利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(3)~ペレット工場の大型化と原料基盤の変化~

 世界の木質ペレットの生産量はかなり速い勢いで年々増加しているが、そのなかで注目すべき変化が二つある。一つは、ペレット工場の大型化が進んで、年産能力10万トン以上の工場が世界全体で150を超えたことであり、もう一つは、ペレットの原料がおが屑・プレーナ屑から低質丸太、さらには早生樹種の植林木へとその範囲を広げていることである。

工場規模の拡大

 スウェーデンで発行されている隔月の専門誌「Bioenergy International」は、世界のペレット工場(年産能力1万トン以上)の一覧を毎年公表している。この一覧から明らかになるのは、各国に所在するペレット工場の名称とその年産能力だ。昨年公表された2014/15年版をベースに地域別・規模別の工場数を集計したところ、表1のような結果が得られた。

 総工場数は817、合計年産能力は5,500万トンで、平均年産能力は6.8万トンになるが、地域別に見ると、北米の12.7万トンが図抜けて大きく、西欧、東欧および中国が5万トン台で並び、中国を除くアジアは3.6万トンである。そのアジアの中から日本だけを取り出してみると、工場の総数は零細なものを含めて100を超えるのに年産1万トン以上の工場は6か所しかなく、そのいずれもが3万トン以下である。ペレット工場の大規模化という世界の流れから日本は完全に取り残されているのだ。このようなことになってしまった原因と、その帰結については、稿を改めて述べることにしよう。以下に取り上げるのはペレット原料の変遷についてである。

木質ペレットの原料と生産コスト

 日本で生産されているペレットの半分程度は間伐材などの小径丸太を潰してつくられている。例えば、丸太をチップにするか、あるいは丸太を「おが粉製造機」に直接押し込んで細かくしている。おが屑中心に発展してきたペレット製造の歴史からすると、このようなやり方はいささか異様で、海外の同業者から見たら、どうやって採算を取っているのか不審に思うだろう。以前オーストリアのバイオマス協会で聞いた話では、かつてはこの国でも小径丸太からペレットをつくる工場が一つ建設されたそうだが、結局、おが屑ペレットに太刀打ちできず操業中止に追い込まれたとのことだ。
 なぜ太刀打ちできないか。グラーツ工科大学のI. Obernberger氏らはオーストリアの標準的なペレット工場(年産能力4万トン)をモデルにして、原料の種類によってペレットの生産コストがどれほど違ってくるか試算している(表2)。
 ここでプレーナ屑と言うのは、乾燥材の加工で出るかんな屑であり、これを使ってペレットをつくれば、一次破砕と乾燥の工程が不要になるから、設備投資は少なくて済むし、電力もそれほど使わない。生産コストは最も低くなり、13.3円/kgだ。これがおが屑になると破砕は不要だが、生木だから50%前後の水分率を10%強まで落とさなければならず、この乾燥でコストが嵩む。kg当たりのコストは18円。製材の背板からつくられる剥皮チップはハンマーミルによる二次破砕が必要で、その分おが屑よりも若干割高になる。
 最も厄介なのは丸太からのペレット製造である。丸太を細かく砕く必要があるし、乾燥も不可欠だ。おが屑ペレットを基準にすると、投資費用は約2倍になり、電力消費量も1.7倍にもなる。生産コストは25.6円/kgでおが屑の1.4倍だ。

