利活用相談窓口

木質バイオマスの証明のためのガイドライン

グリーン投資減税
木質バイオマス利用設備

木質バイオマス加工・利用システム開発事業

講演会・勉強会

木質ペレット事業を軸にしたエネルギー自給戦略:ヴンジーデル(独)の取組

国産ペレットの生き残りを賭けて

石炭火力発電所でのバイオマス混焼はこれからも大幅に増加すると予測されている。それを当て込んで、北米を中心に巨大な木質ペレット工場が続々と建設されつつある。ここで生産されたペレットがごく近い将来大量に日本に流れ込む可能性は高い。木質ペレットは、住宅用、事業用、発電用などの用途によって品質に多少の違いがあるが、その差はわずかでオーバーラップしていることもしばしばである。

混焼用のペレットが本格的に輸入されるようになれば、比較的出力の大きい事業用のボイラでも輸入ペレットを使うようになるだろう。ゆくゆくは高品質の住宅用ペレットまで混焼用ペレットと一緒に入ってくるかもしれない。国内のペレット事業は総じて零細で生産性が低く、このままでは外国産に対抗するのは難しい。何はともあれ市場競争力を高めることが急務である。

ただ、国内の森林をベースにする限り、大規模化によるコストダウンは、あまり望めない。アメリカの東南部やブラジルで年産50万トン、100万トンクラスの工場が出てくるのは、早生樹種のプランテーションがあるからだ。日本の森林では、米国の南部マツやユーカリのように、短い伐期で皆伐を繰り返すような経営方式はとれない。力点はあくまでも構造用丸太の生産であり、エネルギー利用に向けられるのは、その副産物や残廃材であるから、集められる量は自ずと限られてくる。コストダウンのポイントは、良いものから順々に取っていって全部使い尽す木材のカスケード利用の中にペレット生産を上手に組み入れることだ。

今回はそうした事例の一つとして、2012年の3月に操業を始めたドイツの新鋭ペレット工場を紹介しよう。

ヴンジーデルの木質エネルギー事業

その工場はバイエルン州北部のヴンジーデルに所在する。フィヒテル山地の麓にあって、面積55平方キロ、人口1万足らずの林業・林産業の盛んな町である。この小さな町が最近注目されるようになったのは、地域の電気事業にかかわる公社(Stadtwerke Wunsiedel)を中心に、エネルギー自給を目指すユニークな木質エネルギー事業が展開されているからである。

主要な施設としては、ペレット工場、オーガニック・ランキンサイクル(ORC)の熱電併給プラント、小規模な地域熱供給施設の三つで構成され、それらが図1のように繋がっている。

図1の左端には森林から伐り出される樹木がイメージされている。伐倒された樹木の幹の部分は製材工場に行き、板や角に加工されるが、ここで発生するおが屑やプレーナ屑は木質ペレットの原料となる。その一方で、倒された樹木の梢端部や枝条はチップ化されて、ペレット工場のバイオマスボイラに送られる。このボイラから生み出される熱がサーマルオイルを介してORCユニットに伝わり、電気と熱が生産されるのだ。

電気のほうはFITで販売されるが、熱はすべてペレットの原料であるおが屑の乾燥に使われる。ただしORCユニットから出てくる熱は比較的温度が低いため、高い温度を要求する通常のキルンドライアは入れられず、低温対応のベルトドライアが入っている。この乾燥装置でおが屑の水分率は50%から10%くらいにまで引き下げられて、造粒機(ペレタイザ)に投入される。

ここでつくられたペレットは外部への販売だけでなく、域内に設けられた、いくつかの分散型熱供給施設にも送られている。これは近隣の住宅や事業所に暖房・給湯用の温水を提供する施設であるが、小型ながらも発電もして、その電気をやはりFITに乗せている。

農村部の人たちが自ら運営する小型の地域熱供給施設と言えば、たいてい手近なところで調達できる伐採残材や製材工場の木屑類を燃やしている。ペレットを使うケースはめったにない。ヴンジーデルでペレットを使うのは、バイオマスガス化の小型装置を入れて熱電併給(CHP)を目指しているからである。高価なペレットを使うのは勿体ないようにも思えるが、チップに比べるとエネルギー密度が高いため運搬や貯蔵が容易であるし、電気と熱への変換もチップよりも効率的で人手がかからない。

ペレットを軸にしたユニークなエネルギー事業が出てきたのは、500kW以下のCHPプラントから生産される電気が比較的高い価格で買取られるようになったからである。以下、三つの施設についてもう少し詳しく見ておこう。

