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バイオマスFITの課題と展望

やっと誕生した日本版「バイオマス協会」

 2012年の7月から始まったFITの制度で買取り価格を決めたのは経済産業省の「調達価格等算定委員会」である。その委員長を務めた植田和弘氏は、バイオマスには「コストなどのまとまったデータを持っている業界団体」がなく、「5種類の再生エネのうち価格設定で最も苦労したしたのはバイオマス」と言っておられた(朝日新聞、2012年7月4日付夕刊)。

 太陽光、風力、小水力、地熱などの分野では、然るべき業界団体が然るべきデータを算定委員会に提供していたのであろう。欧州のたいていの国には「バイオマス協会」があって、政府と連携しながらバイオマスエネルギーの普及活動を展開しているのだが、どうしたわけか日本にはそのような団体ができていなかった。FITの制度が発足する段になって、これではまずいということになり、ようやくわが国にもバイオマス協会の日本版とも言うべき「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」が誕生した。

 たまたまこの協議会の母体になったのが日本木質ペレット協会であったため、筆者が初代の会長を兼務することになった。早速、勉強会を開いたり、課題ごとにワーキンググループを設けて論議を始めているのだが、制度設計の難しさを痛感することがしばしばである。新しい制度の導入は、わが国の木質バイオマス利用、ひいては森林利用の在り方を確実に変えていくであろう。どのような変化が起こるのか、それを予測するのは非常に難しい。

 恐らく大きな過ちを避ける一つの方法は、早くからFIT制度を導入し運用してきた欧州諸国の経験に学ぶことだと思う。とくに私が注目するのはドイツの経験である。この国は2000年にバイオマスFITを始めて導入し、3~4年ごとに改訂を繰り返している。FITの中身は当初のものに比べると相当に変わってきた。なぜ変えなければならなかったのか。

 今後、われわれも苦難に満ちた「試行錯誤」を続けることになるだろうが、先行する諸国でどのようなことが起こっているのか、十分に注意する必要があると思う。今回と次回は海外での動きを紹介しながら、バイオマスFITが直面する課題について考えることにしたい。

欧州連合(EU27)におけるバイオマスFITの実施状況

 EUとその加盟国は、この十数年来、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組み、さまざまな政策を打ち出してきた。発電に限って主な施策をまとめると表1のようになる。

 2012年1月に公表されたIFICの報告書(図1の出所を参照のこと)によると、EU27カ国のうち割当制度、料金固定型買取り制度、プレミアム固定型買取り制度を実施しているのは次のような諸国である。

  • 割当制度(QO)
    ベルギー、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スウェーデン、イギリス
  • 料金固定型買取り制度(FIT)
    オーストリア、ブルガリア、キプロス、チェコ、ギリシャ、ドイツ、デンマーク、エストニア、フランス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、オランダ、リトアニア、ルクセンブルグ、ポルトガル、スペイン、スロベニア、スロバキア
  • プレミアム固定型買取り制度(FIP)
    チェコ、エストニア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダ、スロベニア、スロバキア、スペイン

 国の数からいうとFITを採択しているケースが最も多く、27カ国中20カ国を数える。いくつかの国は複数の施策をとっていて、FITとFIPの組み合わせや、QOとFITとの組み合わせもある。こうした施策に支えられてEUにおける再生可能電力の発電量は、2005~2010年のあいだ順調に伸びてきた。 

 図1はその推移を示したものだが、この図にはバイオマス、風力、太陽光の発電量と並んで、そのうちの固定価格買取りにかかわる発電量も併記されている。ここで注目すべきは、この制度の寄与率がきわめて高いことだ。陸上風力で93%、太陽光発電に至ってはほぼ100%になっている。

 ところがバイオマスになると、固定価格買取りの寄与率が60%前後でそれほど高くない。割当制度のような別の施策に支えられている可能性がある。図1のデータをまとめた著者たちは、バイオマス発電の場合、発電コストに占める燃料費の割合が高いことに注目している。仮にバイオマス価格の上昇が見込まれるとすれば、長期にわたって電力の買取り価格が固定されるのはかえって不利になるからである。この指摘は問題の核心をついている。今後さらに検討されることになるだろう。

