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再エネ新時代における木質エネルギーの役割(2)

分散型熱電併給プラントに対するドイツの新しい支援策

 前回詳しく述べたように、木質バイオマスの有効利用という視点からすると、これまでのドイツのFITは比較的うまく運営されてきた。
 何よりも、FITの報償額(買取価格)が、出力規模、熱電併給の有無、使用する木質燃料の種類などに応じて、きめ細かく決められていたため、買取価格の操作を通して木質バイオマス発電の方向付けがある程度まで可能になったのである。原料を巡るマテリアル利用との激しい競合を避けながら、目標とする分散型熱電併給システムの普及に成功したのも、FITのこうした運用に負うところが大きい。
 ところが、そのFITが発電コストだけで競う入札制度の変わってしまった。一般的に言って、中小規模の熱電併給システムは、出力の大きい発電専用のプラントに比べて、発電コストが割高になっている。助成対象プラントが、もっぱら発電コストだけで決められるなら、中小プラントは圧倒的に不利になってしまう。
 そこで注目されているのが、昨年改正された熱電併給(CHP)法(KWKG-2016)である。この法律によると、CHPプラントの経営者が熱を生産しながら発電した場合、その電気を系統やその他の第三者に売ることもできるが、自家消費に向けることも可能で、このいずれの場合も電気の販売収入に加えて一定の枠内で割増(ボーナス)が支払われる。項を改めて少し詳しく説明しよう。

KWKGによる助成のスキーム

 まず図1を見ていただきたい。事例として示されているのは8戸の借家人がいる集合住宅で、左下の地下室に小型のCHPプラントが置かれている。各戸に向けられる給湯・暖房用の熱はすべてこのCHPプラントで生産されるわけだが、同時に電気もつくられていて、その電気の可能な仕向け先としては次の三つがある。
 ① 自家消費 (熱の循環ポンプ用などプラント経営で消費される電力と、集合住宅
   で階段の照明やエレベータの昇降に使われる共益的な電力など)
 ② エネルギーサービス業者としての第三者への販売(集合住宅の各戸への販売)
 ③ 系統に販売 (公的な送電網に接続)
 このいずれのケースでも、CHPプラントの経営者には、売電による収入に加えて、定額の割増助成が支払われる。助成の体系は次の表1にまとめられているが、電気出力で50kWないしは100kW以下の小規模プラントが優遇されているのは明かであろう。ただしこの助成も際限なく続けられるわけではなく、50kW以下では6万時間、それ以上では半分の3万時間である。プラントが年に6,000時間稼働するとすれば、運転開始から10年ないしは5年間助成が受けられるということだ。
 なお注意してほしいのは、CHPプラントの電気を系統にも、第三者にも売らない自家消費(図1のBのケース)の助成には、厳しい出力規模の制限があって、100kW以下のプラントにしか適用されない。
 またこの法律で助成の対象となっているのは、再エネのみならず、天然ガスや石油類など、石炭を除くすべての燃料である。電気を大量に使う産業に対しては、国際競争力を保持する観点から、FIT課徴金の免減措置もとられているが、KWKGでも同じような配慮がなされている。つまり自社で必要な熱を生産しながら発電したら、その電気の自家利用にボーナスが支払われる(表1のDがそれだ)。

