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ポストFITの入札に困惑するドイツの木質バイオマス発電(その3)

業界団体の反応

 前回はEEG-2017の要点をまとめた。このEEG-2017が公表されたのは16年7月のことだが、その直後に連邦バイオエネルギー協会、ドイツ農民協会(DBV)、バイオガス専門部会(FvB)および木質エネルギー専門部会(FVH)が「共同ポジション・ペーパー」を公表した。
 この文書は「今回のEEGの改正を評価する」という文言から始まる。というのも、前身の「EEG-2014はバイオエネルギー分野にとって壊滅的なもの(カタストローフ)であり、それがはっきりと改善された」からである。業界団体が入札絡みでとくに重視していたのは「EEGの報償期限が過ぎた後も既存のバイオマスプラントが存続し、さらにある程度の新設を可能にする」ことであった。
 「政治にかかわる多くのプレーヤーが動いてくれたお陰で」、新設、既設のプラントがともに入札に参加できるようになり、入札容量の上限がいくらか広げられた。これはたしかに「改善」ではあるが、「EEG-2017には明確な欠陥があり、早急に改善されなければならない」と言う。
 最初に取り上げられたのが、建築廃材などリサイクル材を燃やす発電プラントが次のラウンドの入札に参加できなくなったことである。部外者から見ると、この扱いは不可解と言うしかないのだが、本ペーパーでは「可能な限り早急にリサイクル材の市場状況がどうなるかを調査し、リサイクル材による発電を安定させるための代替的な措置を講じなければならない」と指摘するにとどめている。
 入札容量についても注文がついている。「バイオマスによる発電を安定させ、穏当なペースで拡張させるためには、2022年先までの期間の延長とならんで、上限のさらなる引き上げが欠かせない」と。
 さらに、付値の上限についてもクレームがつけられた。新設の14.88セント/kWhと既設の16.90セント/kWhは明かに低すぎる。「通常、これに対応できるのは廃棄物を使う発電だけで、生材を使うプラントの大部分は経営が成り立たない。プラント経営が引き合うかどうかは、EEG報償とは別の収入源が確保できるかどうかにかかっている。例えば、発電廃熱の販売や電気需要の変動に対応した発電である。そのためには適切な制度の枠組みがつくられなければならない」と言う。

露呈した矛盾

 前述のように、入札に関するDBFZの提案では、付値の上限を新設19セント、既設は過去5年の報償額の平均としていた。現状維持に固執したこの提案は当局に受け入れてもらえず、実際にはこの提案より5セントくらい引下げられた。バイオマスの業界団体から強い不満が出るのは当然だろう。
 しかし陸上風力発電と事業用太陽光発電の付値の上限は、それぞれkWh当たり7セントと8.91セントと定められている。これと比較すれば、バイオマス発電は明かに優遇されており、低すぎると文句をつけても説得力がない。
 その一方で、固形バイオマス、ガス状バイオマスを合計した新設発電容量の上限が、当面グロスで15万kW/年という低い水準に抑えられた。グロスとは更新分も含むという意味だ。陸上風力と太陽光に与えられた280万kWと250万kWの枠に比べると、あまりのも少ない。
 このようなわけで入札への参加は認められたものの、バイオマス業界に強い不満が残った。無理があったのである。その無理を象徴するのが、リサイクル材を使った発電を入札から外さざるを得なくなったことだ。
 表2を見ていただきたい。2014年にバイオマス発電プラントに対して支払われた平均報償額である。固定価格買取による報償と、発電事業者が直接電気を市場に売って得た報償の両方が示されているが、リサイクル材発電は紙パルプ産業の残廃材発電と並んで発電コストが最も低い。バイオガス発電のおよそ半分だ。競争入札の原則からすれば、真っ先にこれを受け入れるべきであろう。除外する理由などどこにもない。
 ところが、15万kWの枠がある。入札をやったら枠の大部分、ないしは全部をリサイクル発電が取ってしまうかもしれない。筆者の勘ぐりだが、リサイクル材が除外されたのはそのためではないか。多数の発電プラントを救済すべく犠牲にされたのである。

 発電プラントで使うリサイクル材は、ハロゲン化合物などの有害物質を含む低質の残廃材である。安い燃料を使うから比較的低いコストで発電できるけれど、一切の公的助成なしにプラントの経営が続けられるかどうか。スポット市場での電力の卸価格が3セント/kWh台にまで低下しているだけに、かなり厳しい状況にあることは間違いない。
 仮に存続できないとしたら、発電用の大型ボイラでしか燃やせない有害な残廃材は出口を失う。産業廃棄物として埋め立てるか、ごみの焼却施設に回さざるを得なくなって、膨大な処理コストが発生するだろう。「リサイクル材市場の動向を見定めて」というポジション・ペーパーの文言はこのことを指している。

競争入札を終着点とするFITの制度は受け入れられない

 もともと木質バイオマスのエネルギー利用は、林業・林産業で発生する残廃材の処理と一体になって発展してきた。近年では、都市の緑地帯から発生する除伐丸太や剪定枝などの「修景残材」もエネルギー利用に向けられている。都市のみならず中山間地でも、放置された雑木山のエネルギー利用を通して、手入れの行き届いた、かつての農村景観を取り戻そうとする動きもある。エネルギー利用と自然管理の一体化と言っていい。
 これと並んで重要なのは、熱利用との絡みである。木質バイオマスによる発電は出力規模をよほど大きくしない限り、熱効率が低い。中小規模では発電の廃熱も利用しないと採算が取れないのだ。現に稼動しているプラントのほとんどは、熱電併給で運転されている。
 三番目に強調しておきたいことは、地域振興との絡みである。雇用の減少で人口流出に苦しむ中山間地で森林は貴重な地場資源だ。木材のマテリアル利用に伴って発生する木質バイオマスを活用して、電気や熱の自給を図り、雇用を創出することが喫緊の課題になっている。
 以上のように木質バイオマス発電が、残廃材の処理、発電廃熱の利用、地域振興などと密接不離の関係にある以上、発電コストだけに着目して、助成対象にするか否かを決めるのは適切ではない。
 FITとは何なのか。ドイツの経済エネルギー省から次のような声明文が出ている。「EEG-2017の成立とともに、政治的に決められる固定価格で技術開発を推進する局面は終了した。われわれは競争的な入札制度に移行する。再エネ電気の今後の拡充を決めるのは競争に基づく価格である」(同省ホームページ「EEG-2017についてのQ&A」より)。FITの終着点が発電コストだけで競う入札であるとするなら、FITの制度は木質エネルギーの適切な振興策とは言えない。
 ただ幸いなことに、ドイツでも小型の熱電併給システムを支援するための新しい助成策が準備されている。それはEEGとは別の法律「熱電併給法(KWKG-2016)」によるものだ。続稿でその助成策を紹介することにしたい。

付記 本稿はウェッブ週刊誌「環境ビジネスオンライン」に3回に分けて掲載した拙稿(2017年4月3日、10日、17日付)を1本にまとめたものである。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~