バイオマスFITの国際比較

 多くの国では固形バイオマス(そのほとんどは木質系)とバイオガス(家畜糞尿によるメタン発酵など)に分けて固定価格の設定を行っている。図2はFITやFIPを実施しているEUの20か国について、固形バイオマスにどれほどの報償(remuneration)を支払っているかを見たものである。これは2010年末の状況を示すもので、その後の変更は加味されていないが、大まかな傾向を見るにはこれで十分であろう。

 報償額(買取り価格)の最低値はkWh当たり5セントで、高いほうは若干の例外を除いておおむね15セントにおさまっている。1ユーロ120円で換算すると、6円から18円の範囲になる(ユーロ130円の換算では7~20円)。国によってかなりの差が出ているのは、各国の電力市場の状況やバイオマス燃料の価格に違いがあるからであろう。もちろん国の方針や政策も影響している。

 一見して明らかなように、ここには条件に応じて報償額を変えている国と、まったく変えずに一つの報償額を一律に適用している国がある。後者の報償額はおおむね5~10セントの範囲内にあって比較的低い。報償額を低めに設定して、これを一律に適用するとすれば、コスト高の事業者は応募を断念するしかない。発電効率の悪いプラントはいわば自動的に排除されていく。他方、なるべく多くの事業者を参入させようとすれば、燃料の種類や出力規模に応じて報償額を定めることになろう。最高値と最低値の幅は当然広くなる。ドイツはその典型的なケースだ。

 ここで一つだけ注意しておきたいことがある。報償の額面だけによる単純な比較には思わぬ落とし穴があるということだ。各国のFITの条文を調べてみると、「一律の適用」ではなく「条件付きの適用」であったりする。例えばイタリアはバイオマスの発電にEUで最高の28セントを支払っているが、この対象となるのは電気出力1MW以下の小規模プラントだけで特例と言っていい。それ以外の電気はグリーン証書付QOの対象になっても、FITの対象にはならない。なお図2に表示されるイタリアの報償額は1MW以下のバイオガス(18セント)も含めたために幅ができてしまった。固定バイオマスのなかに、なぜバイオガスを含めたのかその理由が分からない。

日本の木質バイオマスFITの特質

 さて、わが国の現行のFIT制度に目を向けよう。木質バイオマス発電に対しては、使用する燃料が「未利用木材」「一般木材」「リサイクル木材」の3種類に区分され、この種類ごとにkWh当りそれぞれ32円、24円、13円が支払われる(平成26年度買取価格、いずれも税抜き)。EU27の報償額がおおむね6~18円、ないしは7~20円の範囲におさまっていたことを考えると、かなり高いレベルにあると言わねばならない。

 これにはわが国の林業・林産業の現状が映し出されていると思う。森林の管理放棄が広がっていくなかで、森林の過密化を防ぐべく、手厚い国庫支援のもとに間伐が推進されてきた。国内の人工林はすでに30~40年生以上になっているから、間伐すればかなり太い丸太が相当量出てくるはずだ。ところが実際には伐倒されたままで、まったく利用されていなケースがたくさんある。毎年伐り捨てられる木材の量は約2000万立方メートルと言うから、市場に出てくる丸太の総量よりも多い。何とも異様な事態である。

 「未利用木材」とは端的に言えば「伐り捨て間伐材」のことだ。これを山から出してこようとすると、林道網の未整備や機械化の遅れが災いしてコストが嵩む。発電に使うなら、電気が32円/kWhくらいで売れないと伐り捨て間伐材は使えないという判断があったと思う。欧州の常識からすると明らかに高い。

 その一方で、建築廃材などの「リサイクル木材」の13円は欧州の平均的なレベルに落ち着いている。リサイクル木材はすでに紙パルプや木質ボード類の製造原料として広く使われているから、電気の調達価格が引き上げられると、原料がすべて発電に流れてしまう。察するに調達価格算定委員会はこうした点に配慮されたのであろう。「一般木材」の24円は欧州の上限のレベルであるが、これが最適かどうか、もう少し様子を見ないと分からない。

 ところで、木質バイオマスの発電でコストを決定的に左右するもう一つの要因はプラントの出力規模である。わが国の調達価格の試算では、森林から間伐材を伐り出し、電気出力5MWの蒸気タービンのプラントで発電するモデルが使われている。このプラントは発電専用で排熱の利用はない。バイオマス発電の常識からすると、発電専用で5MWという規模はいささか中途半端である。

