木質焚き燃焼機器の性能はここまで改善されている

多様なバイオマス燃焼システム

 前回述べたように、現在のところ木質系バイオマスの圧倒的部分は直接燃焼を経由して熱や電気に変換されている。木材をガス化したり、液体燃料にする技術は、それだけでコストが嵩み、安価な天然ガスやガソリンが出回っているうちは出番がない。当面、市場競争力が強いのは、簡単な前処理だけでバイオマスをほぼそのまま燃やす直接燃焼である。
 直接燃焼の技術としては、固定床燃焼(fixed bed combustion)、流動床燃焼(fluidized bed combustion)、微粉物燃焼(pulverised fuel combustion)の3種類があるが、いずれも成熟段階に達していると見てよいであろう。というのは、エネルギー変換効率90%以上を達成し、同時に燃焼に伴う環境汚染物質の排出を極小化することに成功しているからである。どの技術方式を選ぶかは、熱や電気の出力規模と、投入されるバイオマスの種類によって決まってくる。
 木質バイオマスの燃焼システムは、プラントの出力規模に着目して、小規模、中規模、大規模、及び火力発電での混焼に区分するのが実用的である。

(1)小規模システム(熱出力で100kW以下)

 住宅の暖房・給湯が中心。機器としてはペレットバーナ、薪ストーブ、暖炉用インサートのほか、薪/木質チップ/ペレット焚きの小型ボイラが一般的である。質の高い木質燃料が要求される。

(2)中規模システム(熱出力で100kW~20MW)

 バイオマスのよる地域熱供給、産業用の熱の生産、熱電併給(CHP)プラントが中心。燃焼技術としては、下込めストーカ、火格子炉、微粉物バーナーが一般的。熱の移転は温水ボイラをベースにするの が普通だが、蒸気ボイラやサーマルオイルボイラも使われる。CHPの場合は、スターリングエンジン、ORCプロセス、蒸気エンジン、蒸気タービンとの組み合わせが可能。さまざまなタイプの木質燃料を受け入れることができる。

(3)大規模システム(熱出力で20MW以上)

 熱電併給ないしは発電専用の大型プラントで、火格子燃焼システムや流動床燃焼システムを採用するケースが多い。通常は蒸気ボイラと蒸気タービンの組み合わせ。

(4)火力発電所でのバイオマス混焼(熱出力で100MWないしそれ以上)

 既存の微粉炭燃焼システム(PCC)で混焼する場合は、バイオマスの投入量が重量ベースで20~30%以下に制限される。

向上著しい小型燃焼機器の性能

 中欧や北欧で木質バイオマスのエネルギー利用が大きく進展した背景には、小型燃焼機器の性能が一段とよくなったというという事情が隠されている。その技術開発を先導してきたのが、1978年の国民投票で「脱原発」決めたオーストリアだ。この国には薪暖房の長い歴史がある。その上に高い環境意識が加わって、バイオマス燃焼機器の改善に目が向けられるようになった。
 特に注目すべきは、1980年以降、公的な検査機関(Bundesanstalt für 、LandtechnikWieselburg)が、毎年市場に出てくる小型(熱出力400kW以下)の木質焚きボイラを検査し、その結果を公表するようになったことだ。これによってメーカー間の技術開発競争が促され、オーストリアは一躍木質焚き燃焼機器の有力な輸出国にのし上がったのである。 

 それはともかく、BLWが公表しているテスト値のうち、変換効率と一酸化炭素(CO)の排出量を見てみよう。図1に示されているのは、新しく登場した燃焼機器の熱効率で、薪やチップ、ペレットの形で投入された木質燃料のエネルギーのうち、どれほどが有効な熱に換えられたかを見たものである。平均値で言うと、当初55%程度であった効率はおよそ30年の歳月を経て90%を超えるようになった。

 次に図2にあるCO排出量は燃焼の質にかかわる重要な指標である。燃料が完全に燃え尽きていればCOは出てこない。またCOの排出が少ないと、有機性の浮遊粒子(TSP)やガス性の有機物(CGC)など環境汚染物質のエミッションも減ってくる。図にあるように、COの平均値は当初の15,000から50mg/Nm3に減少した。

二段階燃焼

 上記の二つの図で見る限り、木質焚き燃焼機器の性能はこの20年ほどの間に改善されたのは確かである。いかにしてそのような改善が実現されたのか。
 直接燃焼という変換方式で何よりも重要なのは、木のような固形バイオマスを上手に燃やして、木の持っている化学エネルギーを最大限に引き出すことである。具体的に言えば、木質バイオマスに含まれている炭素がすべて酸化されてCO2 に変わるのが理想だが、現実には不完全燃焼になって、COのような中間生成物がそのまま排出されることが珍しくない。それは次のような場合である。