森林地帯での先鋭ペレット工場

この工場の生産能力は約3万トン/年で、24時間操業の本格的なペレット製造プラントとしては下限に近い規模である。しかし、特筆すべきは地域の林業・林産業が生み出す残廃材をベースにしていることだ。つまり、ペレットの原料は地域の製材工場から出てくるおが屑であり、原料乾燥のエネルギーは森林伐採で発生する木屑、つまり梢端や枝条に由来する。

欧州の中小規模のペレット工場は、おおむね左の写真のような外観を呈しているが、右端にある塔が乾燥した原料を入れるサイロであり、真中の2本の塔は製品のサイロである。その左はバイオマスボイラの煙突で、近くに木質チップの搬入口が見える。ペレットの製造施設はその奥の建物におさめられている。ペレタイザは1台だが、時間当たり5トンの生産能力があり、かなり大きい。

この工場にはステラ社製のベルトドライアが導入されている。日本のペレット工場にはこのタイプの乾燥施設は一つも入っておらず、初めて知ったという向きも多いだろう。バイオマス発電の排熱を有効に使うには、60~100℃の低温乾燥に限る。図2にその仕組みが示されている。

図の下方に青色の帯⑦が見えるが、この帯は原料の投入①、搬送②、および排出④の部分をキャタピラ状につなげていて、それがゆっくりと回っている。粉砕された原料は①から投入されてベルトに乗り、②の原料層となって右方向に運ばれるが、その間に上から下りてくる温風⑬で原料の水分が飛ばされる。途中③のところで原料層がひっくり返され、万遍なく乾燥するようになっている。この燃料層の長さは12メートル強だが、④の排出スクリューに着くまでに所定の水分率になるよう自動的に調節される。

ペレット生産の規模が大きくなるにつれてベルトドライアも大型になっていく。ヴンジーデルの工場に入っているのはごく小型のタイプで(写真2)、全長16m、幅と高さがともに6m強である。それでも設備費が相当に嵩むから、年産3万トン以上のペレット工場でないと採算が取れないとされている。

ORCタービンによる熱電併給

以前、このシリーズで、分散型CHPの新しい技術としてORC、タービンと木材ガス化発電ユニットを紹介した(「分散型熱電併給システムの新しい発電技術」)。ヴンジーデルにはこの両方が入っている。

ORC発電は2MW以下の小出力でも、比較的高い発電効率が得られるというメリットがある。安全で静かなうえに、完全自動運転でメインテナンスにも手間がかからない。比較的低い圧力と温度で運転されているから、欧州では有資格者による24時間の監視は不要とされている。

ただし、ORCタービンの導入例を見ると、発電よりも熱供給を重視しているケースが多い。また安定した熱のはけ口がないと発電もうまくいかないのである。24時間操業のペレット工場であれば乾燥施設が常時動いているから、ORCを問題なく入れられる。ヴンジーデルのORCユニットはターボーデン社製で定格電気出力は800kW、熱出力は3,200kW。チップ(水分率45%まで)の消費量は年に16,000トン、発電効率は約17%とされている。

おそらく、このエネルギー事業で最初に決められたのは、ペレットの年産量であったろう。年産量がはっきりすれば、原料乾燥に必要な熱の量が計算できる。導入するORCユニットは何よりもこの要求を満たすものでなければならず、熱出力3,200kWのものが選ばれた。つまり800kWの電気出力に着目して選択されたわけではない。比較的規模の小さい熱電併給(CHP)の場合は、電気ではなく、熱を軸にしてシステムの容量が決められる。

さて、ORC発電はバイオマスをボイラで燃やしてサーマルオイルを昇温する一次系のプロセスと、300℃前後のサーマルオイルでシリコンオイルを加熱・蒸発させ蒸気タービンを回す二次系に分けられるが、写真4は前者のボイラ(熱出力4,800kW)、写真5は後者の発電装置である。この工場の従業員は10名。

写真をクリックすると拡大します
写真をクリックすると拡大します
写真をクリックすると拡大します
写真をクリックすると拡大します

小規模なCHP熱供給施設

木材をガス化して発電する方式の最大のメリットは、小出力でも比較的高い発電効率が得られるということだ。これまでにさまざまなタイプの装置が開発され、一部は実用に供されていたが、なお多くの課題を残していた。ようやく近年になって長時間安定して運転できる小型の装置がいくつか市場に出るようになり、ドイツではその導入例が急増している。

