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国際化の進む木質ペレット市場と取り残される日本(1)~市場拡大の様相を地球規模で俯瞰する~

木質ペレットが注目される理由

 近年の木質エネルギービジネスで最もダイナミックな展開が見られるのは、世界のペレット市場である。
 木質ペレットというのは、木材を細かく粉砕して円筒状に小さく固めたものだが、形状が安定しているうえに水分率も10%以下に抑えられているから、家庭用の小型ストーブでも燃料の自動補給ができるし、微妙な温度調節も可能だ。さらに大型の火力発電所でのバイオマス混焼においても、ペレットは最適な燃料とされている。
 もう一つ、木質ペレットの特徴として見逃せないのは運賃の負担能力が高いことだ。早い話、1立方メートル当たりのエネルギー密度は、生の木材が2~3GJ/m3であるのに対しペレットはその4倍の10~12GJにもなる。木質ペレットを満載した大型の専用船が大西洋や太平洋を横切るのはごく普通のことになってきた。
 さて、木質ペレットの需要が欧州の国ぐにで急速に伸び始めるのは、2000年代の半ばあたりからだが、これは明らかに石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料価格の上昇に負うところが大きい。
 他方、木質ペレットのほうは欧州での需要増加をにらんで、北米や、ロシアを含む東欧諸国でもペレット生産の増強が始まった。市場競争が激しくなるなかで、ペレット工場の大型化が進む。その結果、ペレット需要の大幅な増加にもかかわらず、世界のペレット価格は比較的低い水準に抑えられて安定的に推移してきた。これが木質ペレットの市場競争力の強化に一役買っている。

取り残される日本

 ところが日本の木質ペレット市場はこうしたダイナミックな展開から取り残されてきた。中央政府や地方政府の政策支援で、ペレットの生産と消費は少しずつ増えてはいるものの、かつては肩を並べていた欧州諸国に大きく水をあけられ、中国などのアジア諸国にも先を越される始末である。
 また国内のペレット工場のほとんどは規模が小さいために、生産コストが割高になり、製品の品質も安定していない。最近日本にも、ペレットをガス化して電気と熱に変換する小型の装置が入ってきて運転が始まっているが、当初さまざまなトラブルに見舞われた。使われた国産のペレットが、この装置が要求する品質基準を満たしていなかったからである。海外から安価で高品質の木質ペレットがどんどん輸入されるようになれば、国内のペレット産業は、間違いなく深刻な打撃を受けるだろう。
 本シリーズで2年ほど前に木質ペレット市場の動向を一瞥したが(2013/11/25付)、今回はその後の展開を4回ほどに分けて追いたいと思う。内容としては①世界的な規模でのペレット市場拡大の様相(本稿)、②ペレット品質規格の国際化について、③ペレット工場の大規模化と原料の変遷、④国産木質ペレットの生き残りを賭けて、の四つを予定している。

地球規模での俯瞰

 2014年における世界のペレット生産量は約2,700万トンと推計されており、わずか10年ほどの間に7倍に増えたことになる。こうした増勢は今後しばらく続くだろう。木質ペレットの生産と消費の現況をグローバルに俯瞰したのが図1である。見られるとおり、ペレット消費の中心地は欧州のEU28カ国だ。その消費量は1,880万トンにもなるが、域内の生産量は1,350万トンしかない。その不足分を北米、ロシア・東欧の諸国が補っている。生産量の地域別シェアで言うと、EUの50%が最大で、次いで北米の30%、ロシア・東欧の6%、中国の5%と続く。
 またペレットの消費量を用途別にみると、発電用30%、熱電併給用10%、熱供給用60%となっている。このうち発電用は主としてEUとアジアに集中し、熱電併給用はほぼEUだけに限られる。
 ちなみに、日本における近年のペレット生産量はおおむね10万トン強で、世界の中でのシェアは0.4%しかない。その一方で、同じくらいの量が石炭火力での混焼用として海外から輸入されているが、こちらの方は近い将来急増する可能性を秘めている。

