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国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(2)~ペレット品質規格の国際化について~

規格が必要な理由

 木質ペレットは木材を細かく破砕して圧縮、成型したものである。スターチなどを接着剤として少量加えることはあるが、それは例外と言うべきで、通常は木材の基本成分であるリグニンが接着の役目を十分に果たしてくれる。つまり、木材以外の余分なものは何も加えられておらず、かつ木材の持つ化学エネルギーはそっくりそのままペレットの中に移されている。これは燃料としてのペレットの優れた特徴と言っていい。
 半面、木材の生物的特徴を色濃く残していて、無機質の石油や天然ガスほどの均質性は期待できない。使用される樹木の種類や部位によってペレットの品質は変わってくるし、また製造方法によってペレットの水分率やかさ密度、硬さ、壊れやすさもさまざまに違ってくる。他方、市販のペレット焚きストーブやバーナ、ボイラも一定の品質基準を満たす燃料でないと、額面通りの燃焼効率には届かない。
 木質燃料の中で真っ先に品質基準ができていたのは木質ペレットであった。2000年以前に策定されたぺレットの規格としてよく知られているは、北米ペレット燃料協会(FIP)の規格、スウェーデンのSS1871-20 、オーストリアのÖNORM M 7135、ドイツのDIN 51731などだ。
 しかし前回触れたように、EU諸国では国境の敷居がほとんどなくなって、ペレットなどは域内を自由に動いている。規格統一の機運が高まるのは当然のことだろう。欧州(EN)規格を策定する作業が2007年から開始され、5年以内の施行が決まった。EU各国の規格は順次これに置き換えられていくが、さらに2009年からは国際(ISO)規格への移行が同時並行的に検討され、早くも昨年あたりからEN規格からISO規格への乗り換えが進んでいる。
 木質ペレット市場の国際化を背景にして、世界の統一基準が求められるようになり、このISO規格への期待は大きい。日本でも採択すべきだとする声が出ている。しかし残念ながら事はそれほど単純ではない。今回はその理由を説明しよう。

ISO 17225-2の概略

 木質ペレットについてのISO基準の全容はまだ公表されていないが、仕様の概略は表1のようになっている。体系的にはEN規格とそれほど変わらない。むしろEN規格を参考にしながら策定されているように思う。日本の木質ペレット協会の規格もEN規格をベースにしてつくられているから、それほどの違和感はない。

PFI基準でやってきた北米はISO基準を受け入れるか

 表1のISO基準を見て、直ちに筆者の脳裏をかすめたのは北米のPFIの基準(表2)である。これの認定機関となっているのは全米製材品基準委員会(ALSC)であり、EN基準とは多少性格を異にする。ペレットの原料はおおむね製材のおが屑に限定され、仕向け先も以前はストーブに絞られていた。微量要素で制限値が付けられているのは塩化物だけで、重金属類が一切省かれている。

 また「上質」「標準」「実用」の3区分は原料よりも灰分の多寡によって決められている。灰の少ないプレミアムを使えば、燃焼のトラブルがなく、ストーブを頻繁に掃除する必要がない。逆に灰分の多いユティリティはそうした快適さは得られないが、値段が安く「お得ですよ」ということだろう。この品質区分に長年慣れ親しんだ北米の人たちが、表1のようなISOの基準をすんなりと受け入れるだろうか。
 もう一つの問題は、灰分や微粉の計測において異なった方法がとられていることである。北米であればASTM(米国材料試験協会規格)をベースにしているし、欧州ではEN、(最近では)ISOの統一規格に準拠し、日本であればむろんJIS(日本工業規格)に沿って計測している。基準値の差が小さかったとしても、計測方法に違いがある以上、単純に置き換えるというわけにはいかないのだ。
 いずれにしろ、ISOのペレット規格を国の規格として取り込むのは容易なことではないが、ISO規格をベースにしたENplusの品質認証制度ができたために、世界のペレット生産者の誰もが自由に参加できるようになった。