German Pellets 社の挑戦

 プレーナ屑やおが屑は最適なペレット原料だが、惜しむらくは供給に限りがある。早い話、欧州ではペレットの生産量が増えるにつれて、おが屑の価格がどんどん上昇した。こうなると、剥皮チップが広く使われるようになり、低質丸太にも出番が出てくる。表2に示された「標準的な」状況が相当に変わってきたのだ。ドイツでは2006年にチップや丸太を使うペレット工場がブレーメンで初めてお目見えしている。
 2010年ころの話だが、筆者はGerman Pellets社の動向を注視していた。05年の創業以来、大型工場の新設や買収を積極的に進め、わずか5年ほどで合計年産能力100万トンのトップランナーに躍り出たからである。その当時、同社のEttenheim工場でおが屑と並んで丸太が使われているという情報が入った。たまたまこの年にドイツ訪問の機会に恵まれ、フライブルク大学におられた池田憲昭氏を介して見学を申し入れたところ、特別の計らいで見学が許された。工場を案内してくれた同社の技術者がフライブルク大学の卒業生で、懇切丁寧に説明してくれたことが何よりもうれしかった。Ettenheimの工場は06年に操業を開始している。従業員は50人で、4t/hのペレタイザー4基で、年に12万トンのペレットを生産していた。原料は1日にトラック30台を動員して半径80kmの範囲から集めているとのこと。原料の内訳はおが屑・プレーナ屑が6割、丸太が4割である。
 話に聞いていた通り、おが屑類の価格がかなり高くなっていた。絶乾トン当たり110ユーロというから、1ユーロ130円で換算すると1万4300円にもなる。これに対して低質丸太のほうは絶乾トン当たり60~70ユーロ。おが屑との差額は40~50ユーロで、この差額の範囲内で丸太の破砕ができるかどうかが勝負である。
 破砕は三段階に分けて行われていた。一段目は剥皮した丸太を巨大な破砕機に投げ込んで引き裂き、長さ30cm前後の裂片にする。次いでハンマーミルでおが屑よりやや大きい程度に破砕し、最後はハンマーミルで2mmほどにする。ちょっと驚いたのは破砕機の巨大さであった。これくらいの規模にしないと、破砕コストの低減は難しいということであろう。
 乾燥工程が入るのは二段目の破砕が終わった後である。大型のペレット工場のほとんどは乾燥に「ベルトドライヤー」が使われている。日本で一般的なキルンドライヤーよりもずっとむらなく乾かしてくれるからである。乾燥室の温度は120℃の低温で、23mのベルトの上を10分(夏)または15分(冬)かけて移動し、粉砕されたペレット原料の水分率を10%までに引き下げる。乾燥の終わった原料に蒸気と展着剤(スターチ)を少量加え、造粒機に入れられる。
 工場からの出荷価格は産業用(直径8mm)がトン当たり120~140ユーロ(16~18円/kg)で、家庭用(直径6mm、灰分0.5%以下)はその30%増しとのことであった。
 図1はEttenheim工場の全景である。写真の左上は各地から集められた低質丸太の集積地であり、右上の敷地は破砕用の土場である。写真の下半分には集めたおが屑の収納施設や、乾燥した燃料を貯めておくサイロ(塔)や製品のサイロが並んでいる。

アメリカでの新たな展開

 German Pellets社は、アメリカ・テキサス州のWoodvilleに年産能力57.8万トンのペレット工場を建設し、2013年から操業を開始している。図2にあるように原料は小径丸太であり、おそらく早生樹種のプランテーションから伐り出されたものであろう。図の左奥に巨大な破砕装置が見える。
 アメリカの南東部には紙パルプ原木の取得を目指して造成された植林地が広がっており、木質資源のポテンシャルは相当に大きい。German Pellets社はジョージア州Uraniaで年産能力100万トンという巨大な工場を建設している。同社のホームページでは2015年操業開始となっているから、もう動いているのかもしれない。いずれにしても世界最大のペレット工場が誕生したことになる。
 これまで木質ペレットの原料と言えば、製材加工から出てくるおが屑や背板、さらには製材に向けられない低質丸太などであった。それが今後は、最初からペレット原木の生産を目的として造成されるエネルギー・プランテーションが主要な供給源になるかもしれない。世界のペレット需要がさらに増えれば、熱帯・亜熱帯で短い伐期で回転する早生樹種の植林地が確実に広がるだろう。その兆しはすでに見えている。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~