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再エネ新時代における木質エネルギーの役割(7)

中山間地における「エネルギー自立」の夢と課題

再エネ活用による中山間地の振興

 この6月に公表された平成29年版『環境白書』には、再生可能なエネルギーの活用による中山間地の「エネルギー自立」が語られている。「環境・経済・社会の諸問題の同時解決」を謳った第3章から関連する記述を集め、要約すると次のようになるだろう。
(1)中山間地ではエネルギー代の負担が重い
 全国約1,700の市町村について2013年のエネルギー代金の収支を計算し、地域内総生産に占める比率を求めたところ、「約8割にあたる1,346自治体では地域内総生産の5%相当額以上、379自治体では10%相当額以上の資金が地域外に流出している」ことが明かになった。これを日本地図に落とすと、図1のようになり、赤字率10%以上の市町村はおおむね人口希薄な中山間地に集中している。
(2)中山間地は再エネ資源の宝庫でもある
 その一方でこうした中山間地の市町村は、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルが高い。地図に落とすと次の図2のようになるが、対象となった再エネは、電力では太陽光、風力、中小水力、地熱であり、熱では太陽熱と地中熱である。いずれも設備容量から年間の発電量または熱供給量を求め、CO2に換算して集計されている。このなかには中山間地の最も重要な再エネ資源であるバイオマスが一切含まれていない。これを含めて再エネの導入ポテンシャルを計算すれば、中山間地の優位性はいっそう際立つことになろう。
(3)地域エネルギーによる地域経済循環
 図2によると、導入ポテンシャルが大きい地域ほど一人当たり国内総生産(GDP)が平均的に低くなっている。「再エネを地方部で生産し、都市部で消費することによって、エネルギー代金の支払先を産油国から国内、さらには都市部から地方部へシフトさせる」ことができ、「エネルギー収支の改善分を地方創生に活用できる可能性がある」と白書は指摘する。
 以前から中山間地のエネルギー自立を願ってきた筆者としては、今回の白書の記述はまことに心強い。その一方で違和感を覚える点が二つばかりある。一つは「再エネを地方部で生産し、都市部で消費する」とする発想であり、いま一つは中山間地のエネルギー自立においてバイオマスが果たすべき役割が明確にされておらず、ほとんど無視されていることだ。今回はとくにこの二点についてコメントしておきたい。

図1.  市町村のGDPに占めるエネルギー純支出の割合

図2. 市町村単位の再エネポテンシャルと人口当たりGDP

再エネ導入の将来展望

 この十数年来、太陽光発電と風力発電の市場競争力が著しく強まり、近い将来、最もコスト効率的とされてきた石炭火力をも凌駕するのではないかと言われ始めている。日本でもこれから着実に普及していくだろう。しかし日本の地理的条件を考えると、太陽光と陸上風力はあまり大きな電源にはならないのではないか。まとまった量の電力が得られるのは、洋上風力、別けても浮体型の洋上風力発電だと思う。都市部の膨大な電力需要に対応できる再エネは現在のところこれが最有力だ。浮体型の風力発電基地から高圧の送電線を延ばして都市域に大量の電気を送り込むことになる。なお、図2においても、洋上風力が期待できる北海道や東北地方で、沿岸部市町村の再エネポテンシャルが高くなっている。
 現状では、風力や太陽光発電は「お天気まかせ」の不安定な電源だから、効率的に電気をためられる大型の蓄電装置が開発されないと大量導入は難しい、といった論議がある。確かに再エネだけで調整するのは難しいが、当面はまだ化石燃料が使える。最善の策は、天然ガス焚きの熱電併給(CHP)プラントを地域の熱需要に併せて分散的に設置し、これらの施設の弾力的な運用を通して太陽光や風力発電の不安定さをカバーすることだ。
 大きな都市の膨大なエネルギー需要に比べれば、中山間地で生み出せる再エネの量など知れたものだ。一部の地域で再エネの他地域への移出があるにしても、多くは自分のところで消費するエネルギーを賄うのが精一杯だろう。大都市にエネルギーを売ってお金が稼げるといった状況は今のところ一寸想像しにくい。

