響を受けるのは一部の燃焼機器に限られるだろう。
 さまざまなタイプの性能の高い燃焼機器が開発されるにつれ、ペレットに対する注文も一筋縄ではいかなくなる。燃焼機器の性能にマッチしたペレットを選ぶには、製品ごとのより詳細な品質の明示が必要になるかもしれない。全サプライチェーンを掌握するFireStixxのようなサービス会社の役割は、今後ますます重要になると思うが、勝負を決めるのは顧客の求める品質のペレットを確実に提供できるかどうかである。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~