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「再エネ新時代」の到来と木質バイオマス発電  (その2)

エネルギーに限界はない?!

 世界的に評判の高いY. N. ハラリの近著『サピエンス全史』の日本語版を読んでいて、「私たちが使えるエネルギーに限界はない」という衝撃的な文章に出会った。著者は1976年生まれのイスラエル人だが、とくに感心したのは若い頭脳が生み出す柔軟でみずみずしい発想である。われわれはこれまで、現代社会の膨大なエネルギー消費がエネルギー源を枯渇させるのではないかと繰り返し声高に叫んできた。
 しかしハラリ氏に言わせると、私たちの身近には太陽エネルギーはじめ核エネルギーや重力エネルギーなど無尽蔵にある。エネルギーに限界があるのではなく、その使い方を知らない人間の無知が唯一の限界になっていた、と言う。それが産業革命でエネルギーの変換にも革命が起こり、新しいエネルギー源が次々に発見されて、人間が使えるエネルギーの総量は確実に増えてきた。
 言われてみれば、正にその通りだろう。太陽から地球に届くエネルギーは年間376万6800エクサジュールにもなるらしい。このうち世界中の植物が光合成で利用しているのは約3,000エクサジュール、また人間社会で消費しているエネルギーは全部合わせても500エクサジュールでしかない。太陽エネルギーの利用は緒についたばかりなのである。
 バイオマスエネルギーは最も原初的な利用法であった。植物が光合成で生み出す細胞物質(バイオマス)を燃料として燃やし、そこに貯め込まれている太陽エネルギーを暖房用や調理用の熱に変換するやり方である。燃料需要が増えてくると、自然に成長してくるバイオマスでは間に合わなくなる。人間が次に目をつけたのは遠い昔に生きていた生物の遺骸(石炭、石油、天然ガスなど)を使うことだった。これも本をただせば光合成の産物だが、都合よく化石化して比較的純度の高い炭化水素に変わっていたから、死んで間もないバイオマスよりもはるかに効率のよい燃料になった。これは明かに有限の資源である。

目覚しい技術進歩

 太陽からの光エネルギーを直接電力に変換するのが太陽光発電だが、この原理自体はフランスの物理学者A. E. ベクレルによって1839年に発見されたとされている。しかし電源としての本格的な開発は1974年の石油ショック以降のことだ。当初10%にも満たなかった変換効率は、その後年々上昇し、最近では40%を超える太陽電池も登場している。装置の量産化も進んで発電コストの低下も著しい。
 太陽エネルギーで発電するもう一つの方式は、レンズや鏡を用いて太陽光を集め、その熱で高温高圧の蒸気をつくりタービンを回して発電する集光型太陽熱発電である。集光で得られる熱は発電のみならず熱としても利用できるし、蓄熱すれば夜間の発電にも使える。この装置は日射量が変動する高緯度地域には向かないとされていたが、IEEFAはこの常識が破られつつあるとして、2030年までには日本にも設置されると見ている。
 風力発電においても、同様の技術進歩と発電コストの低下は着々と進んできた。国内の内陸部では風況に恵まれた場所が比較的少なく、FIT制度がスタートしてからも風力による発電はあまり伸びていない。では洋上風力はどうか。列島の沿岸部には水深30m以下の浅瀬が少なく、風力タービンの設置場所が限られると言う。しかしIEEFAの研究者たちは、近年欧州の沿岸部で展開され始めた浮体式洋上風力発電事業の目覚しい成果に注目し、日本でも十分に受け入れられると見ている。むしろ、陸地のすぐ近くに水深数100mの海があるというのは、浮体式のタービンにとって願ってもない好条件なのである。
 現在のところ、送電網の未整備がネックになって、変動電源の開発が滞っているようだが、5年もすれば状況は変わってくるだろう。国内で消費される電気の半分が変動電源で賄われる時代が、程なくやってくるように思えてならない。

気がかりな大型木質焚き発電の将来

 わが国では、FITの高い買取価格に誘われて電気出力20MW以上ないしは50MW以上の木質焚きプラントの設置があちこちで計画されている。これに必要な燃料を安定的に確保するのは容易なことではないが、たとえ燃料が確保されたとしても、変動電源の時代になると常時発電するのは難しくなるだろう。
 筆者の脳裏に焼きついているのは今から20年近く前に訪れた北米バーモント州のマックネイル発電所のことだ(脚注)。1984年に商業運転を開始したこの発電所の出力は50MWで、森林バイオマスを燃やす発電専用プラントとしては世界一の規模と言われていた。ところが残念なことに化石燃料価格の低落や高効率の天然ガス発電が登場するに及んで、発電効率25%のマックネイルのプラントは競争力を失ってしまった。
 電力事業から完全に閉め出されたわけではない。ニューイングランド地域のすべての発電所は一つのPower Poolに組み込まれていて、ここからの指令に従って発電している。発電コストの高いマックネイルのプラントに送電の指令が入るのは、電力需要の多い時間帯や季節に限られる。年間の操業日数を1/3にするようにと言われたこともあるらしい。
 これではプラントの経営がまったく不安定になってしまう。発電専用のバイオマスプラントと言えば、出力を大きくして発電効率を引き上げ、年間の稼働時間をできるだけ増やして収益の最大化を目指してきたのだが、再エネ新時代になると、こうした戦略が取れなくなる。せいぜいプラント自体を熱電併給のCHPに替え、熱電比率をある程度操作できるようなシステムに変えていくしかない。ただ、熱の需要は通常分散していて、まとまって存在するケースは少ないから、プラントの電気出力をあまり大きくするわけにはいかないだろう。
 大型プラントの設置を計画しておられる皆さんも、世界の動向を踏まえて、しっかりした独自の「長期見通し」を立て、今後どう対応していくか慎重に検討してもらいたい。
(脚注)拙稿「木質バイオマス発電:苦難の歴史に学ぶ(2)~米国バーモント州のマックネイル発電所が直面した課題~」、環境ビジネスオンライン2015/03/09付
付記 本稿の初出は、週刊ウェブ誌『環境ビジネスオンライン』の二回に分けて掲載したものである(2017年6月12日、26日付)

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~