調整役としてのバイオマスへの期待

 中山間地であればどこでも、何種類かの利用可能な再エネ資源があるけれど、特異なケースを除くと、得られるエネルギー量はそれほど多くない。いくつかの種類の再エネを寄せ集めて、域内のエネルギー需要を満たすことになろう。こうすることで、外部に流れていたエネルギー代を減らすことができるし、地場資源をベースにした熱や電気の自前生産で雇用と地域内GDPの増加が期待できる。
 ただ中山間地で調整役を担うのは、天然ガスではなく、バイオマスになると思う。田舎で使われる液化天然ガス(LPG)は、パイプで配送される都市ガスに比べると、熱量当たりの単価で倍くらいの開きがある。手もとの統計によると、家庭用都市ガスの総合単価が2015年の平均で1,000kcal当たり15.96円であるのに対し、家庭用LPGは31.24円になっている(EDMC『エネルギー・経済統計要覧』2017)。
 イギリスでも都市ガスの入っている地域と入っていない地域とでは家庭の平均暖房費に約2倍の差があると言われてきた。この国は、バイオマスの本命は、発電ではなく熱供給であるとして、固定価格買取制度(FIT)からバイオマスを外し、新たに熱のFITとされるRenewable Heat Incentive (RHI)を2011年にスタートさせた。新制度の狙いは、都市ガスの入っていない地域で、バイオマスボイラやストーブの導入を促進することである。 
 わが国においてもバイオマスが中山間地の熱供給で中心的な役割を担うのは疑いないが、変動電源の不備をカバーするとなると、やはり分散型のCHPプラントが理想的である。ドイツなどでは2000年代の後半になって、数百kWないしはそれ以下の熱電併給装置が実用化された。
 その代表格が木材をガス化してガスエンジンで発電する方式だが、これであれば熱と電気の生産比率をある程度まで弾力的に変えることができる。太陽電池で発電できる昼間は熱の生産に重点をおき、余剰の熱は貯湯タンクにためておく。そして太陽光からの電気が途絶える夜間は全力で発電することになるが、夜間に必要な熱は貯湯タンクにためられた熱を使えばよい。蓄熱は蓄電に比べると技術的にずっと易しいのである。貯湯タンクがあれば、集熱パネルを通して太陽熱を取り込むこともできるだろう。

木質エネルギーの導入ポテンシャル:二つの推計方法

 前出の図2に示された再エネポテンシャルのマップには木質バイオマスが含まれていない。中山間地の視点からすると、これは重大な片手落ちである。森林の状況や木材生産に関しては、市町村別のデータが比較的整っているから、これらのデータを手がかりにして木質バイオマスのポテンシャルマップがつくれると思う。
 考えられるやり方は二つある。資源からのアプローチと生産実績を重視するアプローチだ。木質バイオマスの究極的な供給限界は林木の年成長量であって、毎年の収穫量は成長量以下に留めるべし、という鉄則がある。ただし国内の森林2,500万haの全てで木材が収穫できるわけではない。物理的あるいは制度的に伐採が許されない森林はあらかじめ除外しておくべきである。そのうえで収穫可能なバイオマスの総量を推計し、これにエネルギー仕向け比率のような係数を乗じてポテンシャルを推計することになろう。
 こうした資源サイドからのアプローチに対して、生産実績を重視するやり方がある。例えば、過去のトレンドを踏まえて、将来の林木伐採量や木製品・紙パルプの生産量を予測し、これに伴って発生する木質バイオマスの量とそのエネルギー換算値を推計することもできるだろう。
 日本で非常に厄介なのは、森林から木材を搬出する林道のネットワークが整備されていないことだ。北欧や中欧の主要国では1990年代に基幹的な路網整備がおおむね完了していて、ドイツやオーストリアの路網密度は森林1ha当たりそれぞれ118mと89mになっている。これに対して日本はわずか19mに過ぎない。資源ベースのアプローチで収穫可能な森林面積をより正確に予測しようとしたら、林道ネットワークが今後どのように拡大するかを見通しておかねばならない。また生産実績のトレンドを基礎にする場合も、路網整備の進捗度によって木材・木製品の予測生産量は大きく変わってくるだろう。早く言えば、路網密度を戦略的な政策変数として入れてやらないと、ポテンシャルが推計できないのだ。基幹林道のネットワークつくりを政府がこれから本腰を入れて取組むかどうかにかかっている。