この10年で急拡大したオーストリアの木質ペレット市場

 木材を破砕して燃料用のペレットに固める技術は1970年代のアメリカで編み出された。たまたまこの時期に製材工場の大型化が進展しており、どの工場でも大量に発生するおが屑の処理に頭を痛めていた。おが屑はすでに細かくなっているから、そのまま燃料になりそうだが、水気が多いためにそうはいかない。この難題を解決するうえで、ペレット化技術の確立は画期的な意味を持っていた。
 製材工場の大型化はアメリカ、カナダの北米に始まって、スウェーデン、フィンランドの北欧がそれに続き、さらにドイツ、オーストリアの中欧がその後を追った。大型の製材工場ができると、木質ペレットの生産も増え、大きな市場が形成されていく。現在の時点で、最も活況を呈しているのは独・墺を中心とした中欧のペレット市場だ。その一例としてオーストリアの状況を見てみよう。
 図2に示されているように、この国でペレットの生産が始まるのは90年代の終わりころで、北欧よりも一歩遅れていた。それが今世紀に入って生産、消費ともに成長軌道に乗ってくる。

 このような急成長がもたらされた背景には、いくつもの要因が重なっていると思うが、最も重要なのは灯油や天然ガスの価格が上昇する中で、薪や木質チップと並んで木質ペレットの価格が安定して推移してきたからである。
 図3を見れば一目瞭然だろう。燃料の持つ熱量1kWh当たりの価格で比較すると、1990年代の末にはペレットは灯油よりも高かった。それが2000年代の灯油価格の急上昇でペレットに割安感が出てくる。また灯油価格の激しい乱高下も嫌われた。この点で都市ガスは安定的に上昇しているが、2015年8月の価格は8セントを超えており、4セント台のペレットを大きく上回る。ただし木質燃料焚きのストーブやボイラは化石燃料焚きに比べて高価だから、木質燃料の熱量当たりの単価が相当に低くないと、競争にならない。

オーストリアの木質ペレット市場を一瞥する

 最後に図4を見ていただきたい。ここで注意してほしいのは、まずペレット工場の生産規模がかなり大きいことだ。以前は年産1万トン以下の小規模工場がたくさんあったが、それが集約されて現在では37か所になっている。うち8か所が年産6~15万トンで、17か所が2~6万トン、2万トン以下は12か所しかない。
 もう一つ注目すべきは、国境を越えたペレットの移動がきわめて盛んなことだ。オーストリアは、34万トンのペレットを他国から買い入れる一方で、45万トンを他国に売っている。その輸入先を見ると、ルーマニアの17.5万トンとチェコの7万トンが大きい。この両国では今のところ自国でのペレット需要があまりなく、輸出狙いでペレット生産を増やしている。
 他方、輸出先としては43.6万トンのイタリアが突出している。イタリアは今や欧州一のペレット消費国で、その総量は350万トン/年を超え、毎年20~30万トンの割りで増加していると言われる。しかしイタリアの年産能力は比較的小さく、輸入頼みになっている。オーストリアはこの状況を横目で見ながら、ペレット製造施設の増強を図っているように思う。図3によると、2,014年時点の生産能力は150万トンにも達しているのだ。
 それはともかく、木質ペレット市場の拡大は木質ペレットの盛んな交易に負うところが大きい。自国の木材資源だけでペレットを生産していたら、いずれ資源の壁にぶつかる。しかしその国がペレットを他国から輸入して需要を満たすことになれば、木材資源の豊かな国はペレットの生産に着手して、輸出しようとするだろう。そうこうしているうちに、この国でもペレットの需要が生まれてくる。図1のグローバルなレベルにおいても、あるいは図4のオーストリア周辺のレベルにおいても、ペレット市場はこうして拡大してきた。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~