いずれの装置も小型でユニット化されており、チップ焚きのものもペレット焚きのものもあるが、燃料に対する要求はかなり厳しい。スパナー社のチップ焚き装置の場合、電気出力は30kWと45kWで、チップの含水率は15%以下でなければならない。

ヴンジーデルのシェーンブルン地区に設置されているのは、ブルックハルト社のペレット焚きの装置である。この場合も、ヨーロッパでの木質ペレットの品質規格でいうENplus-A1の家庭用ペレットしか使えない。灰分が0.7%以下、灰の融点が1,200℃以上でないと機械的なトラブルが発生する恐れがあるからである。この装置の電気出力は180kW、熱出力270kW。1時間に115kgのペレットを消費する。発電効率は約30%で、熱を含めた総合効率は75%以上になるらしい。

ペレットは、地下に造られた大きな燃料庫に保管されていて、ガス化炉まではスクリューで運ばれる。燃料の搬送・投入から始まってガス化・発電のプロセスがすべて自動化されており、日常的な業務としては遠隔操作による状況把握と時折の目視点検だけである。ガス化炉の清掃は、4~6週ごとに約4時間かけて行われる。

重要なシステム設計・施工者の役割

ヴンジーデルの木質エネルギー事業でとりわけ印象的だったのは、最新の技術を取り入れながら全体としてバランスのとれたシステムをつくり上げていることである。このシステムをデザインし、施工を監督したのは、バイエルン州のパッフェンホーフェンに本拠をおくエタ・エネルギーコンサルタント社で、私たちはこのプロジェクトを担当したエンジニアのS. クラインズさんから詳しい説明を受けた。

日本ではこうしたエンジニアが決定的に不足している。ボイラなどの施設を入れる場合、もっぱらメーカー主導で事が運ぶため、最適な機種の選択ができなかったり、オバースペックになったり、あるいは他の事業部門との関連がうまくいかなかったりする。システム全体を見渡すことができて、かつ各分野で採択できる最新の技術を客観的に評価できる専門家をこれから育てていかなければならない。

ヴンジーデルの事業を成功させたもう一人の立て役者は町長のカール・ウイリー・ベックさんである。現在、中核のペレット工場を運営しているは、この事業に関係する人たちが共同で設立した「ヴン・ビオエネルギー」社だが、その構成員を見ると、先に触れた地域の電力公社を中心にして、おが屑を供給する近隣の製材工場、森林チップを提供する地元の森林所有者、製品ペレットを買受ける取扱業者などが参加している。関係者を取りまとめ、会社の立ち上げに尽力したのがベックさんであった。

私たちがペレット工場の会議室でクラインズさんらの説明を受けているときに、ベックさんがわざわざ出向いてくれて、彼が思い描いてきた地域での「エネルギー自給」の夢を熱っぽく語ってくれた。そのときのことは「日本人、ヴンジーデルを訪問」という見出しで地元の新聞でも報道されている(下の写真)。

日本では破砕がネック

 ヨーロッパで広く見られる木質ペレットの製造工場は、おおむね三つのタイプに分けられるよう思う。

  • 小規模:年産1~2万トン程度
    乾いたプレーナ屑が中心(一次破砕と乾燥が不要)

  • 中規模:年産3~5万トン程度
    湿ったおが屑が中心(一次破砕は省けるが乾燥は必要)

  • 大規模:年産10万トン以上
    おが屑のほかチップや丸太も使用(一次破砕と乾燥が必要)

今回紹介したヴンジーデルの工場は中規模のおが屑タイプである。ところが、わが国の工場はごく小規模であるにもかかわらず、使用する原料は間伐材などの丸太が大きなウェートを占めている。すこぶる不利な条件と言っていい。丸太の破砕は規模の経済が強く効いてくる。小型の破砕機は性能があまりにも低いし、高性能の機械を入れても年間の稼働時間が少なければ、まったく引き合わない。

国産木質チップのコスト構成でとくに目立つのは、割高な破砕経費である。欧州では高性能のチッパーを大型のトラックに積んで、各所を移動しながら仕事をする業者(一人親方)がいて、頼むと1時間いくらで破砕してくれる。その賃料はびっくりするほど安い。性能の良い機械類の導入と並んで、こうした仕組みづくりも欠かせない。

 レポートに関する質問、疑問等ございましたら、当ホームページのお問い合わせフォームより、お問い合わせください。

動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~