森林資源は豊かだが木材生産が振るわない

 林野庁の森林資源モニタリング調査第2期(2007~10年)の集計によれば、日本の森林蓄積量は60億m3を超えている。EU加盟国のなかでこれほどの蓄積を有する国は一つもない。ドイツの37億m3が最大で、スウェーデンとフランスの30億m3弱がこれに続く。
 欧州の主要国と日本について、森林1ha当たりの林木蓄積量と年成長量をグラフに落としたのが図3である。この二つの指標はおおむね正の相関関係にあり、気温や降水量などの樹木の生育条件に恵まれた国が大体上位にランクされている。大雑把に言えば、最上位は中欧の国ぐにでほぼ独占され、それに次ぐ位置にあるのが一部の東欧諸国だ。逆に下に沈んでいるのは、平均気温の低い北欧と、雨の少ない南欧の諸国である。前記のモニタリング調査のデータを使って日本をこの図に嵌め込むと、中欧のグループに入っていて、資源的には恵まれた状況にあると言える。
 ところが森林1ha当たりの木材生産量で見ると(図4)、北欧のスウェーデンやフィンランド、さらには南欧のスペインより低く、ドイツやオーストリアの6分の1くらいにとどまっている。

図3. 欧州諸国の森林蓄積と成長量

図4. 森林1ha当たりの木材生産量
2010~14年平均 m3/ha/年

木材生産の縮小は半世紀前から始まっていた

 日本の国土の3分の2は森林である。人口稠密なこの国で、有史以来20世紀の半ばに至るまで、人びとが必要とする建築用、造船用などの用材と、調理や暖房、鉄の精錬などに使われる薪炭材のほとんどは国内の森林で賄われていた。人口の増加や経済の発展につれて、用材や薪炭材の生産もおおむね増加傾向にあったが、1960年代に入って海外から大量の木材と化石燃料が輸入されるようになり、木材の生産は下落の一途を辿ることになる。
 図5を見ていただきたい。木材生産の長期動向に関わる三つの統計系列が描かれている。系列として一番長いのは旧山林局から林野庁に引き継がれてきた伐採量統計だ。これは国内の森林で伐倒されて搬出された木材の量(したがって正確には「伐出量」)で1922年から始まって2009年までをカバーしている。2005年以降は「伐倒量」が採られるようになり、伐り倒されたまま山に残される切捨て間伐が含まれるようになったため、伐出量を大幅に上回ることになった。1961年から始まる「丸太(素材)生産量」は最も確かな統計系列で、FAOなどの国際機関にも報告されている。

図5. 日本の木材生産 1922~2014年

 統計の話はこれくらいにして本題に戻ると、国内の伐出量は戦時中に急増し(とくに薪炭材)、敗戦とともに急落するが、その後の戦後復興と経済の拡大で用材の伐採量が急激に増えた。一般には、その過剰伐採が祟って70年以降の生産縮小を招いたと言われている。しかしその過剰伐採は多分に政策的なものでもあった。つまり「40年後の国内の木材需要は1億m3になる、成長の衰えた奥地の天然林や里山の薪炭林をどんどん伐採して成長の速い針葉樹の人工林に切り替える」という政策がそれだ。この政策で国内の森林の40%がスギやヒノキ、カラマツなどの人工林になったのである。
 過剰伐採の反動で一時的に伐採量が落ち込んだとしても、伐採した跡地はほぼ植林されていたから、いずれ「国産材の時代」が到来すると多くの関係者は期待していたのだが、2000年代の半ばまで「趨勢の反転」は起こらなかった。先進工業国のなかで木材の生産量が、これほど長期にわたって、かくも激しく縮小した例は日本以外にはない。