小規模CHPプラントの事業収支

 ドイツの熱電併給法が改正されたことで、最も利益を受けるのは50kW以下の「ミニCHP」とされている。助成時間枠が広がった上に、ボーナスの額も引き上げられた。恩恵を受ける例として挙げられているのは、年間4,000~5,000時間稼動する集合住宅や学校だが、このほかにも病院、養護施設、温泉などがあり、さらにはオーストリアの「マイクロネッツ」のような小規模な地域熱供給システムにとっても有益だろう。
 経済的なメリットがどれほどあるのか。ドイツの民間団体CARMENがまとめた『小規模木材ガス化発電:投資者のためのガイドライン』(2016年4月刊)の事例に倣って事業収支を試算してみよう。
 前提① 電気出力50kWの木材ガス化発電装置、年間7,000時間稼働
       年間の発電量 50×7,000=350,000kWh
   ② 公的な送電網で販売した場合の収入
       市場での販売単価:3.5Ct/kWh  ボーナス:8 Ct/kWh
       収入=売電量kWh ×(3.5+8 )Ct/kWh
   ③ 自家利用(集合住宅の借家人に売電)した場合の収入
       売電単価:20Ct/kWh  ボーナス:4 Ct/kWh
       EEG課徴金:6.354Ct/kWh→この35%を負担しなければならない
       収入=売電量kWh×(20+4-6.354×0.35)Ct/kWh
   ④ 発電コスト
       15 Ct/kWh
 上記の前提で注目されるのは、市場での売電価格が3.5セントであるのに対し、自家利用の売電価格が20セントになっていることである。電気を系統に売るよりも、自分で消費したほうが得になる秘密がここにある。この点については次節で改めて説明しよう。ただし系統を通さずに第三者に販売したり、自分で消費したりすると、EEG課徴金を払わねばならないが、EEGまたはKWKGに登録されたプラントであれば、満額ではなくその35%だけを支払えばよい。
 さて、この50kWプラントでの発電量は年当たり35万kWhである。この発電量を上記の②と③に任意の比率で振り向けられるとしよう。自家利用率を0%から100%まで動かして、事業収支を計算すると、表2のようになる。
 全量を系統に流すと、全体の収支は約1.2万ユーロの赤字だ。もちろんこれは電気だけの収支で、熱の収入は一切入っていない。熱収入があれば黒字に転化する可能性は十分にある。ところが自家消費率が50%に達すると、電気だけで採算が取れるようになり、全量自家消費に向けると2.3万円強の黒字となる。自家消費率が高ければ高いほど有利になるのだ。
 なお、50kWプラントで電気はFITでも売れる。2016年4月時点のEEGの報償額は13.33セント/ kWhであった。他方、CHP法では11.5セント(市場での売電価格3.5+ボーナス8)にしかならないから、FITで売ったほうが得である。しかしCHP法の自家消費にはボーナスがついているため、自家消費が多ければ、こちらのほうがずっと有利になるのである。

下落する電力の卸価格

 ドイツでは、FIT関連を含めてエネルギーにかかわる、さまざまな時系列データが公表されているが、その中でとくに強い衝撃を受けたのは、欧州のスポット市場での電力価格が2008年以降下落の傾向をたどっていることである。図2がそれだ。
 00年代の前半には、世界の石油生産量は今がピークで、これからは一方的に減少していくという「ピークオイル論」が結構幅を利かせていた。それを裏付けるかのように、原油価格の上昇が続き、日本に入ってくる原油のCIF価格はバレル100ドルを超えることもしばしばであった。08年の夏以降、景気の後退を反映して原油価格は急落するが、いずれは上昇に転じると見る向きが多かったように思う。
 ところが10年近くが経過した今も、上昇の気配が見えない。石油価格の高騰を見越して構造的な変化が起きているのではないか。そのように考えると、思い当たる節がいくつかある。
 考えられる構造変化の第一は、世の中全体が「節電」ムードになって、電力需要の伸びが止まり、減少に転じつつあることだ。欧州の主要国にその兆しが出てきている。
 二つ目の変化は、これまで採掘不能と見られていたシェール層やオイルサンドから石油が生産され、市場に出回るようになったことである。技術革新の賜物というしかないが、このお陰で「今後100年くらいは石油の枯渇はなくなった」とも言われる。大量のシェ-ルオイルが欧州に入っているわけではない。しかしシェール革命でアメリカの石炭価格が下落、それをドイツの火力発電所が買い入れて、電気の卸価格の引下げに一役買っているのだ。

自然変動型再エネ電源の脅威

 三番目に指摘したいのは、風力や太陽光など自然変動型電源(VRE)による発電コストが急速に低下してきたことである。このタイプの発電で燃料になっているのは、自然の賜物である風力や太陽光だから、コストがかかっていない。経済的に見れば、可変費はゼロである。
 このような電気が電力のスポット市場に入ってきたらどうなるか。可変費ゼロのVRE電気が率先して買われるだろう。有価の化石燃料や木質バイオマスを使う発電は、電力需要の変動に合わせて発電できるというメリットはあるのだが、可変費が大きいために、市場では後回しにされる。VREの電気で埋め切れなかった「残余」の枠を巡って非VRE電力は相互に競い合うことになるだろう。
 VRE電気のシェア大きくなるにつれて、卸電力価格は下落し、非VRE型の発電事業の収益性は悪化する。かつて電力価格の上昇に支えられて、わが世の春を謳歌していたドイツの火力発電は、今ではすっかり鳴りを潜め、苦境にあえぐ有様である。木質バイオマス発電も同じような状況に追い込まれたと言ってよい。