 以前に紹介したIEAの「テクノロジーロードマップ」では、ペレットのような「国際流通燃料」を使う大規模発電と、地域の周辺にある「地場調達燃料」を使う小規模発電がイメージされていた。大規模発電というのは出力数万kW以上のバイオマス専焼プラントか、石炭火力でのバイオマス混焼である。大型のプラントであれば変換効率が高く発電専用でも成り立つ。しかし小出力のプラントでは発電効率が低いから熱電併給(CHP)にしないと採算が取れない。ドイツやオーストリアで見られる地域熱供給のプラントや木材加工場に入っている発電施設がそれである。電気出力で言えば2MW以下が圧倒的に多い。バイオマス発電が将来、大と小のどちらかに収斂するとなると、5MWの発電専用プラントはそのどちらでもなく中途半端なのである。

小規模重視・熱利用重視のドイツのバイオマスFIT

 具体的な数字を使って比較しよう。表2には日本の買取り価格を真中にして、左にIEAの規模別発電コスト、右にドイツ買取り価格がとられている。IEAの発電コストは蒸気タービンによる発電専用プラントを前提としている関係で、小規模のものはかなりの割高になり、10MW以下は18~36円である。日本の買取り価格も蒸気タービンの5MWで13~32円となっている。IEAのデータとほぼ同じレベルだ。

 しかしドイツの買取り価格は5MW以下の規模でも基本レートは13.2~17.2円程度で、未利用資源の使った場合の「原料割増し(ボーナス)」を加算しても16.2~24.4円程度にしかならない。IEAの試算値や日本の買取り価格に比べると断然低いのである。どうすれば発電コストをこのレベルにまで下げることができるのか。この数年来、筆者はそのことを考え続けてきた。

 ドイツの現行のバイオマスFITは、熱電併給が絶対の条件になっている。つまりバイオマスが内包するエネルギー量の60%以上を有効な熱や電気に変換しなければ、FITの対象にはならない。だが発電だけでこの条件をクリアするのは難しく、CHPにせざるを得ないのだ。また20MW以上の大規模発電や石炭火力でのバイオマス混焼もFITから除外されている。さらに5~20MWのプラントに対しても、基本レートがわずか7.2円で、原料割増しもつかない。

 いずれにしろ、小規模重視、熱利用重視の姿勢がきわめて鮮明である。しかし最初からこのような姿勢をとってきたわけではない。木材のマテリアル利用、エネルギー利用が年々増加するなかで、資源的な限界が見えてきたのである。森林からの木材の伐り出しは、森林が成長する範囲内にとどめなければならない。成長量の天井が見えてきた段階でまずなすべきことは、一つに木材を無駄なく使うことであり、二つに未利用のバイオマスを掘り起こして活用することであった。現行のFITに、熱電併給の義務付けや原料割増しの規定が加わったのはその表れである。その上に、建築などに使う構造用の木材や、暖房・給湯用の木質燃料を犠牲にしてまで発電を増やすべきではないという判断が次第に強まってきているように思う。

これからどうするか

 ドイツのバイオマスFITで買取り価格が比較的低いのは、小出力のプラントが多いにもかかわらず、実際の発電コストが低く抑えられているからである。その理由として次の3点を挙げておきたい。

  1. 需要の増加を反映して木質燃料の平均的な価格は上昇を続けており、日本のそれとあまり変わらなくなった。にもかかわらず、多種多様な低質バイオマスの分別利用が徹底していて、一番安価な原料が発電に流れるようになっている。
  2. 熱電併給のコージェネレイション(CHP)が広く普及して、バイオマスのエネルギー変換効率が高まり、かつ熱供給とのコストのシェアが可能になった。そのお陰で発電のコストが下がっている。
  3. 小規模な分散型熱電併給を支える技術が成熟し、ORCタービンや小型のガス化発電ユニットの普及が進んでいる。

 翻ってわが国の状況をみると、上記のいずれの条件も満たされていない。たとえ中途半端であっても、現在国内で稼働しているバイオマス発電プラントは、5MWとか10MWの蒸気タービンプラントに限られている。われわれはここから出発するしかない。今すぐにドイツの真似をするのは不可能である。当面は上記の3項目の実現を目指して努力することだろう。FITを上手に活用すれば、その実現を早めることもできる。次回はその話をしよう。

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