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ポストFITの入札に困惑するドイツの木質バイオマス発電(その1)

 ドイツでは今年から改正再エネ法(EEG-2017)が発効して、ポストFITの入札が始まった。木質バイオマスの分野でもこの9月に第1回目の入札が予定されており、電気出力150kW以上の発電プラントがこれに参加することになっている。
 固定価格買取制度から入札制度への移行が法律に明記されたのは、2014年の夏に発効したEEG-2014においてだが、ここには木質バイオマス発電にとって、きわめて厳しい条項が含まれていた。新設プラントに対する報償額(電気の買取価格)が大幅に引下げられたうえに、新しく始まる入札にも参加できない可能性が示唆されていたからである。
 木質バイオマス業界に衝撃が走った。これによって発電プラントの新設は完全にストップするだろう。20年間の助成期限を過ぎた既設のプラントも次のラウンドに応募できないとなれば、次々と操業停止や破産に追い込まれる可能性が高い。そうした不安が一挙に広がったのである。
 関係する政治勢力を動員して陳情が続けられた。その結果、バイオマス発電プラントは新設、既設ともに本年からの入札に参加できるようになったのだが、これで明るい展望が開けたわけではない。風力や太陽光による発電のコストが急速に低下していくなかでバイオマスの発電コストが高止まりになっている事実は動かないからである。バイオマスに与えられる毎年の設置容量は厳しく制限され、入札付値の最大値も低く抑えられている。
 FITの行き着く先が、発電コストの多寡だけを問題にする「競争入札」であるとするなら、多面的な役割が期待される木質エネルギーの振興策として、FITは適切とは言えないのではないか。そのような思いが、ふと脳裏をよぎる。ドイツEEGを巡る状況の変化を追いながら、この点を検証してみたい。

狙われたバイオマス発電

 EEG-2014はFIT制度を抜本的に見直す大改革であった。公表と同時に出された声明文でドイツの経済エネルギー省は「過去の過大な請求を切り捨て、ボーナスを取り消し、支払額を段階的に引下げる」と明言した。これを読んで「バイオマス発電が狙われている」と直感したのは筆者だけではあるまい。
 ただし主に狙われているのは、木質系ではなく農産系のバイオマス発電である。2015年の統計によると、ドイツの場合、再エネによる発電量は1,873億kWh(総発電量の何と31.6%!)、このうちの28.6%はバイオマスによるものだが、バイオマス発電量の8割近くは農産系で、最も多いのがトウモロコシの茎などを嫌気発酵させて発電する「バイオガス発電」だ。FITのお陰で電気が高く売れるようになり、エネルギー用トウモロコシの作付面積が急速に広がった。このことに批判や非難が集中したのである。
 木質を含む固形燃料による発電は、燃料を直接燃やすか、あるいは木材を熱化学的にガス化して発電するもので、電気のつくり方がまったく違う。ドイツのFITでは、この両者に同一の基本レートが適用される。違うのはボーナスのつけ方だ。

2009年の時点で、バイオマス発電にどのようなボーナスがついていたか見てみよう(表1)。FITの報償額(買取価格)は、発電プラントの電気出力で区分される4つの規模別クラスごとに決められている。発電事業者が受け取れるのは基本レートとボーナスの合計額だ。バイマス発電の場合、基本レートはそれほど高くないのだが、さまざまな種類のボーナスがつくため、基本レートの倍くらいの報償額が受け取れる。経済エネルギー省からすれば、農林業の関係団体が画策する「お手盛り」のように見えたのかもしれない。
 ただ、FITがスタートした2000年当時はボーナスがなかった。発電事業者が受け取れるのは表1の下段にある基本レートだけで、額も低く出力規模による違いも比較的小さい。そのせいかFITに応募してくるのは建築廃材などのリサイクル材を燃やす大型発電に限られていた。それが2004年と2009年のEEGの改正で中小規模のプラントを中心にさまざまなボーナスがつけられるようになる。
 2014年の制度改革が衝撃的であったのは、このボーナスがすべて一挙になくなったことだ。つまり表1の最下段にあるように、スタート時とあまり変わらない状態に戻ったのである。条件に恵まれた発電プラントであれば、このレベルの報償額でも引き合うだろう。例えば、比較的安価なバイオマスが確保できるとか、熱の安定した出口があるといった条件がそれだが、恵まれた立地はだんだん少なくなっており、バイオマス発電プラントの新設は激減するというのが、業界団体の見立てであった。