ENplusの品質認証とはどのようなものか

 ドイツのペレット協会(DEPI)がペレットのEN規格(14961-2)に準拠した新たな品質認証のシステムENplusを編み出したのは2010年のことである。そして早くも翌11年には欧州ペレット協議会(EPC)がそれを各国共通の統一的な制度とすることに合意した。ここで重要なのは、業界団体であるEPCの責任で実施されることだ。木質ペレットの信頼性を高め、市場の拡大を狙っているのは疑いないが、筆者などからすると、折角の国際規格が商業主義のENplusに取り込まれてしまった感は否めない。現在のENplus はISO 17225-2がベースで、品質基準自体は一部でそれよりも厳しくなっている。たとえば、機械的耐久性の限界値がA1で97.5%から98.0%に、Bで96.5%から97.5%に引き上げられ、袋詰めペレットの粉化率は1.0%から0.5%に下げられている。また灰の変形温度の記載が任意から規範に変わった。
 それ以上に重要なのが、品質管理の範囲をペレットのサプライチェーン全般に広げ、さらに原料のサステナビリティ(持続性)の要件を追加したことだろう。ペレット市場が地球規模にまで拡大した今日では、ペレットの生産、輸送、貯蔵、袋詰めなどの作業が別々の事業者によって担当されることが多くなった。つまり工場から出てくる製品だけを検査していたのでは、高品質のペレットが最終消費者に届かない恐れがある。ペレットの生産者だけでなく、関連するサービスを提供する企業や取引業者にもENplusの取扱い資格の取得を求めた。
 また当該ペレットの原料が持続可能なソースから供給されているかどうかも昨今では重要な関心事となっている。さらにペレットの製造や輸送の段階で排出されるCO2も軽視できない。カーボン・フットプリントの明記が義務づけられたのはそのためだ。
 ENplusの商標権を所有するのは、EPCが所属する欧州バイオマス協会(AEBIOM)である。ただ、資格のある企業にライセンスを与える権限はAEBIOMから各国のペレット協会に委託されているようだ。 ENplusを運用する国単位のペレット協会がない場合は、EPC  が独自の国際ルールに基づいて直接審査にあたる。
 実のところENplusの運用が始まった当時、このやり方がうまくいくかどうか半信半疑であった。ところが欧州バイオマス協会の最近の資料によると(図1)、ENplusの商標を得たペレット生産者は欧州以外にも結構広がっており、認証されたペレットの量は今や700万トンを超えているらしい。早く言えば、肝心のISO規格のほうがかすんでしまった。
 筆者がとくに注目するのは、認証された生産者がアメリカで17、ロシアで15あることだ。この両国では自国にライセンスを付与できる団体(National Licenser)がないから、直接EPCに国際審査を乞うたことになる。それにはお金もかかるだろうし、認定された生産者はすべてトン当たり0.15ユーロのライセンス・フィーを払わねばならない。それほどの負担をしてまで、ENplusのライセンスを取ろうとするのは、この商標がないと欧州でペレットが売れないからである。欧州の巨大なペレット需要を背景に、ENplusの世界制覇が進みつつある。

むすび

 ISOのペレット規格ができたとしても、そのまま統一的な世界規格になるとは思えない。それぞれの国でベースとなる工業規格は異なっているし、燃焼機器の普及度合いやペレットの取引習慣にも大差がある。一つの標準を全部に押し付けることにはやはり無理があるように思う。ENplusが「ハンドブック」と呼ばれるルールブックを国ごとにつくり、企業の資格審査を各国のペレット協会にゆだねたのは賢明であった。今後は、ペレットの原料基盤が多様化し、より低質の木質バイオマスが広く使われるようになるだろう。またペレットの燃焼機器も品質に過敏なものから鈍感なものまで、さらに多様化する可能性がある。そうなるとペレットの規格も複雑なものにならざるを得ない。表1のISO規格でも、小型のストーブやバーナでは水分率の上限を0.5%にするとか、かさ密度に750kg/m3の上限を設ける、といった「但書き」がついているが、この種の例外規定が今後さらに増えていくということだ。
 欧州への輸出を考えなければ、日本でENplusの商標を得てもあまりメリットはない。しかしENplus A1の使用を指定した機器が日本に入ってきて、国産のペレットで運転したところ信じられないようなトラブルが発生した。少なくともこのような事態だけは何としても避けなければならない。小規模な生産者の多いわが国ではペレットの品質に大きなバラらつきがある。今問われているのは、品質管理体制の不備をどう正すかだ。
 ISOの規格を真似てみても、それだけでは何の解決にもならない。規格自体は日本木質ペレット協会の品質規格(2011年3月31日制定)で十分だと確信している。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~