卸電力価格の下落とFIT制度の破綻

 欧州の諸国が競うようにFIT制度を導入したのは2008年よりも前のことであった。その当時、卸電力価格の持続的な低落が予想されていたら、多くの国はこの制度の導入を躊躇したであろう。卸電力価格が低落するなかで、20年もの長期にわたって電気の買取価格が固定されれば、その差額であるFIT課徴金は一方的に膨らんでいくからである。
 FITの制度がスタートしたころ想定されていたのは、卸電力価格の中長期的な上昇ではなかったか。それであればFIT課徴金の膨張はない。ところが実際には予想外の下落傾向が強まり、ドイツでも思い切った制度改革に踏み切らざるを得なくなったのであろう。
 早く言えば、20年間にわたって一定の固定価格で電気を買取るという約束が守れなくなった。約束を反故(ほご)にする第一歩は、発電事業者による電気の直接販売である。発電事業者がそれを拒んでFITに固執することもできるが、その代わり買取価格は20%引下げられてしまう。バイオマス発電でも多数の事業者が直接販売に応じることになった。それでも最初のうちは、市場での売電価格と政府が目標とする「参照価格」との差額がプレミアムとして発電者に支払われ、FITの報償額とそれほど差が出ない仕組みになっていたのだが、そのプレミアムの額も入札で決められるとなると、話しは違ってくる。
 政府の言い分としては、FITは再エネ発電の市場競争力を高めるための「誘い水」であり、優遇されている期間内にコストダウンが実現しなければ、助成を打ち切られても仕方ないということかもしれない。ただ政府のこの方針が鮮明になるのは比較的最近のことのように思う。

高止まりの電力料金

 電気の卸価格が下落する一方で、最終消費者である世帯や企業が支払う電気料金はむしろ上昇傾向をたどってきた。例えば家庭用の電気料金を見ると(図3)、00年の14セント/kWhから13年の29セントまで直線的に上昇し、その後の5年間は29セント前後の高止 まりになっている。
 ここで注意してほしいのは、電力の調達・販売コストは09年以降低下していることだ。これに接続コストを加えた実質費用は14.3セントから13.1セントに低下し、8%ほど小さくなっている。増加したのはFIT課徴金や電力税、付加価値税などで9.0セントから16.1セントへと1.8倍になった。今では料金の55%が賦課金と税金で占められている。電力料金が高くなった一因がここにあると見てよいだろう。

 いずれにせよ、最終消費者が支払う電力価格がこんなに高くなれば、発電して市場で売るよりも自分で使って外部への支払いを節約するか、あるいは電力料金よりも多少安い価格で第三者に売ったほうが有利になるだろう。前出表2の試算例が正にそれだ。ただし発電事業者の誰もがこんな行動を取れば、広域的な電力供給システムの運用が難しくなってしまう。熱の供給をやりながら発電もする小規模な事業者のために準備された優遇措置なのである。
 その一方で、エネルギーの地産地消が可能になって、系統への接続問題が解消されるというメリットもある。「脱原発」を掲げるドイツでも、送電網の整備が遅れているため、風況の良い北部でつくられた電気が、電力需要の多い南部に思うように送れないと言われる。再エネ新時代で必要なのは、広域的な送電網の構築とともに、それぞれの地域がエネルギー自立にむけて努力することだ。

激変する再エネ電気の電源構成

 ドイツでは1990年から2015年までの四半世紀の間に再エネ電気の発電量がおよそ10倍になり、総発電量に占める比率も3.4%から31.6%にまで高まった。しかし電源別に見ると、伸び率に大差があり、電源別のシェアは大きく変化している。
 1990年当時は水力発電が92%を占め、残りのほとんどは固形バイオマスによる発電で賄われていた。その後、風力発電が急速に増加し、やや後れて太陽光発電がこれに続く。2015年になると、風力と太陽光で全体の63%を占めるようになり、横ばいで推移した水力発電は10%にまでシェアを落としている。
 他方、バイオマス発電は15年の時点で27%弱のシェアを確保している。比較的順調に伸びてきたと見てよいであろう。ただしこの27%のうち21%は、表3の参考欄にあるように、バイオガス、生物系廃棄物、汚水・水肥ガスによるもので、固形バイオマスだけに限ると5.8%ほどである。