  1. 燃焼室で燃料と燃焼空気とが十分に混じり合っていない。
  2. 燃焼に必要な空気が全般に不足している。
  3. 燃焼温度が低すぎる。
  4. 燃焼室での燃料の残留時間が短すぎて酸素との反応が不十分になる。

 この4つの問題を同時に解決するのは、決して容易なことではないが、長年にわたる試験の繰り返しと試行錯誤をへて、バイオマス燃焼の技術は着実に改善されてきた。新しい技術の軸になっているのが、以下に説明する二段階燃焼の概念である。
 木質燃料が石炭と大きく異なるのは、揮発性物質が可燃成分の80%前後を占め、固定炭素が著しく少ないことだ。そのため不用意な燃やし方をすると、ガス局面の燃焼反応が起る前に、この揮発成分が飛散してしまう可能性がある。そこで燃焼を二段階に分ける方式が考案された。

 在来型の燃焼機器は、火床での反応、つまり「一次燃焼ゾーン」だけに限られていた(図3)。ここではまず燃焼室内の熱で燃料が乾燥し、次いで揮発成分の離脱があって、最後に固形物の火床での燃焼が起こる。揮発分の離脱と固定炭素の燃焼を促進すべく一次空気が送られる。問題はここから出てくる揮発性ガスと固形物の燃焼ガスをどう処理するかである。二段階燃焼の発想は、新しい燃焼室つまり「二次燃焼ゾーン」を設けて、ここに二次空気を送り込み、一次燃焼ゾーンから出てきたガスをまとめて燃やしてしまうというものである。
 この方式を取り入れることによってバイオマス燃焼機器のエネルギー効率は大幅に上昇した。次に、その一端を見ておこう。

木質焚きストーブとボイラの仕組み

(1)薪ストーブ

 解放型の大きな暖炉で太い薪をゆっくりと燃やすのは、見た目にも優雅で、心惹かれるのもがあるけれど、熱効率からいうと10~20%ほどで、エネルギー的には無駄の多い代物である。今日の薪ストーブの原型はベンジャミン・フランクリンが1742年に発明したフランクリンストーブとされているが、その効率も40%に届かない。

 欧米から入ってくる最新の薪ストーブはだいたい再燃焼システムを備えて熱効率を引き上げている。これにはプラチナやパラジウムの触媒を使う方式と触媒を使わない方式とがある。後者の代表例はクリーンバーン方式と呼ばれるものだが、これは図4(左側)にあるように、一次燃焼で発生した未燃焼ガスを、燃焼室上部の空気孔から出てくる二次空気で燃やす方式である。構造がシンプルで適切なメインテナンスがあれば、長期間クリーンな二次燃焼が継続できるとされている。

 もう一つの触媒方式では、未燃焼ガスがキャタリティックコンバスターを通過する仕組みになっている(図の右側)。未燃焼ガスは通常550℃以上でしか燃えないのだが、触媒を通せば230℃程度の低温でも燃焼する。これによってエミッションの排出が減ると同時に、大量の熱を新たに得ることができるという。ただし触媒は5年ほどで交換する必要がある。

(2)薪ボイラ

 薪の難点は燃焼炉への自動連続投入が難しいことである。近年ボイラの本体内に一定量の薪を充填しておいて燃やし続けるボイラが開発され、相当なスピードで普及している。燃焼の継続時間は数時間程度だが、貯湯タンクがあれば、そこに暖房・給湯用の熱を貯めることができ、朝一回の燃焼で夜までもたせることも不可能ではない。

 薪ボイラにはあまり大型のものはなく、熱出力でせいぜい100kW止まりである。図5の例は40/50kWで、薪ホッパーの容量は166~215ℓ。ここに長さ50cmまでの薪が積み込まれる。通常の薪ストーブと違うのは、バッチの底で点火してあと、燃焼空気が真っすぐ上に行かないで横に流れ、連続して燃焼できるようになっている。火格子②のあるところが一次燃焼室で、必要な空気は⑤から入る。また⑥のターボ燃焼室が二次燃焼室に相当し、④から入る予熱された二次空気でガス成分の完全燃焼が図られる。燃焼はラムダーセンサーで自動制御されているため、変換効率はきわめて高い。裏を返して言えば、煤やタールの発生が非常に少ないのである。