市場競争力を失った日本の林業

 もともとわが国の伝統的な林業は労働集約度がきわめて高い。木を伐り出すにも、木を植えるにも大変な人手をかけていた。そこへ安価な外材が大量に入ってきて、わが国産材は一挙に競争力を失ったのである。苦労して折角植林したのに、除伐や間伐がなされないまま放置され、林木ストックの品質(価値)が大幅に低下することになった。そのうえ林道網の整備が伴っていなかったから、木が大きくなっても伐り出せない、あるいは出せたとしても生産コストが嵩むという事態を招いたのである。
 植林地にはha当たり3,000本ないしはそれ以上の苗木が植えられていたから、絶えず間引きしてやらないと、モヤシのような過密林になってしまう。公的な補助金を使って間伐事業が進められたのだが、伐り倒された木を運び出して売ることもできず、結局、悪名高い「切捨て間伐」になってしまった。図5にある伐倒量と伐出量の差がまさにそれだ。
 ドイツやオーストリアのデータと比較して気づくのは、丸太の市場価格は日本とそれほど違わないけれど、森林所有者の取り分で見ると大差がある。独・墺では丸太価格の約半分は木代金だ。それが日本では、異様に高い伐出費と流通経費に食われてしまって、山主には丸太価格の1~2割しか渡っていない。さすがこれでは山の経営が成り立たないだろう。何をするにも補助金をもらわなければ、やっていけなくなってしまった。競争が激化するグローバル市場で日本の林業・林産業の脆弱さが際立っている。

将来を見据えた包括的な解決を

 国内に未利用の森林資源がいくらあっても、それが直ちに木質バイオマスの利用増加に繋がるわけではない。一昔前の木質エネルギーは薪や炭であり、主に里山の広葉樹林から伐り出されていた。今日、エネルギー利用に向けられるのは、森林伐採の跡に残される「林地残材」や木材加工で出てくる「工場残廃材」だ。木質エネルギーの需要が増えたからと言って、そのためだけに山に入って木を伐り出すケースは非常に希である。燃料用の低質材は価格が安いから、値段の張る構造用の木材と一緒に出してこないと採算が合わないのだ。
 つまり構造材を出すことが先決であり、構造材がたくさん出てくれば、燃料用バイオマスも自然に増えるのである。ところが、山から構造材をリーズナブルなコストで出してこようとすると、林道網の整備、能率的な伐出作業システムの導入、作業ロットの拡大などが求められるだろう。そして実際に出材量が増えてくれば、これを受け入れて加工する製材工場が必要になるし、さらには製品の販路まで確保しなければならない。結局のところ、国内の林業・林産業の市場競争力を高めるという一番基本的な課題に戻ることになる。
 わが国の林業はなぜこんな状態になってしまったのか。これまで縷々述べたように半世紀以上に及ぶ長い歴史の所産である。その意味で非常に根が深い。何か一つの原因があって、それを除けば解決するといった単純なものではないが、北欧や中欧と比較してとくに目に付くのは、木材市場のグローバル化に対応した本格的な制度改革が著しく遅れていることである。これが彼我の差をもたらした重要な一因になっていると思う。
 これまで通り、視野の狭い彌縫策を繰り返していたのでは、中山間地でのエネルギー自立の夢は果たされない。しかしエネルギー自立の努力が、眠れる森林資源に目を向け、林業・林産業の活性化に繋がるように展開されるなら、地域経済への貢献はきわめて大きくなる。今望まれるのは、しっかりした将来展望にもとに、諸課題の関連性を踏まえて包括的な解決策を模索することだ。これは、平成29年版『環境白書』が謳った「環境・経済・社会の諸課題の同時解決」にも通じるところがある。

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動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~