比較的うまくいっていた木質バイオマスのFIT

 ここで木質バイオマスに話を戻そう。農産系の発電量が急速に伸びたために、バイオマス発電に占める木質の比率は近年では2割程度にまで落ちてきているが、FITの運用自体は比較的うまく行っていたように思う。というのも、木質バイオマスを巡るマテリアル利用との激しい競合を回避しながら、中小規模の熱電併給システムを普及させるという政策目標がある程度達成されたからである。
 バイオマスFITが欧州でスタートした2000年代前半を振り返ると、各国には二つの選択肢があった。一つは比較的低い共通の買取価格を設定して、このハードルをクリアできるプラントだけを助成の対象とするやり方であり、いま一つは出力規模、熱電併給の有無、使う燃料の種類などに応じて、報償額を差別化する方式である。前者の場合は下手をすると出力規模の大きいプラントばかりが選ばれてしまうだろう。ドイツはこれを嫌って、規模の小さいプラントにも市場参加のチャンスを与え、競争力をつけさせるという第二の道を選択した。筆者が感心したのはこの点である。
 政策誘導の手段として使われたのが割増つまりボーナスである。固形バイオマス発電では次のような割増があった。表1の500kW以下のクラスを見ていただきたい。発電と共に熱も生産して利用していれば、kWh当たり3セントの「CHP割増」がつく。またスターリングエンジン、オーガニック・ランキンサイクル(ORC)、木材ガス化発電のような新しい発電技術を導入すれば2セントの「技術割増」がもらえる。そしてとくに大きいのは原料割増だ。林地残材や修景残材のような、マテリアル利用とあまり競合しない自生植物原料(Nachwachsende Rohstoffe)で発電すれば、6セントものボーナスがつく。
 上記の3種類のボーナスを単純に合計すると11セントになり、小規模の熱電併給システムが得られる最大報償額は20セントを超えることになった。さらに基本レートの時系列的な変化をたどると、小規模ほど引き上げ幅が大きく、大規模では逆に大きく引下げられている。小規模優遇の姿勢はまことに鮮明である。
 大規模プラントの報償額が引下げられた一つの理由は木質原料の需給がタイトになってきたからである。木質原料の本流は、製材、合板、木質ボード、紙パルプ製造などのマテリアル利用であり、そのおこぼれがエネルギー利用に向けられてきた。FITの買取価格をむやみに高くすると、マテリアル業界からの強い反発を招く。
 ドイツでも2010年前後からマテリアル部門での原料不足と価格の高騰はFITのような補助金によるものだという論議が頻繁に聞かれるようになった。ドイツ木材加工材料協会(VHI)のような強力な業界団体が先頭に立ってそうしたキャンペーンを繰り広げるのだが、彼らが求めたのは「カスケード利用」の徹底である。早く言えば、マテリアル利用を優先させ、その残りをエネルギー利用に向けるべし、という主張である。
 こうした圧力が背景にあったのであろう。2012年のEEGの改正で5,000kW以上の発電プラントは基本レートが7.8セントから6セントに引下げられたうえに、3セントのCHP割増もつかなくなった(中小規模のクラスではCHP割増が基本レートに組み込まれた)。木質バイオマスによる大規模発電はここで息の根を止められたと言っていい。
 以上に見たように、出力規模による基本レートの差別化や各種のボーナスは、木質バイオマス発電の展開方向を誘導する手段として使われてきた。政策手段であれば多少とも「お手盛り」になるのは避けられない。ただここで強調しておきたいのは、小規模優遇のスタンスが徹底していたことで、ORCや小型の木材ガス化発電システムが実用化されて、普及したことである。これまで木質バイオマスの発電装置と言えば、おおむね蒸気ボイラ・蒸気タービンの大型施設に限られていた。よほど出力規模を大きくしないと、発電効率が低くて、採算が取れない。小規模な分散型熱電併給システムの登場は、その意味で画期的なことなのである。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~