(3)ペレットボイラ

 図6に描かれているのは「横込め」タイプの小型ボイラである。熱出力が数十kWと比較的小さいため、ペレットストーブと同じように燃料を貯留するホッパーが本体内に組み込まれている。もちろん出力が大きくなれば、燃料タンクを外に設けなければならない。それはともかく、内付け・外付けの燃料庫⑲から供給されるペレットはスクリューコンベア⑨で運ばれて、横方向から水平に火床に投入される。
 火床となる火格子②は前方に動くようになっていて、ここに入れられたペレットは⑥から入る一次空気で燃えながら左に押され、燃えがらの灰は⑦の容器に落ちていく。二次燃焼は④の吹き出し口から入る空気で進展し、最終的にはその熱エネルギーが⑪の熱交換器で効率よく温水に換えられる。

 ペレットボイラには、「横込め」タイプのほか「上込め」と「下込め」のものがある。とくに上込めバーナーは、ストーブのような小型のペレット燃焼を念頭に置いて開発されたもので、燃料は上から火床上に落下する。この方式では、燃料の補給システムと火床が切り離されていて「逆火」の心配がなく、早すぎる着火を防ぐこともできる。さらに実際の熱需要に応じて非常に正確に燃料を送れるというメリットもある。
 ペレットボイラは、いずれのタイプも燃焼の細かい制御ができるようになっていて、同じくらいの出力の薪ボイラやチップボイラに比べると、概して変換効率が高い。

(4)チップボイラ

 もともとチップボイラは、形質を異にする多種多様な木質チップに対応して、早くからさまざまなタイプのものが開発され、市販されてきた。発電プラントでは、流動床ボイラや噴流床ボイラが使われているが、熱供給が中心であれば、おおむね固定床ボイラである。固定床燃焼の代表的なものが火格子燃焼で、火格子上に置かれたチップを少しずつ移動させながら順々に燃やしていくやり方である。火格子の種類には固定式、移動式、可動式、回転式、振動式などがあり、燃料の特性に応じて選択される。

 ここで事例として選んだのは、日本で「生チップボイラ」と呼ばれているS社の製品である。可動式の水平火格子を採用し、熱出力としては100〜6000kWの範囲とされている。全体のシステム構成は図7に示されるように、トラックなどで運ばれてきたチップは①の投入口から燃料庫に入れられる。このチップを②のプッシュフィーダーで③の搬送装置まで押し出し、そこからボイラ本体に送り込まれる。
 続いて本体の構造を示す図8を見ていただきたい。この型式を特徴づけているのは水平に動く可動火格子③である。燃料庫から搬送されてきたチップは①の投入口から火格子上に置かれ、主燃焼炉に送られることになるが、この間にチップの乾燥が進む。というのも、耐火煉瓦造りの燃焼炉内に蓄えられた熱と燃焼ガスのそのものの熱で、チップの水分が奪われるからである。水分30〜60%の生チップが使えるという。

 一次燃焼室②でガス化された燃焼ガスは、アーチ煉瓦⑦に阻まれて、燃料の流れとは逆の左方向に流れ、二次燃焼室に入る。二次燃焼を終えた燃焼ガスは熱交換器⑩に送られて温水に変換される。熱交換器の伝熱部には灰や煤が付着するが、正面の扉⑪には自動清掃装置がついていて、空気圧で付着物を吹き飛ばすようになっている。
 熱交換を終えた燃焼ガスはマルチサイクロン集塵機を通ってクリーンな排ガスとなり、煙道を通り煙突から外気に排出される。なおこの煙道部に取り付けられたラムダーセンサーで排ガス中の酸素濃度が計測され、最適な燃焼空気量の制御を助けている。

むすび

 以上に述べたストーブやボイラの事例は、いずれも小規模ないしは中規模の燃焼システムにかかわるものである。このレベルの出力規模では、装置自体をあまり複雑にすることができず、変換効率を引上げるにしても、あるいはエミッションを削減するにしても、厳しい限界があるとされてきた。しかし現在、欧米の市場に出ている先端的な機種(トップランナー)は、この難題をかなりの程度までクリアしていると見てよいであろう。効率性、利便性、経済性のいずれにおいても、化石燃料焚きの装置と比べて見劣りがしなくなった。
 もちろん現実の市場には数多くのさまざまな機種が出回っている。図4から図8に掲げた機種は説明のための一例でしかない。多種多様な機種の中からどれを選ぶかは、燃やすバイオマスの種類、求められる熱需要の特性、設置する環境などを勘案して決めることになろう。

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動画:木質バイオマスエネルギー ~日本の森林を活かして 地球温暖化を救え!~