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分散型熱電併給プラントに対するドイツの新しい支援策(その2)

 ドイツでは、FIT関連を含めてエネルギーにかかわる、さまざまな時系列データが公表されているが、その中でとくに強い衝撃を受けたのは、欧州のスポット市場での電力価格が2008年以降下落の傾向をたどっていることである。図2がそれだ。
 00年代の前半には、世界の石油生産量は今がピークで、これからは一方的に減少していくという「ピークオイル論」が結構幅を利かせていた。それを裏付けるかのように、原油価格の上昇が続き、日本に入ってくる原油のCIF価格はバレル100ドルを超えることもしばしばであった。08年の夏以降、景気の後退を反映して原油価格は急落するが、いずれは上昇に転じると見る向きが多かったように思う。
 ところが10年近くが経過した今も、上昇の気配が見えない。石油価格の高騰を見越して構造的な変化が起きているのではないか。そのように考えると、思い当たる節がいくつかある。
 考えられる構造変化の第一は、世の中全体が「節電」ムードになって、電力需要の伸びが止まり、減少に転じつつあることだ。欧州の主要国にその兆しが出てきている。
 二つ目の変化は、これまで採掘不能と見られていたシェール層やオイルサンドから石油が生産され、市場に出回るようになったことである。技術革新の賜物というしかないが、このお陰で「今後100年くらいは石油の枯渇はなくなった」とも言われる。大量のシェ-ルオイルが欧州に入っているわけではない。しかしシェール革命でアメリカの石炭価格が下落、それをドイツの火力発電所が買い入れて、電気の卸価格の引下げに一役買っているのだ。

自然変動型再エネ電源の脅威

 三番目に指摘したいのは、風力や太陽光など自然変動型電源(VRE)による発電コストが急速に低下してきたことである。このタイプの発電で燃料になっているのは、自然の賜物である風力や太陽光だから、コストがかかっていない。経済的に見れば、可変費はゼロである。
 このような電気が電力のスポット市場に入ってきたらどうなるか。可変費ゼロのVRE電気が率先して買われるだろう。有価の化石燃料や木質バイオマスを使う発電は、電力需要の変動に合わせて発電できるというメリットはあるのだが、可変費が大きいために、市場では後回しにされる。VREの電気で埋め切れなかった「残余」の枠を巡って非VRE電力は相互に競い合うことになるだろう。
 VRE電気のシェア大きくなるにつれて、卸電力価格は下落し、非VRE型の発電事業の収益性は悪化する。かつて電力価格の上昇に支えられて、わが世の春を謳歌していたドイツの火力発電は、今ではすっかり鳴りを潜め、苦境にあえぐ有様である。木質バイオマス発電も同じような状況に追い込まれたと言ってよい。

卸電力価格の下落とFIT制度の破綻

 欧州の諸国が競うようにFIT制度を導入したのは2008年よりも前のことであった。その当時、卸電力価格の持続的な低落が予想されていたら、多くの国はこの制度の導入を躊躇したであろう。卸電力価格が低落するなかで、20年もの長期にわたって電気の買取価格が固定されれば、その差額であるFIT課徴金は一方的に膨らんでいくからである。
 FITの制度がスタートしたころ想定されていたのは、卸電力価格の中長期的な上昇ではなかったか。それであればFIT課徴金の膨張はない。ところが実際には予想外の下落傾向が強まり、ドイツでも思い切った制度改革に踏み切らざるを得なくなったのであろう。
 早く言えば、20年間にわたって一定の固定価格で電気を買取るという約束が守れなくなった。約束を反故(ほご)にする第一歩は、発電事業者による電気の直接販売である。発電事業者がそれを拒んでFITに固執することもできるが、その代わり買取価格は20%引下げられてしまう。バイオマス発電でも多数の事業者が直接販売に応じることになった。それでも最初のうちは、市場での売電価格と政府が目標とする「参照価格」との差額がプレミアムとして発電者に支払われ、FITの報償額とそれほど差が出ない仕組みになっていたのだが、そのプレミアムの額も入札で決められるとなると、話しは違ってくる。
 政府の言い分としては、FITは再エネ発電の市場競争力を高めるための「誘い水」であり、優遇されている期間内にコストダウンが実現しなければ、助成を打ち切られても仕方ないということかもしれない。ただ政府のこの方針が鮮明になるのは比較的最近のことのように思う。

高止まりの電力料金

 電気の卸価格が下落する一方で、最終消費者である世帯や企業が支払う電気料金はむしろ上昇傾向をたどってきた。例えば家庭用の電気料金を見ると(図3)、00年の14セント/kWhから13年の29セントまで直線的に上昇し、その後の5年間は29セント前後の高止 まりになっている。
 ここで注意してほしいのは、電力の調達・販売コストは09年以降低下していることだ。これに接続コストを加えた実質費用は14.3セントから13.1セントに低下し、8%ほど小さくなっている。増加したのはFIT課徴金や電力税、付加価値税などで9.0セントから16.1セントへと1.8倍になった。今では料金の55%が賦課金と税金で占められている。電力料金が高くなった一因がここにあると見てよいだろう。

 いずれにせよ、最終消費者が支払う電力価格がこんなに高くなれば、発電して市場で売るよりも自分で使って外部への支払いを節約するか、あるいは電力料金よりも多少安い価格で第三者に売ったほうが有利になるだろう。前出表2の試算例が正にそれだ。ただし発電事業者の誰もがこんな行動を取れば、広域的な電力供給システムの運用が難しくなってしまう。熱の供給をやりながら発電もする小規模な事業者のために準備された優遇措置なのである。 
 その一方で、エネルギーの地産地消が可能になって、系統への接続問題が解消されるというメリットもある。「脱原発」を掲げるドイツでも、送電網の整備が遅れているため、風況の良い北部でつくられた電気が、電力需要の多い南部に思うように送れないと言われる。再エネ新時代で必要なのは、広域的な送電網の構築とともに、それぞれの地域がエネルギー自立にむけて努力することだ。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~