 またFITの助成を受けているプラントの総設置容量は、15年時点で9,300万kWだが、このうちの86.4%は風力と太陽光で、バイオマスは7.4%、さらに固形バイオマスに限ると1.7%(160万kW)しかない。
 参考までに日本の現状を一瞥すると、FITで稼動しているバイオマスプラントの容量は300万kWを超え、このほかに認定済みのプラントが400万kW以上あるとされている。プラント容量がこれほど多くなった一因は、FITの買取価格がドイツに比べて相当に高いからである。また日本は出力規模による差別化をやらずにスタートしたために、1万kWを超える大型のプラントの参加が目立っている。さらにドイツでは石炭火力でのバイオマス混焼はFITの対象としていない。

再生可能な熱の9割をバイオマスが担ってきた

 いずれにしても、ドイツの場合、発電の分野で木質バイオマスが果たすべき役割は次第に小さくなっている。しかし熱供給の分野に目を転じると状況は一変する。前出の表3とまったく同じ形式の表を再生可能な熱について作成してみよう(表4)。
 過去の四半世紀のあいだに再エネ熱の最終消費は5.5倍に増加し、総熱消費に占める比率も2.1%から13.2%に高まった。再エネ電力に比べると、絶対量もシェアも伸びはずっと小さい。しかもシェアの伸びは、熱の総最終消費量がこの間に約23%減少したことにも助けられている。
 熱源構成で注目されるのは、15年においてもバイオマスが9割近くのシェアを保っていることだ。固形バイオマスのシェアは確かに低下しているが、その減少分をガス状・液状のバイオマスで埋められている。太陽光や地熱・ヒートポンプによる熱供給が意外なほど増えていない。
 この四半世紀に限っていえば、バイオマス、中でも固形バイオマスはきわめて重要な役割を果たしてきた。問題はこれが将来どうなるかである。

再エネ熱の将来予測

 再エネ電力の場合は、風力発電と太陽光発電に支えられて、今後とも順調に伸びると予測されている。ドイツ政府が掲げる目標は、電力の最終消費に占める再エネの比率を2025年までに40~45%、2035年までに55~60%、2050年には80%以上にすることだ。しかし再生可能な熱と輸送用燃料については、明確な目標が示されていない。この両者はバイオマスへの依存度が高いだけに、簡単には増やせないという事情がある。
 熱消費の将来展望についても、これまでにいくつかのシナリオが作成されてきた。図4がそのうちの一つで、ドイツバイオマス研究センター(DBFZ)の最近の報告書から引用した。一見して明らかなように、2020年から50年までバイオマスの熱はほとんど増えていない。資源の制約でこれまでのような伸びは期待できないということだ。
 ところが、太陽熱や地熱・ヒートポンプも簡単には増えそうにない。2050年においても再エネ熱の約半分は伸びの止まったバイオマスでカバーせざるを得ないのである。いずれにしても、再エネ熱の総消費量は電力よりも増え方がずっと緩慢で、2050年でも2倍程度にとどまっている。
 にもかかわらず、熱供給での再エネ比率は13%から55%に上昇すると予測されている。というのも、化石燃料起源を含む熱の総消費量が2013~50年のあいだに約42%縮小するという前提があるからだ(1,345→571TWh)。つまり、再生可能な熱の導入量を増やすというより、熱の消費を節約することで、再エネ比率を高めているのだ。

 熱の省エネ方策として、とくに重要視されているのは、建築物の断熱性能を高めて暖房用の熱需要を大幅に減らすことである。最近の統計によると、建築物1平方メートル当たりに要する暖房用の熱は全国平均で260kWhほどだが、将来的にはこれを1/2ないしは1/3にまで低めることができると言う。
 もちろんこれは技術的な可能性であって、これまでと同じようなペースで省エネが進むという保証はどこにもない。それだけにバイオマス、なかでも木質バイオマスは、信頼できる熱の供給源として重要な役割を担うことになろう。発電するにしても熱供給をベースにしたものでなければない。また熱の需要があちこちに分散している以上、比較的出力の小さい分散型の熱電併給が木質バイオマスプラントの基本である。

付記
本稿は2017年5月にウェブ週刊誌「環境ビジネスオンライン」に3回(5月15日、22日、29日付)に分けて掲載されたものを一本にまとめたものである。

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